循環器トライアルデータベース

LEADERS
Limus Eluted from a Durable versus Erodable Stent Coating

目的 慢性安定冠動脈疾患(CAD),急性冠症候群(ACS)患者において,生体分解性ポリマー製のbiolimus*溶出ステントの安全性および有効性を耐久性ポリマー製のsirolimus溶出ステントと比較する非劣性試験。

一次エンドポイントは9か月後の心臓死,心筋梗塞(MI),臨床適応のある標的血管の血行再建術(TVR)の複合。

* 高脂溶性の半合成sirolimusアナログ
コメント 本トライアルは第二世代のDESであるBioMatrix IIIRを第一世代のsilorimus溶出ステント(Cypher stentR)と比較した非劣性試験である。DES の構成要素はステントプラットフォーム,薬剤,ポリマーの三つで,BioMatrix IIIRはstainless steel のBIOFLEX II をプラットフォームとし,いわゆるlimus系でsilorimusの約10倍脂溶性に富むbiolimus A9を溶出薬剤とするが,その最大の特徴は6~9か月で二酸化炭素と水に分解されるpolylactic acidを薬剤キャリアーとしている点である。DESにおけるポリマーの役割は薬剤の保持と溶出スピードのコントロールであるが,長期的には炎症・過敏性反応を惹起して再狭窄や(超)遅発性ステント血栓症の一因と指摘されている。薬剤(ポリマー)を血管壁側のみに配するBioMatrix IIIRは,従って,6~9か月後にはプラットフォームであるBMS(BIOFLEX II )のみが残ることとなる。
本トライアルで特筆すべきは両者ともに対象病変(症例)の80%が適応外使用(“off-label”)となったことである。Cypher stentRを始めとした第一世代のDESがPCIの主流となり,その手技や成績が成熟期を迎えた現状では,それらのpivotal試験のようにon-label のみを対象とするのはむしろ「非現実的」ということだろう。結果としてBioMatrix IIIRの非劣性が示され,一次エンドポイントも9.2%と十分許容範囲で,biolimus A9にsilorimusと同等の有効性が証明された。
しかし安全性に関しては,特にステント血栓症で課題が残る。sirolimus群(2.2%)とは早期・遅発性とも有意差なく,またBMSのコントロール群が設定されていないため,病変の複雑性を反映した結果とも解釈できるが,9か月までに2.6%のステント血栓症は非常に高頻度であり,とても許容範囲とは言いがたい。また慢性期のポリマーの影響が排除できるBioMatrix IIIRでは1年以降の超遅発性ステント血栓症の減少が期待されるはずなのに,9か月で区切った試験デザインそのものに肩すかしの感は否めない。ステント血栓症を含む二次エンドポイントは5年間追跡するプロトコールなので,その結果を待ちたい。
なお,BioMatrix IIRを用いたTaxus stentRとの比較試験(STEALTH II)がアメリカ・カナダで現在進行中である。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,多施設(ベルギー,フランス,ドイツ,オランダ,ポーランド,スイス,英国の10施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は9か月。
実施期間は2006年11月27日~’07年5月18日。
対象患者 1,707例2,472病変。18歳以上の慢性安定CADまたはACSで,参照血管径2.25~3.5mmのステント植込みに適した50%以上の狭窄病変を1つ以上有するもの。
除外基準:aspirin・clopidogrel・heparin・ステンレス・sirolimus・biolimus・造影剤へのアレルギー,PCI後6か月以内の手術の予定(周術期に抗血小板薬の2剤併用治療を維持できない場合)など。
■患者背景:年齢(biolimus溶出ステント群64.6歳,sirolimus溶出ステント群64.5歳),男性(75.0%, 74.6%),糖尿病(26.0%, 22.5%),高血圧(73.5%, 72.7%),高コレステロール血症(65.3%, 68.2%),現在の喫煙(24.0%, 25.2%),CADの家族歴(39.6%, 44.0%),既往:MI(32.2%, 32.6%);PCI(36.4%, 36.7%);CABG(10.5%, 12.6%),安定狭心症(45.2%, 44.4%),ACS(54.8%, 55.7%),適応外使用(81.2%, 78.2%),多枝病変(24.4%, 20.7%),参照血管径<2.75mm(68.3%, 66.8%),病変数:1つ(63.0%, 68.6%);2つ(28.9%, 21.9%),病変長>20mm(30.6%, 26.5%),新規病変のみ(94.0%, 92.9%),標的病変:左前下行枝(37.2%, 39.7%);左回旋枝(28.0%, 23.6%),TIMI grade 3(80.2%, 80.5%)。
治療法 血管造影後,ランダム化。
biolimus溶出ステント群(857例1257病変):生体分解性ポリマー製ステント。BioMatrix Flex, Biosensors社。直径2.25, 2.5, 3.0, 3.5mm,長さ8, 11, 14, 18, 24, 28mm,sirolimus溶出ステント群(850例1215病変):耐久性ポリマー製ステント。Cypher SELECT, Cordis社。直径2.25, 2.5, 2.75, 3.0, 3.5mm,長さ8, 13, 18, 23, 28, 33mm)。バルーン前拡張後,ステント植込み(ダイレクトステントも可)。
手技前または手技時にaspirin 75mg以上,clopidogrel 300~600mg(投与開始量),未分画heparin 5000IUまたは70~100IU/kg以上を投与し,退院後は全例aspirin 75mg/日以上を無期限に,clopidogrel 75mg/日を12か月以上継続投与。GP IIb/IIIa受容体拮抗薬は担当医に委ねた。
追跡血管造影を427例で実施(biolimus群213例326病変,sirolimus群214例293病変)。
結果 一次エンドポイントはbiolimus溶出ステント群79例(9.2%) vs sirolimus溶出ステント群89例(10.5%)で,biolimus溶出ステントのsirolimus溶出ステントに対する非劣性が認められた(リスク比0.88;95%信頼区間 0.64~1.19,非劣性p=0.003,優位性p=0.39)。心臓死は14例(1.6%)vs s群21例(2.5%):優位性p=0.22,MIは49例(5.7%)vs 39例(4.6%):優位性p=0.30,臨床的に必要なTVRは38例(4.4%)vs 47例(5.5%):優位性p=0.29で,いずれも両群間に有意差はなかった。
ステント血栓症(definite/ probable)は,0~30日で2.1% vs 1.9%,>30日~9か月で0.5% vs 0.5%と群間差はみられなかった。
追跡血管造影の実施はbiolimus溶出ステント群168例255病変(79%),sirolimus溶出ステント群167例233病変(78%)。追跡期間9.1か月(中央値)のステント内狭窄率はbiolimus溶出ステント群20.9% vs sirolimus溶出ステント群23.3%で,biolimus溶出ステントの非劣性が確認された(差-2.2%;-6.0~1.6,非劣性p=0.001,優位性p=0.26)。late loss(ステント内)は0.13mm vs 0.19mm,再狭窄率(セグメント内)は6.7% vs 10.8%と差がなかった。
★考察★慢性安定CADおよびACSにおいて,biolimus溶出ステントはsirolimus溶出ステントの代替ステントとして安全かつ有効であることが示唆された。
ClinicalTrials. Gov: NCT00389220
文献
  • [main]
  • Windecker S et al: Biolimus-eluting stent with biodegradable polymer versus sirolimus-eluting stent with durable polymer for coronary revascularisation (LEADERS): a randomised non-inferiority trial. Lancet. 2008; 372: 1163-73. PubMed
    Waksman R: Drug-eluting stents: is new necessarily better? Lancet. 2008; 372: 1126-8. PubMed
  • [substudy]
  • 4年後の心血管一次エンドポイントはbiolimus溶出ステント群とsirolimus溶出ステント群は同等,ただし超遠隔期のステント血栓症はbiolimus溶出ステント群で有意に低下。
    4年追跡完遂率は96.1%。一次エンドポイント発生率では,biolimus溶出ステント群のsirolimus溶出ステント群に対する非劣性が示された(160/857例[18.7%] vs 192/850例[22.6%];リスク比[RR]0.81;95%信頼区間0.66~1.00,非劣性のp<0.0001)。1~4年後(0.73;0.54~1.00, p=0.050)は0~1年後(0.88;0.66~1.17)にくらべて群間差が大きい傾向がみられたが,治療効果×時間の交互作用は認められなかった(p=0.39)。definiteステント血栓症(ST)はbiolimus溶出ステント群で低下傾向が示されたが(0.62;0.35~1.08, p=0.09),これには1~4年後(超遠隔期)のSTリスクの有意な低下(0.20;0.06~0.67, p=0.004)が寄与していた(RR×時間の交互作用p=0.017)。definite/probable STについても同様の結果を認めた(p=0.09)。ST関連イベント(definite ST発生前後7日以内に発生した一次エンドポイント)のリスクは,1~4年後にbiolimus溶出ステント群で有意に低下した(0.17;0.04~0.78;交互作用のp=0.049):Lancet. 2011; 378: 1940-8。 PubMed
  • SYNTAXスコアによりDES例のリスク層別の可能性が示される。
    SYNTAX scoreと主要有害心イベント:1,397例で1年後の転帰をSYNTAX score 3分位(低スコア群:≦8[464例],中間スコア群:>8~16[472例],高スコア群:>16[461例])別にみたところ,SYNTAX scoreが高スコア群で主要心イベントを伴わない生存率が有意に低かった(低スコア群92.2%,中間スコア群91.1%,高スコア群84.6%;p<0.001)。
    死亡率:低スコア群1.5%,中間スコア群2.1%,高スコア群5.6%(ハザード比1.97;95%信頼区間1.29~3.01, p=0.002),心筋梗塞(MI):高スコア群ほど高い傾向にあり,標的血管血行再建術(TVR):低スコア群6.3%,中間スコア群7.8%,高スコア群11.3%(1.38;1.1~1.75, p=0.006),心臓死+MI+TVRの複合エンドポイントはそれぞれ7.8%, 8.9%, 15.4%(1.47;1.19~1.81, p<0.001):J Am Coll Cardiol. 2010; 56: 272-7. PubMed

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収載年月2009.02
更新年月2012.02