循環器トライアルデータベース

AMIHOT
Acute myocardial Infarction with Hyperoxemic Therapy Trial

目的 急性心筋梗塞によるprimary/rescue PCI施行症例において,aqueous oxygen(AO)による高酸素血液再灌流が心機能,微小循環血流を改善し,梗塞サイズを縮小するかを検討。
有効性の一次エンドポイントは3か月後の梗塞域の局所壁運動スコア指数(regional wall motion score index:RWMSI)の変化,PCIの3時間後のST曲線領域,14~21日の最終梗塞サイズ。
安全性の一次エンドポイントは30日後の死亡+再梗塞+標的血管の再血行再建術(TVR)+脳卒中。
コメント AMIHOT試験はPCIによる再灌流療法を受けた急性心筋梗塞患者において,aqueous oxygen (AO)による高酸素血液再灌流が心機能や微小循環を改善し,心筋梗塞サイズを縮小するかどうかを検討するオープンラベルの多施設無作為試験である。有効性のプライマリーエンドポイントとして,心エコーによる左室局所壁運動の改善度,ST segment resolusion,99mTc- sestamibi SPECTによる心筋梗塞サイズが評価された。心筋梗塞急性期のランダム化試験(RCT),AOによる介入の技術的デマンド,さらに多くの必須評価モダリティーなどの困難を乗り越えて,試験を完遂された研究者に敬意を表したい。しかしながらAO治療の安全性には大きな問題を認めなかったものの,有効性のエンドポイントについてはコントロール群との間に有意差を認めなかった。
再灌流療法に加えて,心筋保護を目的とする介入についての研究の歴史は長いが,ヒトにおけるRCTではadenosine,ANP,骨髄細胞療法などで有効性が示唆されたものの,多くの試験はnegative trialであった。さらに有効性が示唆された試験もeffect sizeは小さく,かつサロゲートエンドポイントを用いた試験のみであり,臨床的エンドポイントを用いたpositive trialは1つもない。これらの結果から多くの臨床医が心筋保護療法という方法論そのものに失望している感があることは否定できない。
しかしながら心筋梗塞患者の予後を決定する大きな要因は心筋梗塞サイズであり,再灌流療法に加えて心筋保護を目的とする介入を行うことは合理的である。AMIHOT試験はnegative trialであったが,post-hoc解析で発症6時間以内の前壁梗塞例において有効性が示唆されている。サブグループ解析であり仮説形成と考えるべきであるが,3つの有効性一次エンドポイントのすべてにおいて有意差が見られたことは,このサブグループ解析結果が単なる偶然ではない可能性を示唆している。
心筋保護療法の対象は,本来,梗塞サイズの大きい患者であり,その意味で前壁梗塞を対象とすることは理にかなっている。発症時間については,発症後の経過時間の長い患者の方が再灌流療法の効果が小さく,心筋保護療法に対する期待が高い。その意味で発症6時間以内の患者のみを対象とすることはAO療法の大きな限界である。しかしながら発症後の経過時間の短い患者でも梗塞サイズの大きい患者は数多く存在し,今後の介入試験で効果が証明されればその有用性は小さくない。
各々の心筋保護療法の作用機序によって対象患者を選択することの重要性が示唆された試験であると考える。(木村
デザイン 無作為割付け,多施設(3か国23施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3か月。ランダム化期間は2002年1月~'03年12月。
対象患者 269例。発症から24時間以内のもの;胸痛が30分以上持続し,2つの近接誘導で1mm以上のST上昇(下壁梗塞の場合は2つの前胸誘導で1mm以上のreciprocalなST低下)。
除外基準:心原性ショックまたはPCI前/施行中の大動脈内バルーンパンプの必要な症例;1か月以内のCABG;重度の狭窄性弁膜症;心膜疾患;心筋症;酸素投与下で動脈の酸素分圧<80mmHgの重度の肺疾患;妊娠;初回の血管造影で梗塞血管のTIMI grade 3;伏在静脈グラフト責任病変;顕著な左主幹部病変(血管径の>50%の狭窄)など。
■患者背景:平均年齢60歳,女性(AO群26.9%,対照群26.7%),糖尿病(12.7%,11.1%),高血圧(53.0%,48.9%),高脂血症(54.2%,45.5%),喫煙(43.3%,42.2%),既往:MI(13.4%,10.4%);PCI(11.9%,7.4%);血栓溶解療法(11.2%,15.6%),前壁梗塞(60.4%,56.3%),Killip分類class I(88.1%,94.1%),梗塞関連血管:左前下行枝(60.4%,56.3%);右冠動脈(31.3%,35.6%);回旋枝(7.5%,5.9%)。
最初のTIMI grade 0/1(87.3%,89.7%);2(12.4%,10.4%),ステント植込み(両群とも100%),abciximab投与(64.2%,71.1%),最終TIMI grade 3(96.3%,91.9%)。
治療法 PCI後のTIMI gradeが 2~3で冠動脈解離の証拠のないものを,AO群(134例):血流速度75mL/分で90分間の高酸素血による再灌流,対照群(135例):AO非実施にランダム化。
全例に心カテーテル前に低流量経鼻酸素投与,heparin 5000U静注,aspirin 300mg経口投与。heparinは活性化凝固時間>250秒を維持するよう投与し,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の使用は手技者に一任。
PCI直後(AO注入前),24時間後,1,3か月後に二次元心エコーでRWMSIを算出。連続心電図モニタリングによりPCI後0~3時間のST曲線領域を評価。99mTc sestamibi SPECT像によりPCI施行から14~21日後の最終梗塞サイズを測定。
結果 90分間のAO完了例は117例(87%),60~90分間のAO例は6例(4%),<60分間は11例(8%。うち8例はAOシステムの技術の問題による)。
有効性の一次エンドポイントにおいて両群間に有意差はみられなかった:RWMSIの低下(p=0.24),ST上昇の消失(p=0.25),梗塞サイズ(p=0.30)。
安全性の一次エンドポイントもAO群9例(6.7%) vs 対照群7例(5.2%)で両群間に有意差はなかった(p=0.62)。死亡:4例 vs 2例,再梗塞,TVR:それぞれ両群とも3例,脳卒中:1例 vs 2例。
post-hoc解析:AO群において発症から6時間以内に再灌流を受けた前壁梗塞例で対照群に比べ局所壁運動の改善が大きく(RWMSIの低下-0.75 vs -0.54,p=0.03),STの改善が大きく(p=0.01),梗塞サイズの縮小が大きかった(左室の9% vs 23%,p=0.04)。
★結論★AMIに対するPCI後の冠内高酸素再灌流は安全性,忍容性が高いものの,局所壁運動,ST変化の消失,最終梗塞サイズの改善は認められなかった。しかし,発症から6時間以内に再灌流を受けた前壁梗塞例における有効性の可能性が示された。
文献
  • [main]
  • O'Neill WW et al for the AMIHOT investigators: Acute Myocardial Infarction with Hyperoxemic Therapy (AMIHOT): a prospective, randomized trial of intracoronary hyperoxemic reperfusion after percutaneous coronary intervention. J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 397-405. PubMed

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収載年月2008.03