循環器トライアルデータベース

CORONA
Controlled Rosuvastatin Multinational Trial in Heart Failure

目的 高齢の虚血性収縮不全患者において,現行治療へHMG-CoA reductase阻害薬rosuvastatinを追加した場合の心血管イベント抑制効果を検討する。

一次エンドポイントは心血管死+非致死的心筋梗塞(MI)+非致死的脳卒中(初発までの時間)。
コメント N Engl J Med. 2007; 357: 2248-61. へのコメント
高齢者・心不全患者に対し強力なスタチン(rosuvastatin)を用いて心血管死の抑制効果を一次エンドポイントにおいた挑戦的な試験である。残念ながら,一次エンドポイントの有効性は示しえなかったが,非致死性心筋梗塞,脳卒中をほぼ有意に抑制したことは評価できよう。また,入院を減少させ,とくに心不全による入院を減少させた点も評価できる。最近のこのような臨床試験の問題点は致死的イベントが一次エンドポイントになっていることである。本試験でも,利尿薬、ACE阻害薬/ARB,β遮断薬やアスピリンが多用されており,死にいたるイベントが予測より少ないのが現状である。実際,高齢者を対象としたPROSPERという一次予防試験のイベント数に比較して,本試験では約1/4になっている。この点を十分認識して今後の臨床試験のあり方も検討する必要があろう。
一方,本試験で,高齢者かつ心不全という条件の悪い状態でもrosuvastatinの副作用が決して多くはないことが示され,あらためてスタチンの安全性が確認された点も評価できるものと思われる。(寺本

一次エンドポイントに有意差はみられなかったが,スタチンの心不全抑制効果が全く否定されたわけではないと考えられる。rosuvastatinは,心不全悪化による入院を有意に抑制し,非致死性心筋梗塞や脳卒中も低下させているので,有効性に対する期待は残る。サブ解析をみると,BMIが高い症例,血圧が低くない症例,EF≧30%の症例,前期高齢者(<77歳)など,つまり軽症~中等度の症例で有効性が示唆される成績が示されているのは興味深い。スタチンはコエンザイムQ10を低下させるので,重症例では有害作用が表面化することも考えられる。非虚血性心不全をも対象としているGISSI-HFの結果が発表されれば,本試験と合わせ,心不全に対するスタチンの有効性がより明確になるものと思われる。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(21か国:欧州19か国,ロシア,南アフリカ・371施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値は32.8か月。run-in期間は2003年9月15日~2005年4月21日。
対象患者 5,011例。60歳以上;虚血性症候性心不全(NYHA II~IV度)でEF≦40%(NYHA II度はEF≦35%);至適な治療を受け2週間以上安定しているもの。
除外基準:スタチン系薬剤によるミオパチー,過敏反応の既往;非代償性心不全,強心薬の必要なもの;6か月以内の急性心筋梗塞;3か月以内の不安定狭心症,脳卒中;3か月以内のPCI,CABG,除細動器あるいは両室ペースメーカーの植込み,またはこれら手技予定症例など。
■患者背景:平均年齢73歳:>75歳は41%,女性24%,EF 0.31,NYHA II度37%;III度(rosuvastatin群61%,プラセボ群62%),総コレステロール(207.3mg/dL, 206.9mg/dL),アポリポ蛋白(Apo)B/ApoA-1(両群とも0.87),クレアチニン(両群とも1.3mg/dL),推定糸球体濾過量(両群とも58mL/分/1.73m²),血圧(両群とも129/76mmHg),心拍数(両群とも72拍/分)。既往:心筋梗塞(両群とも60%),狭心症(73%, 72%),CABG,PCI (両群とも26%),高血圧(両群とも63%),糖尿病(30%, 29%),心房細動/粗動(24%, 23%)。治療状況:ループ系利尿薬(76%, 75%),ループ系/サイアザイド系利尿薬(89%, 88%),アルドステロン受容体拮抗薬39%,ACE阻害薬80%,ACE阻害薬/ARB(91%, 92%),β遮断薬(両群とも75%),digoxin/digitoxin(34%, 32%),抗血小板薬(59%, 60%),抗凝固薬(36%, 34%),抗血小板薬/抗凝固薬(両群とも90%)。
治療法 単盲検のプラセボによるrun-in期間(2~4週間)後,次の2群にランダム化。
rosuvastatin群(2514例):10mg/日,プラセボ群(2497例)。
ランダム化から6週間後,3か月後,その後3か月ごとに追跡。
結果 追跡期間中,スタチン系薬剤を追加もしくは投与したものはrosuvastatin群69例,プラセボ群120例。
[脂質値の変化(ベースライン時→ 3か月後)]
・LDL-C:rosuvastatin群(137mg/dL→ 76mg/dL;43.8%の有意な低下),プラセボ群(136mg/dL→ 138mg/dL;1.2%上昇):両群間の絶対差45.0%(p<0.001)。
・HDL-C:48mg/dL→ 50mg/dL, 47mg/dL→ 47mg/dL:絶対差5.0%(p<0.001)。
・トリグリセライド:178mg/dL→ 138mg/dL, 176mg/dL→ 178mg/dL:絶対差20.5%(p<0.001)。
[hs-CRP(中央値)の変化(試験開始時→終了時)]
3.1mg/dL→ 2.1mg/dL;31.6%低下,3.0mg/dL→ 3.3mg/dL;5.5%上昇(p<0.001):絶対差37.1%。
[一次エンドポイント]
rosuvastatin群692例(11.4例/100人・年) vs プラセボ群732例(12.3例/100人・年)で両群間に有意差は認められなかった:rosuvastatin群のハザード比[HR]0.92;95%信頼区間0.83~1.02(p=0.12)。
心血管死:488例 vs 487例,非致死的MI:115例 vs 141例,非致死的脳卒中:89例 vs 104例。
[二次エンドポイント]
・全死亡:rosuvastatin群728例(11.6例/100人・年) vs プラセボ群759例(12.2例/100人・年):HR 0.95;0.86~1.05(p=0.31)。
・冠動脈イベント(突然死,MI,PCIあるいはCABG,植込み除細動器による心室除細動,心停止からの蘇生,不安定狭心症による入院):554例(9.3例/100人・年) vs 588例(10.0例/100人・年):HR 0.92;0.82~1.04(p=0.18)。
・心血管イベントによる入院:全入院においてrosuvastatin群で有意に低下した。心血管疾患による入院は2193回 vs 2564回:HR 0.92;0.85~0.92(p<0.001),心不全悪化による入院は1109回 vs 1299回:HR 0.91;0.82~1.02(p=0.01)。
不安定狭心症(74例 vs 90例,p=0.30),非心血管イベント(1501例 vs 1510例,p=0.72)による入院は両群間に有意差はみられなかった。
[有害イベント]
投与中止例はプラセボ群で多く(490例 vs 546例),有害事象による中止例も同群で多かった(241例 vs 302例)。
rosuvastatin群での筋障害やクレアチンキナーゼ・ALT(GPT)の上昇の増加はみられなかった。
★結論★高齢の収縮不全患者において,rosuvatatinによる一次エンドポイント,全死亡抑制効果は認められなかったが,心血管疾患による入院リスクを低下させ,安全性の問題もみられなかった。
ClinicalTrials.gov No.: NCT00206310
文献
  • [main]
  • Kjekshus J et al for the CORONA group: Rosuvastatin in older patients with systolic heart failure. N Engl J Med. 2007; 357: 2248-61. PubMed
  • [substudy]
  • AF非合併心不全と脳卒中-合併例と同等の脳卒中リスク患者が存在。標準的な因子でリスク例同定の可能性が示される。
    心房細動(AF)非合併心不全患者の脳卒中リスクとその予測因子を検討した結果(CORONAとGISSI-HFの患者個人データ統合解析;AF非合併例6,054例,合併例3,531例;追跡期間中央値2.97年,3.18年):脳卒中発症はAF非合併例206例(11.1/1,000患者・年)vs 合併例165例(16.8/1,000患者・年)。AF非合併例での抗血栓療法は脳卒中発症例86%,非発症例82%。
    Cox比例ハザードモデルで特定されたAF非合併例における脳卒中の独立した予測因子は,年齢,NYHA III~IV度(vs II度),インスリン治療糖尿病,BMI,脳卒中既往。さらにNT-pro BNPもモデルに加えると独立した予測因子であった。これらの因子からAF非合併例のリスクスコアを算出すると,第3三分位群の脳卒中発症リスクは22.9/1,000患者・年となり,AF合併例とほぼ同等のリスクがあることが示された:Circulation. 2015; 131: 1486-94. PubMed
  • HF-pEF,HF-rEF患者の転帰と地域差-心不全による入院はHF-pEFでは北米が多く,東欧・ロシアが少なく,HF-rEFでは西欧が他より少ない傾向。死亡はEFを問わず地域差なし。
    I-PRESERVE/CHARM-Preserved(EF≧45%), CHARM-Added+Alternative/CORONA(EF<40%)を統合して,EFが保持された拡張性心不全(HF-pEF),EFが低下した収縮性心不全(HF-rEF)患者におけるイベントの地域差(北米,西欧,東欧・ロシア,中南米)を検討した結果:心不全による入院はHF-pEFがHF-rEFより多く,HF-pEFでの発生率は北米(I-PRESERVE 7.6/100人・年;CHARM-Preserved 8.8/100人・年),西欧(4.8;4.7/100人・年),東欧・ロシア(3.3;2.8/100人・年)の順で,北米は東欧・ロシアにくらべ有意にリスクが高かった(調整後ハザード比:1.34, p=0.04;1.85, p=0.01)。一方,HF-rEFでは,西欧が他よりわずかに低かった。全死亡または心血管死はHF-rEF,HF-pEFともに地域差はほとんどみられなかった:Circulation. 2015; 131: 43-53. PubMed
  • ガレクチン-3低値患者で,rosuvastatinが心血管イベント抑制に有効な可能性が示される。
    ベースライン時にガレクチン-3を測定した1,462例(平均72歳,女性24%)において,線維化のメディエータであるガレクチン-3がrosuvastatinの治療効果に及ぼす影響を評価した結果(追跡期間中央値32.8か月):一次エンドポイント(心血管死+心筋梗塞+脳卒中)発生は411例。ベースライン時のガレクチン-3値はrosuvastatinの一次エンドポイントに対する効果に影響を及ぼした(交互作用p=0.036)。ガレクチン-3の中央値(19ng/mL)で2群にわけると,≦19ng/mLの患者(734例)ではrosuvastatin群でプラセボ群にくらべ一次エンドポイント(ハザード比0.65;95%信頼区間0.46~0.92, p=0.014),全死亡(0.70;0.50~0.98;p=0.038),全死亡+心不全による入院(0.72;0.54~0.94, p=0.017)が有意に抑制されたが,>19ng/mLの患者ではその効果は認められなかった。また,ガレクチン-3≦19ng/mLかつNT-pro BNP<102.7pmol/Lの患者(277例)は,rosuvastatinの一次エンドポイント抑制効果が大きかった(0.33;0.16~0.67, p=0.002):Eur Heart J. 2012; 33: 2290-6. PubMed
  • コエンザイムQ10は心不全患者の独立した予後予測因子ではない。
    rosuvastatinによりコエンザイムQ10濃度は低下したが,有意な転帰の悪化は認められず。
    (背景)コエンザイムQ10の欠乏はミオパチーと関連し,スタチン系薬剤はコエンザイムQ10の産出を低下させ末梢・心筋機能障害を誘発するとの懸念がある。2008年に心不全入院患者においてコエンザイムQ10濃度の低下が死亡の独立した予測因子であると発表されたことからFDAは本試験参加者のコエンザイムQ10の測定を要求した。事前に予定されていたサブ解析(1,191例)。
    コエンザイムQ10濃度(第1三分位群:中央値0.49μg/mL[400例];第2三分位群:0.74μg/mL[387例];第3三分位群:1.10μg/mL[404例])と心血管イベントとの関連:コエンザイムQ10濃度が低い患者ほど高齢(傾向のp<0.0001),NYHA心機能分類が重症(p=0.076),心房細動/粗動が多かった(p=0.030)。
    全死亡リスクは,単変量解析では第1三分位群が第3分位群に比べて有意に高かったが(ハザード比1.50;95%信頼区間1.04~2.6, p=0.03),多変量解析では有意差は認められなかった。いずれの臨床転帰についても,コエンザイムQ10は独立した予測因子ではなかった。
    rosuvastatin治療によりコエンザイムQ10濃度は低下したが(第1三分位群-0.13μg/mL,第2三分位群-0.30μg/mL,第3三分位群-0.57μg/mL),コエンザイムQ10濃度はrosuvastatinの治療効果に有意な影響を及ぼさなかった(交互作用のp値:一次エンドポイント;p=0.14,全死亡;p=0.24,冠エンドポイント;p=0.26,全死亡+心不全悪化による入院;p=0.17):J Am Coll Cardiol. 2010; 56: 1196-204. PubMed
  • 虚血性収縮不全患者におけるhs-CRP≧2.0mg/dL例は69%で転帰不良。rosuvastatinの有効性はhs-CRP高値例で大きい。
    hs-CRP<2.0mg/dL例(31%;rosuvastatin群777例,プラセボ群779例):中央値1.10mg/dL,≧2.0mg/dL例(69%;1,711例,1,694例):5.60mg/dL。
    rosuvastatinによるLDL-C低下は両hs-CRP群で同等(47%)。
    3か月後のhs-CRPの低下:hs-CRP<2.0mg/dL例(rosuvastatin群-6%,プラセボ群+27%),≧2.0mg/dL例(-33.3%, -11.1%)。
    ・一次エンドポイント(心血管死,非致死的心筋梗塞および脳卒中)
    hs-CRP≧2.0mg/dL例:rosuvastatin群498例(12.2例/100人・追跡年)vs プラセボ群548例(14.0例/100人・年);rosuvastatin群のプラセボ群と比べたハザード比0.87(95%信頼区間0.77~0.98, p=0.024)。
    <2.0mg/dL例:188例(9.8例/100人・年)vs 175例(8.9例/100人・年);1.09(0.89~1.34, p>0.2 。p for interaction=0.062。
    ・死亡
    hs-CRP≧2.0mg/dL例:rosuvastatin群532例(12.6例/100人・年)vs プラセボ群581例(14.1例/100人・年);0.89(0.79~1.00, p=0.050)。
    <2.0mg/dL例:192例(9.7例/100人・年)vs プラセボ群170例(8.3例/100人・年);1.17(0.95~1.43, p=0.14)。p for interaction=0.026
    :Circulation. 2009; 120: 2188-96. PubMed
  • NT-proBNPは強い予後予測因子で,<102.7pmol/L例でrosuvastatinが有効な可能性が示された。
    アミノ末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)測定例3664例(73%) の結果:3分位値(<102.7pmol/L[<868pg/mL],102.7~277.5pmol/L[868~2,347pg/mL],>277pmol/L[2,348pg/mL])の高値ほど高齢,EF低下,心房細動が多く,<102.7pmol/Lは症状が軽度で,BMI,収縮期血圧,コレステロールが高く,腎機能障害,高hs-CRP例が少なく,ループ系利尿薬,アルドステロン受容体拮抗薬,digoxinの使用率が低かった。
    多変量解析によると,NT-proBNPは心血管イベントと強く関連し,最も強い関連を示したのは心不全悪化による死亡(ハザード比1.99;1.71~2.30),次いで突然死(1.69;1.52~1.88),最も関連が弱かったのはアテローム血栓性イベント(1.24;1.10~1.40)。3分位のうち最低値が最も予測能が高く,rosuvastatinによる一次エンドポイント抑制効果もその他の3分位値より(異質性検定p=0.0192)高かった(ハザード比0.65;0.47~0.88):J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 1850-9. PubMed

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収載年月2007.10
更新年月2015.05