循環器トライアルデータベース

ALBION
Assessment of the Best Loading Dose of Clopidogrel to Blunt Platelet Activation, Inflammation and Ongoing Necrosis Trial

目的 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)患者において,aspirin等の標準治療に抗血小板薬clopidogrel追加投与した場合の効果を,300mg,600mg,900mgの3用量で比較する。
一次エンドポイントは血小板凝集(PA)の変化。
コメント 急性冠症候群でPCIを受ける例において,血小板機能を適切に早く抑制することは重要である。clopidogrel 300mgの投与により抗血小板作用の発現が2~3日後から2~3時間後へと早くなり,aspirinとの併用により臨床的有用性が示されている。しかし高用量のclopidogrelがより早い抗血小板作用を示すか否かについては定見は得られていない。PCI時の心筋逸脱酵素の上昇が300mgよりも600mgのclopidogrelにより抑制されるとの報告はある。これらは単一施設,オープンラベル試験が多く,血液サンプルの測定ポイントが少なく,clopidogrelは600mg以下の投与であった。最近のヨーロッパのガイドラインではPCI時のclopidogrelの初期投与量は600mgであるが,最適な用量設定試験は行われていない。
本研究はPROBE法の多施設共同研究であり,clopidogrelは最高900mgまで用いられている。一次エンドポイントである抗血小板作用の発現時期や最強効果の時期をより正確に明らかにするためclopidogrel投与後に血液サンプルを0.5,1,2,3,4,5,6時間と小刻みに採取している。ADP 200μmol/Lによる血小板凝集の抑制効果はclopidogrel用量依存性に認められ,300mgに比し900mgでは1時間以内に有意な血小板抑制作用を示し,24時間後もその差は持続している。血小板凝集を惹起するADP量も効果判定に大きく影響し,低濃度(5μmol/L)のADPでは一次凝集や可逆性凝集しか生じないこともあり,薬やその量の効果を見誤る可能性がある。高濃度(20μmol/L)のADPは臨床上血栓形成病態での効果をより反映すると考えられ,本研究の結果の意義は高いと思われる。血小板凝集能以外の血小板活性化の指標もclopidogrelにより用量依存性に抑制されている。
病態が安定した症例を対象としたISAR-CHOICE studyでは本研究と同様のclopidogrel 3用量を用いており,投与前と4時間後のみの血小板凝集能の測定では300mgに比し600mg,900mgで共に有意な差を示し,用量依存性はみられなかった。対象疾患と薬剤投与後のサンプリングタイムの相違が抗血小板作用の効果の違いをもたらしているのかもしれない。900mgでは副作用としての出血は増大していないので,600mgよりも望ましいと思われ,より大規模な症例数での検討が必要である。(星田
デザイン PROBE(Prospective Randomized Open Blinded Endpoints),多施設(フランス,パリの7施設)。
期間 追跡期間は30日。
対象患者 103例。19~85歳。虚血発症後48時間未満;次のうち1つ以上を有するもの:心電図上ST部あるいはT波の変化,トロポニン陽性;入院時に低分子量heparin(LMWH)およびaspirn 250~500mg経口投与あるいは静注;clopidogrel治療を受ける予定のもの。
除外基準:ランダム化前のカテーテル手技例,ランダム化24時間以内のカテーテル手技予定例,LMWH,clopidogrel,aspirinの禁忌,重症高血圧,血小板数<100,000/mm³,好中球数<1800/mm³,出血リスク上昇,許可外の併用薬を10日以内に使用したもの/使用予定(aspirin以外の抗血小板薬,経口抗凝固薬,hirudin,非ステロイド性抗炎症薬),試験期間(24時間)内の緊急PCI施行あるいは血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与例。
■患者背景:平均年齢(clopidogrel 300mg群59.7歳,600mg群62.8歳,900mg群63.5歳),男性(77.1%, 76.5%, 76.5%),発症から24時間未満(80.0%, 75.8%, 79.4%),PCI,CABG既往(22.9%, 24.2%, 41.2%),高血圧(51.4%, 57.6%, 61.8%),糖尿病(28.6%, 15.2%, 20.6%),高コレステロール血症(48.6%, 57.6%, 55.9%),ランダム化前10日以内のCYP3A4代謝系スタチン(57.1%, 38.2%, 38.2%),喫煙(31.4%, 24.2%, 32.4%),ST低下(22.9%, 29.4%, 44.1%),トロポニン陽性(28.6%, 32.4%, 23.5%)。
治療法 clopidogrel 300mg群(35例),600mg群(34例),900mg群(34例)にランダム化。投与期間は24時間。
試験薬投与開始から24時間後にclopidogrel 75mg/日およびaspirin≦100mg/日の投与を開始し,LMWHを1日2回投与。
結果 clopidogrel 600mg群,900mg群では300mg群に比べ血小板凝集阻害(IPA)作用が有意に大きく,作用の開始時間も有意に早く,IPA plateau,adenosine diphosphate(ADP) 20μmol/L使用時の24時間のIPA曲線下面積,低IPA反応(6時間後に<10%)の比率(300mg群46.4%,600mg群20.7%,900mg群10.7%,p=0.007)に有意な用量効果関係が認められた。
血小板活性については24時間までのvasodilator-stimulated phosphoprotein(VASP) indexに有意な用量依存の有効性が認められ,各炎症マーカーの変化には治療群間に有意差はなかった。心筋壊死マーカーとしてはトロポニン放出に非有意ながら用量依存の有効性が認められた。
死亡例はなく,主要な有害心イベントの発生は少なく,300mg群4例,600mg群2例,900mg群は0例であった。大出血の発生はなく,小出血は3群同等であった。
★結論★低~中等度リスクのNSTE-ACS患者において,clopidogrel 300mg以上の用量で投与を開始すると,血小板凝集阻害効果が高く,24時間後までの血小板活性を低下させる。
文献
  • [main]
  • Montalescot G et al for the ALBION trial investigators: A randomized comparison of high clopidogrel loading doses in patients with non-ST-segment elevation acute coronary syndromes: the ALBION (assessment of the best loading dose of clopidogrel to blunt platelet activation, inflammation and ongoing necrosis) trial. J Am Coll Cardiol. 2006; 48: 931-8. PubMed

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収載年月2007.02