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Dietary Intervention Randomized Controlled Trial

目的 中等度の肥満患者において,3種類の食事療法(低脂肪食,地中海食,低炭水化物食)の安全性,有効性を比較する。
主な評価項目は体重(減量)。
コメント 肥満に伴うメタボリックシンドローム(MetS)が注目される中,体重のコントロールが大きな健康上の問題点となってきた。欧米で行われている研究から,肥満者では体重の5%減が代謝改善をもたらすというエビデンスが得られ,日本肥満学会では5%減を当面の目標値としている。一方,Diabetes Prevention Programでは7%減で糖尿病発症を58%抑制できるとしており,これをもって,7%減で心血管病予防が可能か検討するLook AHEAD Studyが進行中である。さて,体重減少のための食事療法として低炭水化物食がよいとする報告が散見されるが,長期にわたる試験がないことから本試験が行われた。本試験は,低脂肪食,地中海食,低炭水化物食の比較を行っており,低脂肪食より,低炭水化物食のほうが体重の減少,代謝改善にもよいとする報告をしている。しかし,食事の内容を見ると,低脂肪食といっても総摂取エネルギーの30%に制限するというもので,わが国の20~25%とは大きく隔たることは留意すべきことであろう。また,低炭水化物食も当初,炭水化物を1日20gに制限するという極めて偏った食事であり,わが国でそのままには受け入れることのできない内容である。食事療法の評価をするということの難しさである。しかし,興味深い点は,いずれにしても摂取カロリーの減少をもたらし,低炭水化物食では最大8%の体重減少をもたらし,その後リバウンド,プラトーという経過をたどるが,代謝改善は2年間を通して観察されるということである。この事実は,とくにMetSにおいて6か月間の体重減少の効果が,代謝面ではその後も認められるというエビデンスを与えており,今後の食事指導には十分生かすことのできる情報と考えられる。(寺本
デザイン 無作為割付け,単施設(イスラエル),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は2年。
2004年12月登録開始,試験実施期間は2005年7月~2007年6月。
対象患者 322例。40~65歳,BMI>27kg/m²,あるいは年齢,BMIにかかわらず2型糖尿病,冠動脈疾患(CAD)患者。
除外基準:クレアチニン≧2mg/dL,肝機能障害(アラニンアミノトランスフェラーゼ,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが正常上限値の2倍以上)など。
■患者背景:平均年齢52歳,男性86%(低脂肪食群86%,地中海食群82%,低炭水化物食群91%),体重91.4kg,BMI 30.9kg/m²,腹囲105.9cm,血圧131.3/79.7mmHg,2型糖尿病14%,CAD 37%,高分子量アディポネクチン7.3mg/dL,レプチン12.5mg/dL。
薬物治療:脂質低下治療26%,降圧治療30%,経口血糖コントロール薬治療8%,インスリン1%。
治療法 低脂肪食群(104例):AHAガイドラインに基づく厳格なカロリー制限食。エネルギー摂取量は女性1500kcal/日,男性1800kcal/日で,うち30%を脂肪,10%を飽和脂肪酸から摂取,コレステロールは300mg/日とした。低脂肪穀物,野菜,果物,マメ類を食べるようにし,それ以上の脂肪,甘い食べ物,高脂肪スナックは制限するよう助言した。
地中海食群(109例):脂肪控えめのカロリー制限食。豊富な野菜,赤身肉少なめ,牛・羊肉の代わりに鶏肉,魚。摂取エネルギー量は女性1500kcal/日,男性1800kcal/日に制限,脂肪からの摂取カロリーが35%を超えないようにし,その他の脂肪は主にオリーブオイル30~45gおよびナッツ(5~7粒で<20g/日)。Willett,Skerrettの推奨に基づいた。
低炭水化物食群(109例):カロリー,蛋白,脂質の制限はせず,2か月間の炭水化物摂取20g/日を目標とし,その後最大120g/日まで増量。トランス脂肪酸を避け,ベジタリアン食の脂肪,蛋白摂取を助言。アトキンスダイエットに基づいた。
結果 割付けられた食事の遵守率は1年後95.4%,2年後84.6%(2年後:低脂肪食群90.4%,地中海食群85.3%,低炭水化物食群78.0%;p=0.04)。
[エネルギー摂取量]
食物頻度質問票で評価。6,12,24か月後,3群とも試験開始時に比べ有意に低下(p<0.001),3群間に有意差はみられなかった。
低炭水化物食群は炭水化物の摂取が最も少なく,蛋白,総脂肪,飽和脂肪酸,総コレステロールの摂取量が最も多かった。
地中海食群は一価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比が最も高く(p<0.001),食物繊維の摂取量が最も多かった。
[減量]
3群とも減量したが,低脂肪食群に比べ他の2群の方がより体重が減少した:低脂肪食群-2.9kg,地中海食群-4.4kg,低炭水化物食群-4.7kg(ランダム化された食事と時間の相互作用;p<0.001)。
試験を終了した272例の減量は,それぞれ-3.3kg, -4.6kg, -5.5kg。
男性(277例):-3.4kg, -4.0kg, -4.9kg, 女性(45例):-0.1kg, -6.2kg, -2.4kg(食事群と性の相互作用;p<0.001)。
BMI:-1.0kg/m², -1.5kg/m², -1.5kg/m²(治療群間p=0.05)。
腹囲:-2.8cm, -3.5cm, ー3.8cmで3群とも有意に減少したが,群間に有意差はなかった。
[血圧]
収縮期血圧(拡張期血圧):低脂肪食群-4.3mmHg(-0.9mmHg),地中海食群-5.5mmHg(-2.2mmHg),低炭水化物食群-3.9mmHg(-0.8mmHg)で3群間に有意差はなかった。
[脂質値]
HDL-C(mg/dL):低脂肪群(試験開始時38.6→ 6か月後+1.7→ 24か月後+6.4),地中海食群(39.4→+2.0→+6.3),低炭水化物食群(37.5→+4.8→+8.4)。
LDL-C(mg/dL):117.0→-0.2→-0.05, 122.8→-4.3→-5.6, 117.2→+1.0→-3.0。
トリグリセライド(mg/dL):156.5→-11.7→-2.8, 173.6→-23.0→-21.8, 181.7→-40.0→-23.7。
総コレステロール/HDL-C比:5.2→-0.3→-0.6, 5.4→-0.5→-0.9, 5.6→-0.8→-1.1。相対低下は低炭水化物群が最も大きく20%,最も小さかった低脂肪群は12%(食事と時間の相互作用;p=0.01)。
[その他の検査値]
高感度CRP:地中海食群,低炭水化物食群のみで有意に低下したが,低下率に差はみられなかった。
高分子量アディポネクチン:3群で有意に上昇したが群間差はなかった。
レプチン:3群で有意に低下したが群間差はなかった。
[糖尿病患者群(36例)]
地中海食群は低脂肪食群に比べ,空腹時血糖およびインスリン値の変化が良好であった(空腹時血糖値に関する地中海食と時間の相互作用;p<0.001)
★結論★地中海食(血糖が良好)と低炭水化物食(脂質が良好)は低脂肪食の代替食になる可能性が示された。
ClinicalTrials.gov No: NCT00160108
文献
  • [main]
  • Shai I et al for the dietary intervention randomized controlled trial (DIRECT) group: Weight loss with a low-carbohydrate, Mediterranean, or low-fat diet. N Engl J Med. 2008; 359: 229-41. PubMed
  • [substudy]
  • 食事療法に動脈硬化退縮の可能性。収縮期血圧低下が退縮の有意な予測因子。
    (DIRECT-Carotid study・140例:平均年齢51歳,男性88%,BMI 30kg/m2
    頸動脈IMT・VWVをそれぞれBモード超音波,3D超音波で計測。
    ベースライン時の頸動脈血管壁容積(VWV)高値例は,内膜-中膜肥厚(IMT)高値,高齢,男性,体重高値,血圧高値,インスリン高値であった(全p<0.05)。
    2年間の食事療法後,VWVが5%有意に減少(-58.1mm3;95%信頼区間-81.0~-35.1mm3,p<0.001)。食事療法間に有意差はみられなかった:低脂肪食群-60.69mm3,地中海食群-37.69mm3,低炭水化物食群-84.33mm3;p=0.28。
    IMTの変化は-1.1%(p=0.18)。
    VWV退縮例(平均-128.0mm3)は進展例(+89.6mm3)に比べ,体重(-5.3kg vs -3.2kg,p=0.03),収縮期血圧(SBP:-6.8mmHg vs -1.1mmHg,p=0.009),ホモシステイン(-0.06μmol/L vs +1.44μmol/L,p=0.04)の減少が大きく,アポリポ蛋白A1の上昇が大きかった(+0.05g/L vs -0.00g/L,p=0.06)。
    多変量解析:SBP低下のみがVWV,IMTの大きい退縮の有意な独立した予測因子であった:Circulation. 2010; 121: 1200-8. PubMed

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収載年月2008.11
更新年月2010.04