循環器トライアルデータベース

AF-CHF
Atrial Fibrillation and Congestive Heart Failure Trial

目的 心房細動(AF)を合併したうっ血性心不全を有する患者において,リズムコントロールとレートコントロールの心血管死抑制効果を比較する。
一次エンドポイントは心血管死。
二次エンドポイントは全死亡,脳卒中,うっ血性心不全の悪化,入院,QOL,治療コスト,心血管死+脳卒中+うっ血性心不全の悪化の複合。
コメント 心房細動(AF)があると心不全例では予後が悪化するので,AFを抑制すれば心不全例の予後が改善することが期待された。しかし,心不全例のAFの治療方針としてレートコントロールとリズムコントロールに差がないことが示された。これは心筋梗塞例で心室期外収縮があると生命予後が悪いが,心室期外収縮を抑制しても生命予後が改善しないこととよく似た成績である。
ただし,アブレーションによるAFリズムコントロールにもあてはまるか否かは,今後の課題である。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設(カナダ,米国,ブラジル,アルゼンチン,欧州,イスラエルの123施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は37か月。
登録期間は2001年5月~’05年6月,2007年6月30日追跡終了。
対象患者 1376例。EF≦35%(6か月以内の放射性画像/心エコー/心血管造影),うっ血性心不全の既往(6か月以内のNYHA II~IV度,EF≦25%,6か月以内に心不全による入院を要した無症候のもの),AFの既往(AFに対する電気的除細動の既往および6か月以内の10分以上持続するAF,6か月以内の除細動を要するかまたは6時間以上持続するAF),試験薬による長期治療が可能なもの。
除外基準:12か月以上持続するAF,治療可能な原因によるAF/心不全,48時間以内の非代償性心不全,他の不整脈に対する抗不整脈薬使用,2~3度の房室ブロック,QT延長症候群の既往,房室結節アブレーション既往など。
■患者背景:平均年齢67歳,男性82%,NYHA III~IV度 31%,平均EF 27%,冠動脈疾患48%,高血圧48%,糖尿病21%。カナダ40%,ブラジル,アルゼンチン33%,欧州12%,米国9%,イスラエル6%。
持続性AF(リズムコントロール群67%,レートコントロール群70%),最初のAF診断から6か月以上経過したもの(41%, 46%),電気的除細動既往(34%, 37%),AFによる入院歴(51%, 55%),6か月以内の心不全による入院歴(54%, 56%),非虚血性心筋症(36%, 39%)。
薬物治療状況:digoxin(64%, 65%→ 1か月後51%, 75%;p<0.001),β遮断薬(80%, 78%),ACE阻害薬(両群とも86%),ARB(両群とも11%),アルドステロン拮抗薬(43%, 46%),経口抗凝固薬(86%, 90%),aspirin(40%, 37%)。
抗不整脈薬服用歴(43%, 44%),ICD(両群とも7%)。
治療法 リズムコントロール群(682例):AF予防の積極的治療として,抗不整脈薬治療後に洞調律を回復できなかった症例に対しランダム化から6週以内,さらに必要に応じ3か月以内にも電気的除細動を推奨した(AF再発に対しさらなる実施も可)。洞調律維持の第一選択薬としてamiodarone(および必要に応じsotalol/dofetilide)を使用。徐脈により抗不整脈薬使用不可の場合は恒久ペースメーカー植込みを推奨した。
レートコントロール群(694例):β遮断薬およびdigitalisを使用。目標心拍数(4,12か月,以後年1回の安静時12誘導心電図上で心室拍数80拍/分未満,および6分間歩行試験で110拍/分未満)に達しなかった症例には,房室結節アブレーションおよびペースメーカー治療を推奨。
心不全治療として,全例にACE阻害薬/AII受容体拮抗薬,最大耐容量のβ遮断薬,抗凝固薬の使用を推奨。ガイドラインに従い植込み型除細動器および心室再同期治療を推奨。
3週,4か月後,その後は4か月間隔で48か月まで,以後6か月ごとに追跡。
結果 一次エンドポイントは,リズムコントロール群182例(27%)vs レートコントロール群175例(25%)で,両群間に有意差はなかった(調整前ハザード比1.06;95%信頼区間 0.86~1.30, p=0.59)。
二次エンドポイントも両群は同等であり,全死亡はリズムコントロール群32% vs レートコントロール群33%(p=0.73),脳卒中は3% vs 4%(p=0.32),うっ血性心不全悪化は28% vs 31%(p=0.17),心血管死+脳卒中+うっ血性心不全悪化は43% vs 46%(p=0.20)であった。リズムコントロール群ではレートコントロール群に比べ入院(64% vs 59%, p=0.06),徐脈性不整脈による入院(6% vs 3%, p=0.02),AFによる入院(14% vs 9%, p=0.001),電気的除細動の必要(59% vs 9%, p<0.001)の頻度が高かった。所定のサブグループのいずれにおいても,両群間に有意差はなかった。
★結論★AFおよびうっ血性心不全を有する患者において,リズムコントロールはレートコントロールを凌ぐ心血管死抑制効果を示さなかった。
Clinical Trials. gov No.: NCT00597077
文献
  • [main]
  • Roy D et al for the atrial fibrillation and congestive heart failure investigators: Rhythm control versus rate control for atrial fibrillation and heart failure. N Engl J Med. 2008; 358: 2667-77. PubMed
  • [substudy]
  • 心房細動を合併した心不全患者におけるリズムコントロール,洞調律は転帰の改善と関連しない。
    1回以上のクロスオーバーが208例(15%):リズムコントロール群144例(21%),レートコントロール群64例(9%)。1回例は190例。
    死亡445例(32%),心不全悪化は402例(29%)。リズムコントロールは心血管死(ハザード比0.90;95%信頼区間0.70~1.16, p=0.41),全死亡(0.86;0.69~1.08, p=0.19),心不全悪化(0.86;0.68~1.10, p=0.23)を予測しなかった。
    ECGデータ解析(1316例[96%]):心房細動,洞調律は心血管死,総死亡,心不全の悪化を予測しなかった:J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 1796-802. PubMed

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収載年月2008.10
更新年月2010.06