循環器トライアルデータベース

SCAST
Statin and Coronary Artery Spasm Trial

目的 冠動脈スパスム現行治療(Ca拮抗薬)にHMG-CoA reductase阻害薬fluvastatinを追加した場合にさらにスパズムが抑制されるかを検討する。
一次エンドポイントは6か月後のアセチルコリン誘発冠動脈スパスム。
コメント 近年スタチン系薬剤のLDL-C 低下作用以外のさまざまな効果(pleiotropic effect)が報告されている。日本から発信された本研究は,fluvastatinが臨床的にも血管造影所見でも冠動脈スパスムを抑制することを示した。機序としてはスタチンの抗炎症作用,eNOS発現による内皮機能改善作用などで説明されている。
一度スパスムが証明され冠攣縮性狭心症の治療が始まると,その減量・中断の目安がなく漫然と継続されるのが現状である。脂質コントロールと一石二鳥となるスタチンでのスパスム予防効果が真実であれば,プラクティカルには非常に魅力的な代替治療となる。fluvastatin以外のスタチンでも同様の作用が期待できるのか,LDL-C低下によるプラークの進展予防・退縮もスパスムの抑制に関与するのか,など興味は尽きない。(中野中村永井
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),多施設(日本の9施設)。
期間 追跡期間は6か月。
登録期間は2002年1月~2005年12月。
対象患者 78例。30~80歳,胸痛,運動負荷試験による心電図上の虚血が確認されたため血管造影を実施するもの,器質的な冠動脈の狭窄(>50%)のないものでアセチルコリン誘発冠動脈スパスム例。
除外基準:最近発症した心筋梗塞,急性冠症候群,心不全,肝疾患,クレアチニン>1.5mg/dL,急性炎症,悪性疾患,1か月以内の脂質低下薬服用。
■患者背景(解析できた64例):平均年齢(fluvastatin群63.4歳,対照群61.8歳),男性/女性(21例/10例,18例/15例),BMI(23.6kg/m², 24.5kg/m²),高血圧(10例,14例),糖尿病(両群とも6例)。
治療状況:diltiazem/nifedipine(20例/11例,26例/7例),aspirin(11例,13例),ARB(6例,10例),亜硝酸薬(4例,7例),β遮断薬(1例,3例)。
治療法 fluvastatin群(39例):Ca拮抗薬(徐放性diltiazem 100~200mg/日あるいは徐放性nifedipine 20~40mg/日)に,fluvastatin 30mg/日を追加投与,対照群(39例):Ca拮抗薬のみ。
6か月後,両群でCa拮抗薬の投与を1週間中止後,再度ベースライン時と同様にアセチルコリン50μgを冠動脈内に注入する。
結果 投与中止は14例(fluvastatin群8例,対照群6例)。
登録前にfluvastatin群の28例,対照群の27例が胸部不快があったが,追跡期間中にそれぞれ21例(p<0.0001),19例(p<0.001)が無症候になった。

6か月後のスパスム抑制はfluvastatin群16例(51.6%, p<0.0001),対照群7例(21.2%, p=0.0110)で,fluvastatin群で有意に抑制された(p=0.0231)。
スパスムは6か月後にCa拮抗薬投与中止後に多く誘発された。
左冠動脈:ST上昇例(fluvastatin群:ベースライン時11例[42.3%]→ 6か月後3例[11.5%],対照群:9例[33.3%]→ 6例[22.2%]),ST低下例(15例[57.7%]→ 9例[34.6%],18例[66.7%]→ 15例[55.6%]):fluvastatin群;p<0.0001,対照群;p=0.0229。
右冠動脈;ST上昇例(10例[52.6%]→ 5例[26.3%],対照群:6例[37.5%]→ 5例[31.3%]),ST低下例(9例[47.4%]→ 5例[26.3%],10例[62.5%]→ 8例[50.0%]):fluvastatin群;p<0.0001,対照群;p=0.2258。
・定量的血管造影(QCA)の結果
左冠動脈のアセチルコリン50μgに対する血管収縮反応(血管径の変化)は6か月後,両群で有意に抑制された:fluvastatin群(ベースライン時-35.5%→ 6か月後-21.3%, p<0.0001),対照群(-36.8%→-30.1%, p=0.0221)が,対照群に比べfluvastatin群の方が収縮反応は有意に抑制された(-21.3% vs -30.1%, p=0.0087)。
しかし,スパスム非発生部分での反応はfluvastatin群で有意に抑制されたものの(p=0.0337),両群間に有意差は認められなかった(-6.6% vs -10.3%, p=0.0337)。
・検査値の変化
総コレステロール:fluvastatin群(ベースライン時193.8→ 6か月後167.7mg/dL;p<0.0001,対照群193.9→ 206.9mg/dL;p=0.0767),LDL-C(114.9→ 86.4mg/dL;p<0.0001, 119.7→ 117.1mg/dL),HDL-C(55.5→ 59.6mg/dL;p=0.0371, 53.3→ 54.6mg/dL),CRP(1.94→ 0.60mg/L;p=0.0077, 1.18→ 0.61mg/L)。
★結論★現行のスパスム治療であるCa拮抗薬へのfluvastatin追加投与により,アセチルコリン誘発冠動脈スパスムが有意に抑制された。fluvastatinがスパスム治療薬になりうる可能性が示された。
文献
  • [main]
  • Yasue H et al for the SCAST (statin and coronary artery spasm trial) investigators: Effects of a 3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase inhibitor, fluvastatin, on coronary spasm after withdrawal of calcium-channel blockers. J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 1742-8. PubMed

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収載年月2008.08