循環器トライアルデータベース

EVA-3S
Endarterectomy versus Angioplasty in Patients with Symptomatic Severe Carotid Stenosis

目的 症候性頸動脈狭窄患者に対する頸動脈ステント植込みを,手技のリスクおよび長期有効性の点で頸動脈内膜切除術と比較する非劣性試験。
一次エンドポイントは治療後30日間の全脳卒中+死亡。
コメント 頸動脈内膜切除術 (CEA)は1953年にEastcottによって初めて施行された。
従ってその歴史は長く,症候性あるいは無症候性内頸動脈狭窄に対するCEAの有効性・安全性はほぼ確立されている。症候性患者を対象としたNASCET・ECST,無症候性患者を対象としたACAS・ACSTの結果から,手技にまつわる脳卒中・死亡にリスクは前者で6%,後者で3%以内というのが現在でもガイドラインの基準となっている。
しかし,当然のことながら,こうしたトライアルには高リスク症例が含まれていない。これに対し頸動脈ステント(CAS)は歴史が浅く,対象症例に高リスクが含まれていたり,また一方でデバイスの進化もあり,その効果・リスクに一定した見解が得られていない。surgical高リスク症例を対象としたSAPPHIREがCEAとの無作為試験の代表格であるが,ここでの死亡+脳卒中の合併はCASで3.8%,CEAで4.6%とCASでの非劣性が示された。BEACH・ARCHER・CREST・CARESS・CREATEなどの高リスク症例を対象としたregistryでも同様のエンドポイントは2.0~6.6%であり,症候性患者を対象としているとは言え,決して高リスクとは言えない本トライアルでの9.6%という確率がいかに高いかがわかる。その理由として術者の経験やprotection deviceの導入の遅れが考察されているが,その他にプラークの性状も影響した可能性がある。高リスクプラークと低リスクプラークが層別化できればCASの安全性はさらに向上すると思われる。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,多施設(フランスの20の教育施設および10の非大学病院),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6か月。2000年11月開始。ステント群におけるリスク上昇により,2005年9月に安全性および無益性を理由として登録中止。
対象患者 527例。18歳以上。登録前120日以内に半球/網膜の一過性虚血発作,または障害を伴わない脳卒中/網膜梗塞をきたし,頸動脈の60~99%に症候性の狭窄を有するもの。
除外基準:modified Rankin score 3以上(障害を伴う脳卒中);非アテローム動脈硬化性の頸動脈疾患;内頸動脈の前後に高度狭窄を有する場合;症候性狭窄に対する血行再建既往;出血性疾患;治療抵抗性の高血圧,糖尿病/,不安定狭心症;heparin,ticlopidine,clopidogrelの禁忌;生存の見込み<2年;手技前後30日以内の経皮的/外科的インターベンション。
■患者背景:平均年齢(頸動脈内膜切除術群70.3歳,ステント群69.1歳),75歳以上(40.5%,32.2%),男性(78.0%,72.4%),高血圧(72.6%,73.6%),糖尿病(25.5%,22.2%),高コレステロール血症(55.6%,57.9%),喫煙(23.6%,24.1%),既往:脳卒中(20.1%,12.6%);一過性脳虚血発作:TIA(23.2%,25.3%),イベント前の治療状況:抗血小板薬治療(52.5%,49.0%);降圧薬(68.3%,68.6%);糖尿病治療薬(24.7%,20.3%);脂質低下薬(48.3%,49.4%),イベント:TIA(30.1%,36.4%);眼球一過性虚血発作(14.3%,12.6%);脳梗塞(53.7%,48.7%);modified Rankin score 0(56.0%,53.3%);1(26.3%,27.2%);2(16.2%,18.0%),症候性頸動脈狭窄90~99%(40.9%,39.8%),対側頸動脈閉塞(1.2%,5.0%)。
治療法 頸動脈内膜切除術群(262例):2週間以内に通常の方法で実施,ステント群(265例):2週間以内に大腿動脈経由でprotection deviceとともに植込み(2003年よりcerebral protection device使用)。
施設および狭窄の程度(90%以上/未満)により層別化。aspirin 100~300mg/日,clopidogrel 75mgまたはticlopidine 500mgのステント前3日間およびステント後30日の投与を推奨。治療後48時間,30日,6か月,以後6か月ごとに神経学的追跡評価を行い,脳卒中後30日,6か月の障害の程度,30日後の追跡来院時の脳神経損傷による機能障害の程度を評価。
結果 2005年9月までに登録された527例中,実際に治療を受けた頸動脈内膜切除術群259例,ステント群261例が,一次エンドポイントの分析対象となった。
一次エンドポイントは頸動脈内膜切除術群3.9%(95%CI 2.0~7.2)vs ステント群9.6%(6.4~14.0)であった(相対リスク[RR]2.5,95%CI 1.2~5.1,p=0.01)。
30日間の障害を伴う脳卒中+死亡は1.5%(95%CI 0.5~4.2)vs 3.4%(1.7~6.7)でRR 2.2(95%CI 0.7~7.2,p=0.26)。一次エンドポイント+31日~6か月の同側脳卒中は4.2% vs 10.2%(p=0.008),+31日~6か月の全脳卒中は4.6% vs 10.9%(p=0.007),6か月間の全脳卒中+死亡は6.1% vs 11.7%(p=0.02)と,いずれもステント群での発生率が有意に高かった。
頸動脈内膜切除術群では肺を主とする全身的合併症が多く,ステント群では重度の局所的合併症が多かったが,両群間に有意差はなかった。脳神経損傷は頸動脈内膜切除術群でステント群に比し有意に多かった(7.7% vs 1.1%,p<0.001)。入院期間の中央値は頸動脈内膜切除術群でステント群に比べ有意に長かった(4日vs 3日,p=0.01)。
★結論★60%以上の症候性頸動脈狭窄を有する患者における30日および6か月後の脳卒中および死亡は,頸動脈内膜切除術でステントよりも低いことが示された。
ClinicalTrials.gov No.: NCT00190398
文献
  • [main]
  • Mas JL et al for the EVA-3S investigators: Endarterectomy versus stenting in patients with symptomatic severe carotid stenosis. N Engl J Med. 2006; 355: 1660-71. PubMed

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収載年月2007.01