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Utstein Osaka Project (ウツタイン大阪プロジェクト)

目的 ウツタイン*大阪プロジェクトは,人口約880万人の大阪府全域(1892km²。府内35か所の消防署に救急搬送拠点を配備)における救急隊が蘇生にかかわった院外心停止(out-of-hospital cardiac arrest: OHCA)患者において,病院到着前の二次救命処置の有効性を検証する観察研究。
本報は“救命の連鎖(chain of survival)”(市民に対する心肺蘇生トレーニング,救急隊による電気ショックの実施が可能になったなど)の改善によりOHCA後の生存率が上昇したかを検討。
一次エンドポイントは1か月後の神経学的後遺症のない生存率。
* 1990年,ノルウェーのUtstein abbey(ウツタイン修道院) で開催された国際蘇生会議で提唱されたOHCAの統一された記録方法をウツタイン様式とよび,国際的なガイドラインとして推奨されている(日本救急医学会 http://www.jaam.jp/index.htm 参照)。
コメント 市民の講演会,救急隊の訓練や処置範囲の拡大に伴い,救命率は1998年から2006年にかけて着実に向上し,特に心室細動による心停止例でその傾向は顕著である。1か月後に神経学的後遺症を残さない生存率が16%(およそ6人に1人の割合)まで上昇したが,発生場所の約80%が家庭あるいは公共の場であることを考えると,一般市民への心肺蘇生法の普及により救命率の更なる向上が期待される。(井上
デザイン population-based コホート観察研究。
期間 1998年5月~2006年12月に発生したOHCA。
参加者 18歳以上。心臓が原因と思われるOHCA患者で,そばに居合わせた人(バイスタンダー)に目撃され救急隊による治療を受けたもの。
成人OHCA(45,512例)中,蘇生施行例は42,873例,うち心原性心停止と考えられたものは25,026例で,目撃者のいなかったものは14,284例,目撃者のいたものは8,782例:救急隊に目撃されたもの1,874例;最初の心電図で心室細動/頻拍1,733例;無脈性電気活動2,167例;心静止4,789例,目撃者の有無不明が93例。
■患者背景(目撃された心原性心停止と考えられるもの8,782例,VF例1,733例):平均年齢(70.5歳,63.0歳),男性(63.3%, 78.0%),心停止場所:家庭(68.5%, 51.9%);公共の場(14.5%, 28.0%);職場(3.7%, 8.2%),心停止前の日常活動が良好(70.8%, 85.5%),目撃者が開始した心肺蘇生(CPR):心臓マッサージのみ(13.1%, 16.1%);従来の心臓マッサージ+口うつし換気(17.9%, 20.1%),所要時間:虚脱から通報まで(4.9分,3.0分);虚脱からCPR開始(8.5分,6.4分);虚脱から最初の除細動(-,12.9分);虚脱から挿管(26.9分,26.2分)。
調査方法 Utstein Styleの心停止報告書式による記録データを前向きに収集:性別,年齢,最初の心調律,蘇生の時間的経過,目撃者が最初に行ったCPRのタイプ,心拍再開,入院,1か月後の生存率,1か月後の神経学的状態など。
特に蘇生(救命処置)の時間的経過に焦点を当てた。虚脱に陥った時刻,目撃者がCPRを開始した時刻は救急隊員が目撃者から聞き取った。生存者は1か月後に救急隊員が転帰を確認した。
結果 [目撃された心原性心停止と考えられるものの患者背景の経時的変化]
症例数・平均年齢(1998年:598例・68.2歳→ 2002年:939例・70.3歳→ 2006年:1198例・72.2歳,VF(16.4%→ 19.3%→ 24.8%),目撃者が開始したCPR:心臓マッサージのみ(7.4%→ 12.6%→ 16.6%);心臓マッサージ+口うつし換気(11.4%→ 19.5%→ 19.4%),所要時間(中央値):虚脱から通報まで(4分→ 3分→ 2分);虚脱からCPR開始まで(9分→ 7分→ 7分);虚脱から最初の除細動(VFのみ:19分→ 14分→ 9分),虚脱から挿管(25分→ 26分→ 25分)。
虚脱から119番通報までの時間は4分から2分へ,CPR開始までの時間は9分から7分へ,除細動までの時間は19分から9分へ短縮した。
[一次エンドポイント,生存率]
一次エンドポイント:目撃された心原性心停止と思われるもの:1998年,2%(12例/591例)→ 2006年,6%(71例/1197例);p for trend <0.001,目撃されたVF心停止例:6%(6例/96例)→ 16%(49例/297例);p for trend <0.001。
1か月後の生存率は5%(31例/591例)→ 12%(146例/1197例);p for trend <0.001。
[患者・救急隊背景による一次エンドポイントの補正後オッズ比]
女性(目撃された心原性心停止と思われる例1.51,目撃されたVF心停止例1.52),75歳以上(0.43, 0.65),心停止場所(vs 家庭):公共の場(1.33, 1.13);職場(1.75, 1.90);医療施設(1.76, 2.47),最初の心電図のVF(6.46, -),目撃者が開始したCPR(0.61, 1.51)。
目撃された全OHCAでの早期CPR(オッズ比/分,0.89)と早期挿管(0.96)がより良好な神経学的転帰と関連した。
VF例において転帰の改善と関連したのは早期除細動のみであった。
★結論★救命の連鎖の改善に伴い院外心停止例の生存率は上昇している。

ウツタイン大阪プロジェクトHP:http://osakalifesupport.jp/utstein/

[主な結果]
  • Iwami T et al: Continuous improvements in "chain of survival" increased survival after out-of-hospital cardiac arrests: a large-scale population-based study. Circulation. 2009; 119: 728-34. PubMed
  • 病院到着前に高度な気道確保が行われた院外心停止例の1か月後の神経学的転帰は不良。
    2005年1月~2010年12月に救急隊による心肺蘇生を受け病院に搬送され気道管理のデータのある成人院外心停止例64万9,359例での結果:病院到着前に現行のバッグ・バルグ・マスク法による換気実施例は36万7,837例(57%),高度気道確保例は28万1,522例(43%);気管挿管41,972例(6%),声門上気道デバイス使用23万9,550例(37%)。
    1か月後の神経学的に良好な状態(Glasgow-Pittsburgh cerebral performance 1:良好,2:中等度の障害)での生存率は高度気道確保例1.1% vs バッグ・バルグ・マスク法例2.9%:調整後のオッズ比0.38;95%信頼区間0.37~0.40で,気管挿管例:0.41;0.37~0.45,声門上気道デバイス使用例:0.38;0.36~0.40。
    propensity scoreマッチング法解析(35万7,228例)でも同様に高度気道確保例で神経学的転帰が不良であった。
    病院到着前の自発循環再開例での1か月後の生存(二次評価項目)も,高度気道確保例で不良であった(Hasegawa K, et al. Association of prehospital advanced airway management with neurologic outcome and survival in patients with out-of-hospital cardiac arrest. JAMA. 2013; 309: 257-66.)。 PubMed

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収載年月2009.03
更新年月2013.04