循環器トライアルデータベース

EARLY
Endothelin Antagonist Trial in Mildly Symptomatic Pulmonary Arterial Hypertension Patients

目的 症候性の軽症肺高血圧患者において,エンドセリンA(ETA)およびETBの両エンドセリン受容体拮抗薬であるbosentanの有効性を検討する。
一次エンドポイントは6か月後の安静時の肺血管抵抗,6分間歩行距離の変化。
コメント 原発性肺高血圧症は,頻度はそれほど多くないものの循環器領域で扱う重要な疾患の一つである。bosentan(ボセンタン)は,強力な血管収縮物質であるエンドセリンを受容体レベルでブロックする肺動脈高血圧症治療薬としてすでに我が国でもトラクリア錠として発売されている薬剤である。本試験の特徴としては,WHO機能分類のII度という比較的軽度な肺高血圧症に対象を絞っていることと,試験期間も24週間という比較的長期間の試験期間であることである。プラセボ群ではこの期間に肺血管抵抗の上昇や臨床症状の悪化を示していることは,肺高血圧症は軽症であっても,早期(early)の治療開始が重要であることを示している。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(21か国52施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6か月。
extension studyは19.5か月(中央値)。
対象患者 185例。12歳以上;WHO機能分類class IIの原発性肺高血圧,家族性肺高血圧,次の病因による肺高血圧:HIV感染;食欲抑制物使用;欠損孔径<2cmの心房中隔欠損症;<1cmの心室中隔欠損症;動脈管開存;結合組織疾患あるいは自己免疫疾患。Borg呼吸困難指数≧2ポイント+6分間歩行距離<正常予測値の80%あるいは<500m;肺血管抵抗(PVR)≧320 dyn/秒/cm5
■患者背景:平均年齢(bosentan群45.2歳,プラセボ群44.2歳),肺高血圧の病因:原発性肺高血圧(58%, 63%);先天性心疾患(両群とも17%);結合組織疾患(19%, 16%);HIV(5%, 2%),6分間歩行距離(438m, 431m),PVR(839 dyn/秒/cm5, 805 dyn/秒/cm5),肺動脈圧(52.5mmHg, 52.3mmHg),診断されてからの時間(2.9年,3.7年),体重(67.2kg, 69.0kg),併用投与:経口抗凝固薬(59%, 65%);Ca拮抗薬(31%, 41%);sildenafil(15%, 16%)。
治療法 bosentan群(93例):62.5mg×2回/日で投与を開始し,4週間後に125mg×2回/日に漸増投与(体重が40kg未満の場合は投与量は62.5mg×2回/日のまま),治療期間は6か月,プラセボ群(92例)。
prostanoids,その他のエンドセリン受容体拮抗薬による肺高血圧治療は禁じた。ランダム化前に1か月以上投与され,試験期間中の投与量が安定している場合は,抗凝固薬,Ca拮抗薬の併用投与は可とした。
ランダム化試験終了後,自由選択でオープンラベルの延長追跡(extension study)を実施。
結果 bosentan群の24週間後のbosentan投与率は86%。
[肺血管抵抗:解析例は168例:bosentan群80例,プラセボ群88例]
6か月後に,bosentan群はベースライン時の83.2%(95%信頼区間73.8~93.7),プラセボ群は107.5%(97.6~118.4):bosentan群の効果-22.6%(-35.5~-10.0, p<0.0001)。
このbosentan群の有効性はベースライン時のsildenafil併用の有無を問わずみられた:併用群(bosentan群13例,プラセボ群15例)-20.4%(-43.9~13.0, p=0.0478),非併用群(67例,73例)-23.1%(-35.1~-8.9, p<0.0001)
[6分間歩行:解析例は177例:86例,91例]
6か月後の距離は,bosentan群で11.2m延長(95%信頼区間-4.6~27.0),プラセボ群ではー7.9mと短縮した(-24.3~8.5)。しかし,bosentan群の有効性は有意差には至らなかった:効果の差19.1m(-3.6~41.8, p=0.0758)。
sildenafil併用群(bosentan群13例,プラセボ群15例):群間差は-17.3m(-105.7~71.1, p=0.8551),非投与群(73例,76例):25.7m(3.8~47.6, p=0.0795)。
原発性肺高血圧患者を他の患者と比べた結果も同様であった。
[その他の結果]
肺動脈圧:-2.7mmHg vs 3.0mmHg(p<0.0001),心係数:0.09L/分/m² vs -0.15L/分/m²)(p=0.025),混合静脈血酸素飽和度:1.2%, -3.5%(p=0.002)もbosentan群で改善した。
Borg呼吸困難指数に両群間差はなく,NT-pro-BNPはbosentan群で低下した(群間差-471ng/L, p=0.0003)。SF-36によるQOL(改善したという実感)はbosentan群の方が良好。
[有害事象]
重篤な有害イベントはbosentan群12例(13%),プラセボ群8例(9%)。最も多かったのはそれぞれ失神,右室不全。死亡は各群1例(bosentan群は101日後,プラセボ群31日後)。
1回以上の有害イベントはbosentan群65例(70%),プラセボ群60例(65%)。最も多かったものは鼻咽頭炎(7例,8例),次いで末梢浮腫(6例,7例),悪心・嘔吐(5例,8例)。
WHO機能分類の悪化:bosentan群3例(3.4%),プラセボ群12例(13.2%);p=0.0285。
[extension study:bosentan群77例,プラセボ群80例]
追跡期間19.5か月(中央値)の結果,bosentanによる可能性のある有害イベントが心不全,貧血など7例。うち3例は肝機能異常であったが治療中止後に正常化した。
ClinicalTrials. gov No: NCT00091715
★考察★WHO機能分類class IIの肺高血圧患者において,bosentanは有効である可能性が示された。
文献
  • [main]
  • Galiè N et al: Treatment of patients with mildly symptomatic pulmonary arterial hypertension with bosentan (EARLY study): a double-blind, randomised controlled trial. Lancet. 2008; 371: 2093-100. PubMed
    Dhaun N and Webb DJ: Endothelin-receptor antagonism: the future is bright. Lancet. 2008; 371: 2061-2. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2008.12