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SALT
Study of Ascending Levels of Tolvaptan in Hyponatremia

目的 低ナトリウム血症患者において,経口選択的バソプレシンV2受容体拮抗薬tolvaptanの有効性を検討する。
一次エンドポイントは1日当たりの血清ナトリウム濃度曲線下面積のベースライン時から4日後および30日後の変化。
SALT I(アメリカでの試験)とSALT 2(インターナショナル試験)の2試験から成る。
コメント TolvaptanはV2受容体阻害により強力な水利尿効果を発揮するため,低Na血症の補正に最適な利尿薬である。口渇は最も多い副作用であるが,これは薬理作用と表裏一体であるため避けられないが,めまいやふらつきはプラセボ群と有意差がないので,懸念される副作用はない。ただ,30日後投与を中止すると再び低Na血症が生じており根本的な治療にはなっていない。長期投与の有用性についても検討がなされているが,急激な血中Na濃度の上昇に伴う橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis)の発症の危険性についても今後充分に注意を払う必要があろう。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(SALT 1:米国の42施設,SALT 2:米国外50施設を含む)。
期間 追跡期間は37日。SALT Iの実施期間は2003年4月11日~2005年12月20日,SALT 2は2003年11月20日~2005年7月6日。
対象患者 448例:SALT 1(205例),SALT 2(243例)。18歳以上;循環血液量が正常または循環血液量が増加した低ナトリウム血症(血清ナトリウム濃度<135mmol/L),登録例の半数は<130mmol/L(著明な低ナトリウム血症)とした;低ナトリウム血症関連の慢性心不全(CHF),肝硬変,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)。
除外基準:循環血流量減少性低ナトリウム血症,最近心臓術を施行した症例,心筋梗塞,持続性心室頻泊/心室細動,心因性多飲症など。
■患者背景:SALT 1試験;平均年齢60歳,女性(tolvaptan群49%,プラセボ群40%),白人(70%,74%),体重(78kg,75kg),正常循環血液量(60%,65%),循環血液量増加(40%,33%),低ナトリウム血症の原因;CHF(34%,32%);肝硬変(25%,20%);SIADH,その他(41%,48%),軽度の低ナトリウム血症(48%・132.4mmol/L,50%・132.1mmol/L);顕著なナトリウム血症(52%・125.4mmol/L,50%・125.5mmol/L),SF-12健康調査*(肉体的・精神的)スコア(33.4・42.4,33.9・44.7)。
SALT 2試験;平均年齢(tolvaptan群62歳,プラセボ群63歳),女性(両群とも39%),白人(96%,91%),体重(73kg,75kg),正常循環血液量(51%,50%),循環血液量増加(47%,50%),低ナトリウム血症の原因;CHF(29%,28%);肝硬変(31%,30%);SIADH,その他(40%,42%),軽度の低ナトリウム血症(52%・132.3mmol/L,52%・132.4mmol/L);顕著なナトリウム血症(48%・126.6mmol/L,48%・125.5mmol/L),SF-12健康調査*(肉体的・精神的)スコア(33.0・44.3,33.1・44.9)。
* the Physical Component Summary and the Mental Component Summary of the 12-item Short-Form General Health Survey
治療法 tolvaptan群(225例):15mg/日を経口投与で30日間投与。投与開始から4日間でナトリウム濃度正常化(≧135mmol/L)のために30mg/日→ 60mg/日に増量を可とした。それでも135mmol/L以下で前24時間で5mmol/L未満の増加の場合,増量した。また>145mmol/Lに上昇あるいは短時間で上昇した(24時間で12mmol/Lを超える上昇,または治療開始日に8時間で8mmol/Lを超える上昇)場合は治療を中止するか次回の投与量を減らす,または水分摂取量を増やすこととした。プラセボ群(223例)。
SALT 1試験:tolvaptan群(102例),プラセボ群(103例)。
SALT 2試験:tolvaptan群(123例),プラセボ群(120例)。
結果 血清ナトリウム濃度はSALT 1でtolvaptan群:ベースライン時128.5mmol/L→ 4日後133.9mmol/L→ 30日後135.7mmol/L,プラセボ群:128.7mmol/L→ 129.7mmol/L→ 131.0mmol/L,SALT 2でそれぞれ129.0mmol/L→ 135.3mmol/L→ 135.9mmol/L,128.9mmol/L→ 129.6mmol/L→ 131.5mmol/L。
一次エンドポイントは4日後,SALT 1:tolvaptan群3.62mmol/L,プラセボ群0.25mmol/L(p<0.001),SALT 2:tolvaptan群4.33mmol/L,プラセボ群0.42mmol/L(p<0.001),30日後はSALT 1:それぞれ6.22mmol/L,1.66mmol/L(p<0.001),SALT 2:6.20mmol/L,1.84mmol/L(p<0.001)でtolvaptan群がプラセボ群に比べ有意に高かった。
軽度の低ナトリウム血症のナトリウム濃度は4日後がtolvaptan群2.52mmol/L(SALT 2は3.59mmol/L),プラセボ群-0.32mmol/L(0.18mmol/L),30日後が3.87mmol/L(4.68mmol/L),0.68mmol/L(0.94mmol/L),著明な低ナトリウム血症では4日後がそれぞれ4.56mmol/L(5.06mmol/L),0.76mmol/L(0.7mmol/L),30日後が8.24mmol/L(7.60mmol/L),2.54mmol/L(2.72mmol/L)で,いずれもtolvaptan群で有意に高かった(全p<0.001)。
30日間のtolvaptan投与終了後の翌週,低ナトリウム血症が再発した。tolvaptanの副作用は口渇,口内乾燥,排尿の増加であった。
SALT 1と2を合わせた解析の結果,tolvaptan群の30日後のSF-12健康調査の精神的スコアが有意に改善した。
★結論★循環血液量が正常あるいは増加した低ナトリウム血症患者において,tolvaptanは4日後および30日後の血清ナトリウム濃度を上昇させるのに有効である。
文献
  • [main]
  • Schrier RW et al for the SALT investigators: Tolvaptan, a selective oral vasopressin V2-receptor antagonist, for hyponatremia. N Engl J Med. 2006; 355: 2099-112. PubMed

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収載年月2007.03