循環器トライアルデータベース

BAT
Bleeding with Antithrombotic Therapy

目的 脳卒中および心血管疾患発症後に抗血栓薬を投与した日本人患者における出血性合併症リスクを検討する。
一次エンドポイントは致死的出血*,大出血**の初発。
* 致死的出血性イベントの定義は≧50g/Lのヘモグロビン低下,出血性ショック,症候性の頭蓋内出血,赤血球≧4単位の輸血。
** 大出血の定義は重大な機能障害,重症眼内出血,赤血球≦3単位の輸血。
コメント 本研究は抗血小板薬治療下における日本人の出血性合併症の発症率を示した極めて意義の大きな研究である。我々はREduction of Atherothrombosis for Continued Health(REACH)研究において,日本人の出血性合併症の発症率は低いとしたが,REACHでは入院を要する出血をイベントとしたため,本研究とはベースが異なる。欧米と協同して薬剤開発を行うためには日本人の出血/血栓リスクに関するベースの情報が必須である。本研究はそのベースとなるデータを示した意義がある。(後藤
デザイン 前向き観察研究,多施設(日本の19施設)。
期間 追跡期間は19か月(中央値)。
登録期間は2003年10月~2006年3月。
対象 4009例。脳血管,心血管疾患発症後,経口抗血小板薬(単剤AP群:AP群,併用dual AP群:dual AP群)またはwarfarin(W群,A+AP群)の投与を受けている外来患者,または同薬剤を投与されている入院患者。
■患者背景:平均年齢(AP群69歳,dual AP群69歳,W群68歳,W+AP群70歳+),男性(AP群69%,dual AP群9%*,W群64%,W+AP群76%+)。
抗血栓療法を開始した合併適応疾患:脳梗塞(60%, 75%*, 43%, 51%),脳出血(1.4%, 2.3%, 1.6%, 2.5%),心疾患(49%, 41%, 94%, 87%+),心房細動(5.3%, 4.0%, 67%, 50%+),腫瘍(7.8%, 6.0%, 7.7%, 5.9%),肝硬変(2.0%, 0.9%, 2.9%, 3.2%)。
危険因子:高血圧(67%, 77%*, 47%, 59%+),糖尿病(28%, 33%, 20%, 30%+),高コレステロール血症(49%, 48%, 29%, 44%+),低コレステロール血症(0.6%, 0.3%, 0.9%, 0.4%),喫煙(52%, 64%*, 42%, 54%+),飲酒(6.5%, 3.7%, 3.8%, 3.8%),血圧(登録時に測定:135/76mmHg, 136/77mmHg, 128/74mmHg, 130/75mmHg)。
抗血栓薬投与期間はAP群4.8年,dual AP群5.3年,W群5.4年,W+AP群4.7年。
* p<0.001(AP群 vs dual AP群),+ p<0.001(W群 vs W+AP群)
調査方法 抗血栓療法を,抗血小板薬単剤(AP)群,抗血小板薬2剤併用(dual AP)群,warfarin(W)群,warfarin+抗血小板薬併用(W+AP)群の4群に分けて出血合併症の頻度を評価。
AP群(1891例):aspirin, ticlopidine, cilostazolのいずれかを投与。
dual AP群(349例):aspirin+ticlopidine, aspirin+cilostazolのいずれかの併用投与。
W群(1298例):warfarinをINR0.98~4.93に調整投与。
W+AP群(471例):warfarinはINR0.95~7.45に調整投与。
注:当時clopidogrelは国内で認可されていなかった。
結果 AP群で最も投与率が高かったのはaspirin(1340例:投与量中央値100mg/日),次いでticlopidine(394例:200mg/日),cilostazol(99例,200 mg/日)。
dual AP群:aspirin+ticlopidine(220例),aspirin+cilostazol(49例)。
W群:INR 1.99(中央値)。
W+AP群:warfarinのINR 1.95(中央値),aspirin 中央値81mg/日投与が336例,ticlopidine中央値200mg/日投与が69例。
致死的出血7例,非致死的,生命にかかわる出血が50例,大出血が51例発生し,症候性頭蓋内出血は31例であった。
一次エンドポイントはの年間発生率は,AP群1.21%/年(追跡期間中央値18か月),dual AP群2.00%/年(20か月),W群2.06%/年(19か月),W+AP群3.56%/年(22か月)で,W+AP群が最も多かった(p<0.001)。
患者背景で調整した多変量分析の結果,一次エンドポイントはW+AP群がW群よりも1.76倍多かった(95%信頼区間1.05~2.95, p=0.031)が,dual AP群とAP群とでは相対リスクは1.62倍(0.77~3.39)であったが有意差はなかった(p=0.202)。
全出血リスクはdual AP群のほうがAP群より1.37倍(1.07~1.76, p=0.014),W+AP群のほうがW群よりも1.30倍有意に高かった(1.05~1.60, p=0.015)。
★結論★欧米の試験デザインとは異なるものの,日本人の抗血栓療法に伴う出血性合併症のリスクは欧米の報告と同様であることが示された。抗血栓薬併用療法と出血性イベントリスク上昇は独立して関連した。
文献
  • [main]
  • Toyoda K et al for the bleeding with antithrombotic therapy (BAT) study group: Dual antithrombotic therapy increases severe bleeding events in patients with stroke and cardiovascular disease: a prospective, multicenter, observational study. Stroke. 2008; 39: 1740-5. PubMed

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収載年月2008.09