循環器トライアルデータベース

RACE
Reperfusion of Acute Myocardial Infarction in North Carolina Emergency Departments

目的 急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する再灌流治療において,外傷治療のように州規模のシステムを構築し,systematic barrierの克服,再灌流治療開始の遅れの減少および実施率アップを図るquality improvement study。
一次エンドポイントは1年間の再灌流治療システム導入前後の再灌流治療開始までの時間と施行率。
コメント わずか6000km²に20以上のPCI 施設があるわが群馬県からは想像もつかないが,東西に200km,南北に600km,156000km2もの広大な土地(日本の面積の40%強)にわずか10ヵ所しかPCI 施設をもたないノースカロライナ州で試みられた,ST 上昇型急性心筋梗塞(STEMI)に対するPCI を主体とした再灌流促進プログラムである。
共通のオペレーションマニュアルの下,65の施設と医療救急サービス,救急治療室,カテラボおよび搬送に関わる人々が目指したのは,多くのEBM が示すSTEMI の予後改善に直結する再灌流治療開始までの時間短縮と再灌流率,特にPCI 施行率の向上であった。その結果,PCI 施設・非PCI 施設ともに再灌流までの時間が短縮され,PCI 施行率が上昇し,PCI 施設では再灌流治療率が向上した。しかし,残念ながら予後改善を示すデータは得られなかった。詳細が記されておらず断言できないが,発症から病院到着までの時間(距離)がいかんともし難いのかも知れない。また,わずか3ヵ月間の限られた期間と症例数というプロトコール上の制約に起因する可能性もある。
慢性期を含めた予後の改善が示されてこそ,彼らの努力が結実することになる。(中野中村永井
デザイン 観察研究,多施設(米国ノースカロライナ州5地域の65施設[PCI施設10施設;非PCI施設55施設]および関連医療救急サービス[emergency medical systems: EMS])。
期間 intervention前のデータ収集期間は2005年7月~’06年3月(PCI施設は2005年7~9月),intervention後のデータ収集期間は2007年1~3月。
対象 PCI施設1164例,非PCI施設925例。
・再灌流治療システム導入前1097例
PCI施設579例(直接来院229例,非PCI施設からの搬送350例)。
非PCI施設518例(PCI施設への搬送475例:血栓溶解療法実施の233例中224例,再灌流非実施例80例中46例,primary PCI 205例)。
・導入後992例
PCI施設585例(直接来院273例,搬送312例)。
非PCI施設407例(搬送387例:血栓溶解療法実施の159 例中156例,再灌流非実施例6例中44例,primary PCI 187例)。
■患者背景:年齢中央値(PCI施設61歳:75歳以上19.4%,非PCI施設62歳),女性(30.6%, 32%),入院時の胸痛(94.2%, 89.1%),Killip class III~IV(4.5%, 4%)。
施設背景:非PCI施設(55施設);血栓溶解療法実施51%,PCI施設への搬送実施29%,いずれかを実施20%。共通の再灌流治療計画を導入89%,地域のEMS心電図訓練プログラムを実施80%,他の病院への搬送に地域の救急車を使用56%,搬送時の点滴非実施67%。
調査方法 再灌流治療システムとして,EMS,救急治療室,カテーテル室,搬送のすべての段階で早期の診断および最も迅速な再灌流治療の方法を導入。
PCI施設:救急医/救急救命士による1回の電話でカテーテル室を24時間動員できる体制,空床の有無に関わらずSTEMI患者の受入れ可能な体制をとるなど,PCIが迅速に施行できる体制を構築。
非PCI施設からは患者背景,再灌流治療の時間と種類,搬送の有無と方法に関するデータ,PCI施設からはNational Registry of Myocardial Infarctionに基づきアウトカムに関するデータなどを抽出。
結果 システム導入後,再灌流治療非施行例はPCI施設で23%→ 11%に減少したが,非PCI施設では変化がなかった(15%)。
再灌流治療開始までの時間の中央値は,PCI施設における来院から治療(デバイス通過)までの時間が直接来院例で85分→ 74分(p<0.001),他施設からの搬送例で165分→ 128分(p<0.001),非PCI施設における到着から血栓溶解療法開始までの時間が35分→ 29分(p=0.002),非PCI施設から搬送された患者の同院滞在時間が120分→ 71分に(p<0.001),それぞれ有意に短縮された。
PCI施設への直接来院例および他施設からの搬送例における臨床アウトカム(死亡,脳卒中,心停止,心原性ショック)については,導入後の有意な変化はなかった。
★結論★州規模のSTEMIにおける再灌流治療の地域システム構築プログラムにより治療の質を有意に改善し得ることが示された。
文献
  • [main]
  • Jollis JG et al for the reperfusion of acute myocardial infarction in North Carolina Emergency Departments (RACE) investigators: Implementation of a statewide system for coronary reperfusion for ST-segment elevation myocardial infarction. JAMA. 2007; 298: 2371-80. PubMed

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収載年月2008.04