循環器トライアルデータベース

Amadeus

目的 血栓塞栓症発症リスクの高い心房細動患者において,活性化第X因子阻害剤idraparinuxの固定用量皮下注の血栓塞栓症予防の有効性および安全性を,ビタミンK拮抗薬の調整用量経口投与と比較する非劣性試験。

有効性の一次エンドポイントは全脳卒中(虚血性,出血性,不明),全身性塞栓症。
安全性の一次エンドポイントは臨床的に重要な出血(大出血,臨床的に重要な非大出血)。
コメント Lancet. 2008; 371: 315-21. へのコメント
リスク因子を有する心房細動症例に対する抗凝固予防介入の適応はホットトピックである。厳密な組み入れ基準,除外基準の条件下ではワルファリン(warfarin)による予防介入が有効性,安全性ともに優れた治療と理解されている。しかし,実臨床では薬効の個人差の多い,そして併用薬,食事による影響を受けやすいwarfarin介入の決定は極めて困難である。そこで薬効の個人差が小さく併用薬などにより影響を受けない薬剤が期待されている。
イドラパリナックス(idraparinux)はアンチトロンビンIIIと結合し,抗Xa活性を増強させる薬剤である。1回皮下注すると1週間にわたって抗凝固効果を発揮すると理解されている。皮下注であっても1週間に一度であれば実臨床への応用は可能と考えられたが,今回の試験における決定用量では,血栓塞栓イベントはidraparinux群が若干低い傾向にあったものの,臨床的に重要な出血,頭蓋内出血ともに同群で高率であった。間接的なXa阻害薬ではwarfarin以上の抗血栓/出血に及ぼす効果を得られなかったのは残念である。(後藤
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),多施設(10か国165施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は10.7か月(idraparinux群における出血増加のため試験は中止)。
ランダム化期間は2003年9月~’05年7月。
対象患者 4,576例。ECG上で確認された非弁膜症性心房細動で,次の1つ以上のリスク因子により長期の抗凝固治療の適応を有するもの:脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)・全身性塞栓症の既往,薬物療法を要する高血圧,左室機能不全,>75歳,糖尿病・症候性冠動脈疾患(CAD)を合併した65~75歳。
除外基準:抗凝固治療の禁忌,クレアチニンクリアランス<10mL/分,授乳中,妊娠の可能性,コントロール不良の出血の可能性を伴う最近の・予定されている侵襲的手技実施など。
■患者背景:年齢(idraparinux群70.1歳,ビタミンK拮抗薬群70.2歳),>75歳(30%, 32%),症候性CADを合併した65~75歳(15%, 16%),男性(67%, 65%),クレアチニンクリアランス:50mL/分~<80mL/分(43%, 44%);≧80mL/分(39%, 38%),脳梗塞・TIA・非中枢神経系全身性塞栓症既往(23%, 25%),薬物療法を要する高血圧(両群とも77%),左室機能不全(23%, 24%), CHADS2スコア*による低リスク(42%, 40%),ランダム化前のビタミンK拮抗薬治療(両群とも76%),AF:発作性AF(両群とも36%);永続性AF(54%, 55%)。
* CHF(うっ血性心不全),HT(高血圧),Age(年齢;75歳以上),DM(糖尿病):それぞれ1点,Stroke(脳梗塞,TIA)を2点として合計するリスク評価法。0~1;低リスク,2;中等度リスク,≧3:高リスク。
治療法 idraparinux群(2283例):2.5mgを週1回皮下注(ベースライン時のクレアチニンクリアランスが10~30mL/分の患者には2回目以降1.5mg/週),ビタミンK拮抗薬群(2293例):warfarinまたはacenocoumarolを経口投与(目標国際標準比[INR]2.0~3.0)。
非ステロイド抗炎症薬(NSAID),抗血小板薬使用は非推奨としたが,aspirin(≦100mg/日),clopidogrel(75mg/日)は可。1,2,6,13週,以後3か月ごとにチェックリストにより脳卒中,塞栓症,出血の症状を確認。非劣性ハザード比は1.5に設定。
結果 安全性の一次エンドポイント(臨床的に重要な出血)はidraparinux群346例(19.7/100例・年)vs ビタミンK拮抗薬群226例(11.3/100例・年):ハザード比1.74;95%信頼区間 1.47~2.06(p<0.0001)と,idraparinux群での出血リスクの増大を受け試験は中止された。
臨床的に重要な非大出血はidraparinux群291例(16.4/100例・年) vs ビタミンK拮抗薬群206例(10.3/100例・年):1.60;1.34~1.91(p<0.0001),頭蓋内出血は21例(1.1/100人・年)vs 9例(0.4/100人・年):2.58;1.18~5.63(p=0.014)であった。致死性出血はidraparinux群13例(0.7/100人・年) vs ビタミンK拮抗薬群2例(<0.1/100人・年)であったが,全死亡は62例(3.2/100人・年)vs 61例(2.9/100人・年)と同等であった(p=0.49)。高齢(75歳以上)または腎機能不全の患者では,ビタミンK拮抗薬群に比べidraparinux群で臨床的に重要な出血リスクが上昇した。
有効性の一次エンドポイント(全脳卒中または全身性塞栓症)は,idraparinux群18例(0.9/100人・年)vs ビタミンK拮抗薬群27/2107例(1.3/100人・年):0.71;0.39~1.30(非劣性p=0.007)と,idraparinuxのビタミンK拮抗薬に対する非劣性が確認された。
★結論★血栓塞栓症のリスクを有する心房細動患者において,idraparinuxによる長期治療は有効性の点でビタミンK拮抗薬に劣らなかったが,出血の有意な増加につながった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00070655
文献
  • [main]
  • Bousser MG et al: Amadeus Investigators: Comparison of idraparinux with vitamin K antagonists for prevention of thromboembolism in patients with atrial fibrillation: a randomised, open-label, non-inferiority trial. Lancet. 2008; 371: 315-21. PubMed
  • [substudy]
  • 腎機能と転帰-腎機能障害(CrCl<60 mL/分)で脳卒中,重大な出血リスクは有意に増加。
    腎機能が一次エンドポイントに及ぼす影響を検討したpost hoc解析の結果(平均追跡期間325日):Cockcroft-Gault式によるクレアチニンクリアランス(CrCl)で分類した‘more than mild CKD’:中等度~高度腎障害例は,中等度の腎障害(30~59mL/分)が30.8%,高度(<30mL/分)が1.5%。脳卒中+非中枢神経性全身性塞栓症(SE)45例,重大な出血103例が発生した。
    脳卒中+SEの年間発生率とCrClには線形の関係が認められた(≧90mL/分:0.6%, 60~89mL/分:0.8%, <60mL/分:2.2%, p<0.001)。CrCl<60mL/分は≧60mL/分にくらべ脳卒中+SEリスクが2倍以上高かった(調整ハザード比[HR]2.27;95%信頼区間1.14~4.52)。
    また,CHA2DS2VASc・CHADS2スコアとCKDのステージは線形の関係にあった。CHA2DS2VAScスコア1~2の患者(中等度~高度の腎障害例はスコア1:1.7%, 2:14.7%)では,CrCl<60mL/分でリスクは8倍となった(相対リスク8.26;1.68~40.6, p<0.001)。
    ROC解析で,CHADS2またはCHA2DS2VAScスコアにCrCl<60mL/分を加えても,c統計量は変化しなかったが(CHADS2:0.66→0.71[p=0.054], CHA2DS2VASc:0.70→0.73[p=0.63]), net reclassification improvementは26%と有意であった(p=0.02)。
    重大な出血リスクはCrCl<60mL/分例でCrCl≧60 mL/分例にくらべ約60%高かった(HR 1.58;1.05~2.39, p=0.027):Eur Heart J. 2013; 34: 3572-9. PubMed

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収載年月2009.01
更新年月2014.02