循環器トライアルデータベース

FeAST
Iron and Atherosclerosis Study

目的 症候性末梢動脈疾患(PAD)患者において,瀉血による体内鉄貯蔵の除去が予後に影響するかを検討。
一次エンドポイントは全死亡。
コメント 鉄は必須のミネラルで酸素の輸送・貯蔵蛋白質の重要な構成要素である。しかし,鉄イオンは強力な酸化物質であるヒドロキシルラジカルの生成を触媒する。体内貯蔵鉄の増加が冠動脈疾患のリスク因子であるという仮説は1981年Sullivanにより打ち立てられた。ウサギでは鉄過負荷により冠動脈硬化は進行し,アポリポ蛋白質E欠損ネズミでは鉄欠乏食が動脈硬化巣を減少させる。過度の鉄貯蔵はフリーラジカル由来の酸化ストレスを介して心血管疾患のリスクとなりうる。子どもや閉経前女性では鉄貯蔵蛋白質であるフェリチンは25ng/mLと低値であるが,閉経後には心筋梗塞のリスク増大と共にフェリチン値は上昇する。男性は10代後半よりフェリチン値は増加し,より早く心筋梗塞の発症率は増大する。鉄は動脈硬化の比較的初期の病態形成に関連しうる。これまで,鉄を介した酸化ストレスが動脈硬化性心血管疾患に関与するとの臨床的文献も認められるが,一定の見解は得られていない。瀉血は鉄による脂質の過酸化を低下させ,献血は心筋梗塞のリスクを低下させると報告されている。
本研究は末梢動脈疾患において瀉血により鉄所蔵を低下させたが,予後には有意差はみられなかった。しかし,後付け解析において,若年者では全死亡や死亡+非致死的心筋梗塞+脳卒中は瀉血により有意に低下していた。より高齢になり,動脈硬化が進行してしまうと,いくら鉄貯蔵を低下させても心血管イベントの抑制をもたらさないかもしれない。若い世代では男性と女性の冠リスク因子は異なっており,男性ではフェリチン値が心血管イベントのリスクと関連し得る。高頻度の献血者ではより動脈弾性が保たれており,日々の運動と標準体重の維持が鉄貯蔵と心血管イベントのリスクの両方を低下させ得る。若年者において,鉄貯蔵の低下が心血管イベントの発生を低下させるのが一次エンドポイントで,かつ作用機序を明らかにする前向きの大規模な研究が必要である。(星田
デザイン 無作為割付け,単盲検,多施設(24施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は2.5~6年(平均3.5年。2005年4月30日追跡終了)。登録期間は1999年5月1日~2002年10月31日。
対象患者 1277例。Department of Veterans Affairs Cooperative Studies Programにおいて,症候性の安定PADを有し,足関節-上腕血圧比≦0.85の男性/閉経後の女性。ヘマトクリット>35%,フェリチン<400ng/mL。
除外基準:過去6か月以内の出血,鉄代謝異常,フェリチン値の急性期上昇,過去5年以内の内臓悪性腫瘍。
■患者背景:平均年齢67歳,男性(対照群98.9%,鉄除去群98.7%),白人(86.6%, 81.9%),喫煙(96.3%, 95.3%),アルコール摂取(29.0%, 29.6%),糖尿病(36.6%, 37.6%),高血圧(75.8%, 77.2%),平均BMI(28.2kg/m², 28.1kg/m²),HDL-C/LDL-C比(0.4, 0.4),スタチン系薬剤投与(62.6%, 56.0%),心血管疾患(80.2%, 78.5%)。
治療法 対照群(641例),鉄除去群(636例):フェリチンのトラフ値が約25ng/mL,次回瀉血までのピーク値が約60ng/mLとなるよう6か月間隔で瀉血。
施設,年齢(60歳以下/超),フェリチン値,糖尿病,喫煙,HDL-C/LDL-C比で層別化。
結果 追跡期間中の平均フェリチン値は対照群では122.5ng/mLと登録時から変化がなかったが,鉄除去群では79.7ng/mLと有意に低下した(p<0.001)。
一次エンドポイントは対照群148例(23.1%)vs 鉄除去群125例(19.7%)で両群間に有意差は認められなかった(ハザード比[HR]0.85;95%信頼区間0.67~1.08,p=0.17)
二次エンドポイント(死亡+非致死的心筋梗塞+脳卒中)は205例(32.0%)vs 180例(28.3%):HR 0.88(0.72~1.07,p=0.20),MIは58例(9.0%)vs 61例(9.6%):HR 1.01(0.70~1.47,p=0.95),脳卒中は29例(4.5%)vs 32例(5.0%):HR 1.22(0.71~2.10,p=0.46)と,両群間に有意差はなかった。その他の非致死的末梢/冠/脳血管イベントの累積発生率および発生までの時間も両群で同等であった。
後付け解析:年齢と治療群に非線形の相関がみられ(一次エンドポイントp=0.04,二次エンドポイントp<0.001),最若年の四分位では鉄除去群の対照群に対する一次エンドポイント低下が調整前ハザード比0.47(0.24~0.90,p=0.02),二次エンドポイント低下が0.41(0.24~0.68,p<0.001)であった。
★結論★症候性PAD患者において鉄貯蔵の除去により全死亡,または死亡+非致死的心筋梗塞+脳卒中の有意な抑制効果は認められなかった。
Clinical Trials.gov No: NCT00032357
文献
  • [main]
  • Zacharski LR et al: Reduction of iron stores and cardiovascular outcomes in patients with peripheral arterial disease: a randomized controlled trial JAMA. 2007; 297: 603-10. PubMed

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収載年月2007.05