循環器トライアルデータベース

FINESSE
Facilitated Intervention with Enhanced Reperfusion Speed to Stop Events

目的 ST上昇型急性心筋梗塞患者において,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬abciximab+半量reteplase併用投与,abciximab単独投与によるfacilitated PCIとprimary PCIを比較する。
一次エンドポイントは90日後の複合主要イベント (全死亡,ランダム化後48時間以降の心室細動,心原性ショック,入院あるいは救急救命室[ER]での受診が必要なうっ血性心不全)。
コメント ST上昇型急性心筋梗塞症の治療にはより早く有効な再灌流を行うことが最も重要である。これまで血栓溶解療法よりもprimary PCIを適切に行う方が臨床的有用性があると報告されているが,どの地域でもprimary PCIが可能であるとはいえない。primary PCIの場合,door-to-balloon時間は90分以内が望ましいとACCガイドラインでは示されているが,米国でも平均139分かかっておりACC基準でprimary PCIが可能な施設に運ばれ得る地域に住んでいるのは40%の人に過ぎない。ASSENT-4 PCI trialにおいて,血栓溶解療法のみを先行させた場合には血小板活性化が生じるため臨床的有用性は示されていない。血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬(GP IIb/IIIa薬)単独あるいは血栓溶解療法との併用の効果を示す決定的な報告はなく,高齢者の出血の頻度が高いことが知られている。本研究はprimary PCIよりもGP IIb/IIIa薬と半用量の血栓溶解療法の併用をPCI前に行った方がより臨床効果が得られることを想定して検討されているが,主要な結果には差は見られず併用療法により出血の合併症が増大した。併用療法の方がST上昇やTIMI 3 flowの早期改善が得られているが,(1) 発症2時間以内での再灌流でないと大きな心筋救済は得られないこと(本研究では4時間以上),(2) 血栓溶解療法よりもPCIの方がより大きな心筋救済が得られること,(3) ハイリスク患者の方が早期再灌流の恩恵を受けやすいこと,(4) GP IIb/IIIa薬を用いたprimary PCIでは主要イベントの発生率が低く,効果の差を示すことは大変困難であること,が原因と考えられる。これまでの17 studyによるメタ解析においても,facilitated PCIは通常量の血栓溶解薬を用いるとprimary PCIよりも死亡率が高く,半量の血栓溶解薬では臨床効果は認められないと報告されている。本研究でも,PCI前の併用療法により大出血の発生が増加しており,併用療法を行わない日本の実臨床のprimary PCIはGP IIb/IIIa薬をPCI直前に用いていないが決して間違った選択肢ではないことを間接的に証明している。(星田
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(20か国),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は90日。
登録期間は2002年8月~2006年12月。
対象患者 2452例。発症から6 時間以内;急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI);診断カテーテルまでの推定時間がランダム化から1~4 時間のもの。
除外基準:低リスク症例(60歳未満,下壁に限局した梗塞など),heparinを>40U/kg投与しているもの,出血リスク因子を有しているもの。
■患者背景:平均年齢(primary PCI群62.5歳,abciximab単独facilitated PCI群61.9歳,abciximab+reteplase 併用 facilitated PCI群 62.6歳),女性(25.7%, 26.4%, 26.4%),白人(97.5%, 97.6%, 98.1%),喫煙(65.0%, 67.1%, 64.9%),糖尿病(16.5%, 14.5%, 15.5%),MI既往(10.2%, 9.8%, 12.6%),高血圧(46.4%, 49.5%, 47.6%),高コレステロール血症(34.2%, 30.4%, 35.1%),梗塞場所:前壁(45.9%, 49.3%, 48.3%);下壁あるいは後壁(44.4%, 43.8%, 45.7%),Killip分類class I(88.5%, 87.3%, 89.5%),発症からカテーテル診断までの推定搬送時間(中央値:2.1時間,2.2時間,2.1時間),病院到着からバルーン拡張までの時間(中央値:全群で2.2時間),最大活性化凝固時間(229秒,230秒,223秒),退院時あるいは7日目のACE阻害薬投与例(75.1%, 77.5%, 76.6%);β遮断薬投与例(86.1%, 86.9%, 85.0%)。
治療法 以下の3群にランダム化。
abciximab+reteplase併用 facilitated PCI群(828例):ランダム化後すぐにabciximab 0.25mg/kg+reteplase(75歳未満:30分間隔で5Uを2回ボーラス投与,75歳以上:5Uを1回ボーラス投与)を静注。
abciximab単独facilitated PCI群(818例):ランダム化後すぐにabciximab 0.25mg/kgをボーラス静注。
primary PCI群(806例):PCI施行直前にabciximab 0.25mg/kgをボーラス静注。
全例に,PCI施行前に抗トロンビン追加薬として非分画heparin(出血リスクを最小限にするため40U/kg[最大3000U],目標活性化凝固時間200~250秒で投与),または低分子量heparin(enoxaparin)を目標活性化凝固時間は設定せずに0.5mg/kg静注してから0.3mg/kgを皮下注。ただしprimary PCI群ではPCI施行が最大2時間遅れない限り,abciximabもしくはheparin投与は開始しない。
施行後にabciximab 0.125μg/kg/分(最大10μg/分)を12時間静注。
全例にaspirin 81~325mgを経口投与あるいは250~500mgを静注。
結果 ランダム化時に高リスクだと思われたのは66.7%で,PCI施行率は92%。
ST回復(二次エンドポイント)は,60~90分でabciximab+reteplase併用facilitated PC群43.9% vs abciximab単独facilitated PCI群33.1% vs primary PCI群31.0%(p=0.003;併用facilitated PCI群 vs primary PCI群,p=0.01;併用facilitated PCI群 vs abciximab単独facilitated PCI群)。180~240分後には治療群間差はみられなかった。
手技前のTIMI grade 3の達成は32.8%, 14.1%, 12.0%で併用facilitated PCI群が他の2群に比べ有意に高かった(p<0.001)。180~240分後には治療群間差はみられなかった。
一次エンドポイントは3群間に有意差はなかった:abciximab+reteplase併用facilitated PCI群9.8%,abciximab単独facilitated PCI群10.5%,primary PCI群10.7%。primary PCI群と比べた併用facilitated PCI群のハザード比は0.91(95%信頼区間0.67~1.23, p=0.55)。
複合エンドポイント構成イベントも治療群間に有意差はみられなかった:全死亡率(それぞれ5.2%, 5.5%, 4.5%),48時間以降の心室細動(0.6%, 0.2%, 0.4%),心原性ショック(5.3%, 4.8%, 6.8%),うっ血性心不全によるER外来,入院(1.9%, 2.9%, 2.2%)。非頭蓋内TIMI 大・小出血はabciximab+reteplase併用facilitated PCI群14.5%*,abciximab単独facilitated PCI群10.1%*,primary PCI群6.9%(* p<0.05 vs primary PCI),頭蓋内出血は0.6%, 0%, 0.1%,脳梗塞は0.5%, 0.5%, 0.9%,致死的脳卒中は3例(2例は頭蓋内出血,1例は脳梗塞)ですべて併用facilitated PCI群で発生した。75歳以上での頭蓋内出血は発生しなかった。全群合わせると,死亡率はTIMI大出血例(18.2%),小出血例(6.1%),ほんのわずか,あるいは非出血例(2.6%)と出血と関連した(p<0.001)。
★結論★急性ST上昇型心筋梗塞患者において,abciximab+半量reteplase併用facilitated PCIとabciximab単独facilitated PCIのいずれも,primary PCIと比べた有意な転帰の改善効果は認められなかった。
ClinicalTrials No. NCT00046228
文献
  • [main]
  • Ellis SG et al for the FINESSE investigators: Facilitated PCI in patients with ST-elevation myocardial infarction. N Engl J Med. 2008; 358: 2205-17. PubMed

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収載年月2008.09