循環器トライアルデータベース

APEX AMI
Assesment of Pexelizumab in Acute Myocardial Infarction

目的 急性ST上昇型心筋梗塞患者において,PCIに補体C5に対するヒトモノクローナル抗体pexelizumabを併用した場合の有効性を検討する。
一次エンドポイントは30日後の総死亡。
コメント 急性ST上昇型心筋梗塞を対象とした大規模な臨床試験であったが,一次エンドポイント(30日後の総死亡)に治療群(補体C5に対するモノクロナール抗体による治療)と対照群に差はなく,治療の有効性は示されなかった。PCIによる再灌流に伴う心筋障害に炎症反応が関係しているとの仮説に基づいた臨床試験であったが,補体C5に対する抗体(pexelizumab)では治療効果は現れなかった。pexelizumabはアポトーシスや白血球浸潤を抑制して梗塞サイズを縮小させることが動物モデルで証明されていた。
β2 integrin adhesion receptorのCD 18 subunitに対するモノクロナール抗体を用いたLIMIT(Limitation of MI following thrombolysis in AMI)でも有効性が示されなかった。またCD 11/CD 18の全アイソフォームに対するヒト化抗体を用いたHALT-MI(Hu23F2G Anti-adhesion to limit cytotoxic injury following AMI)でも有効性が証明されなかった。
急性心筋梗塞における炎症反応に介入することで梗塞サイズを縮小させるアプローチに疑問を投げかける試験結果となった。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(北米,西欧,東欧,オーストラリア,ニュージーランドの17か国296施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は90日。
登録期間は2004年7月13日~2006年5月11日。
対象患者 5745例。18歳以上,20分以上持続する虚血と考えられる症状の発症から6時間以内。
除外基準:isolated 下壁心筋梗塞,補体欠損症あるいは重症感染症など。
■患者背景:平均年齢61歳,体重(中央値)80kg,収縮期血圧133mmHg,女性(pexelizumab群24.2%,プラセボ群22.0%),Killip class I(89.2%,89.6%),クレアチニンクリアランス(83.0mL/分,82.7mL/分),前壁梗塞(40.8%,40.9%),糖尿病既往(15.6%,16.2%),喫煙例(42.9%,43.6%),CABG既往(2.1%,2.4%),PCI既往(9.7%,9.9%)。
治療法 pexelizumab群(2860例):PCI前に2mg/kgを10分間でボーラス静注後,0.05mg/kg/時を24時間注入,プラセボ群(2885例)。
試験薬はバルーンによる前拡張,ステント施行前に投与した。
結果 発症から試験登録までの時間(中央値)はpexelizumab群2.78時間,プラセボ群2.75時間,発症からPCIまではそれぞれ3.35時間,3.33時間,試験薬投与からPCIまでは0.25時間,0.23時間,ステント植込みは89.62%,88.77%:薬剤溶出ステント37.73%,36.92%;ベアメタルステント50.45%,50.61%,PCIによる再灌流:TIMI flow 3は87.10%,86.03%。
一次エンドポイントはpexelizumab群116例(4.06%),プラセボ群113例(3.92%)で両群間に有意差は認められなかった(ハザード比[HR]1.04;95%信頼区間[CI]0.80~1.35,p=0.78)。
30日後の死亡+心原性ショック+心不全も257例(8.99%) vs 265例(9.19%)と有意差はみられなかった(HR 0.98;95%CI 0.83~1.16,p=0.81)。90日後の同複合エンドポイントも両群とも293例で同様であった(HR 1.01;95%CI 0.86~1.19,p=0.91)。
★結論★primary PCI施行のST上昇型心筋梗塞患者における死亡率は低く,pexelizumabの前投与による死亡抑制効果は認められなかった。
clinicaltrials.gov Identifier: NCT00091637
文献
  • [main]
  • Armstrong PW et al for the APEX AMI investigators: Pexelizumab for acute ST-elevation myocardial infarction in patients undergoing primary percutaneous coronary intervention: a randomized controlled trial. JAMA. 2007; 297: 43-51. PubMed
  • [substudy]
  • primary PCI施行例において心臓カテーテル前後の心室頻拍/細動は90日後の死亡率の上昇に関連。
    持続性心室頻拍(VT)/細動(VF)発生例は329例(5.7%)。うち心カテーテル終了前の発生(早期発生)205例,心カテーテル終了後の発生(晩期発生)117例におけるエンドポイントを非発生例(5416例)と比較:90日後の死亡率は発生例で非発生例に比べ有意に高く(23.2% vs 3.6%,調整後ハザード比3.63;95%信頼区間 2.59~5.09),早期発生例で17.2%(2.34;1.44~3.80),晩期発生例で33.3%(5.59;3.71~8.43)。
    多変量解析後の早期発生の関連因子:TIMI flow 0,下壁梗塞,総ST偏位,クレアチニンクリアランス,Killip class>I,収縮期血圧(SBP),体重,心拍数>70/分。晩期発生の関連因子:SBP,24時間以降のST回復<70%,心拍数>70/分,総ST偏位,PCI後のTIMI flow<3,PCI前のTIMI flow 0,24時間以内のβ遮断薬使用:JAMA. 2009; 301: 1779-89. PubMed

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収載年月2007.06
更新年月2009.06