循環器トライアルデータベース

SPARCL
Stroke Prevention by Aggressive Reduction in Cholesterol Levels

目的 冠動脈疾患(CHD)の既往のない脳卒中あるいは一過性脳虚血発作(TIA)発症後の患者において,HMG-CoA reductase阻害薬atorvastatinの脳卒中二次予防効果を検討する。
一次エンドポイントは致死的あるいは非致死的脳卒中の再発。
コメント LDL-C低下療法の冠動脈疾患(CAD)予防効果については初発,再発を含めほとんど異論のないところまで確立されてきた。しかし,わが国では,CAD以上に脳血管障害(CVD)予防の方が社会的意義は高い。その予防治療は,主として高血圧治療に依存してきたところがある。しかし,最近メタ解析などのデータから,スタチン治療の副産物として,LDL-C低下療法がCVD予防にも有効である可能性が示されてきた。本研究はまさにCVD患者の再発予防としてのスタチン治療の意義を検討し,初めてスタチン治療のCVD予防効果を前向きに証明した。問題点は,強力な治療によるということと,脳出血が治療により増加したという点であろう。これも,脳出血も含んだCVD患者を対象とした点に問題があり,虚血性脳血管障害を対象とすべきであったのではなかろうか。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(205施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4.9年(中央値)。登録期間は1998年9月~2001年3月。
対象患者 4731例。18歳以上。1~6か月前に脳卒中(虚血性あるいは出血性),TIAを発症したもの;LDL-C 100~190mg/dL;modified Rankin Score(障害の程度により0~6にスコア化。6が最も重症)≦3。脂質低下薬投与例は30日のwash-out後にスクリーニングした。
除外基準:心房細動;その他の心臓由来塞栓;くも膜下出血など。
■患者背景:平均年齢(atorvastatin群63.0歳,プラセボ群62.5%),男性(60.3%, 59.0%),血圧(138.9/82.0mmHg, 138.4/81.4mmHg),BMI(27.5kg/m², 27.4kg/m²),脂質値:LDL-C(132.7mg/dL, 133.7mg/dL);HDL-C(両群とも50.0mg/dL);総コレステロール(211.4mg/dL, 212.3mg/dL);トリグリセリド(144.2mg/dL, 143.2mg/dL);アポリポ蛋白A1(149.1mg/dL, 149.6mg/dL);アポリポ蛋白B(133.1mg/dL, 134.1mg/dL)。脳卒中(1655例[70.0%],1613例[68.2%]):脳梗塞(1595例[67.4%],1559例[65.9%]);出血性脳卒中(45例[1.9%],48例[2.0%]),TIA(708例[29.9%],752例[31.8%]),脳卒中発症から試験開始までの時間(87.1日,84.3日)。治療状況:aspirinあるいはheparinを除く抗血小板薬(87.4%, 87.2%);ACE阻害薬(28.9%, 28.2%);dihydropyridine derivative(14.8%, 15.2%);β遮断薬(17.5%, 17.8%);AII受容体拮抗薬(4.7%, 4.3%):warfarinを含むビタミンK拮抗薬(5.9%, 6.5%);スタチン治療既往(2.4%, 2.7%)。
治療法 atorvastatin群(2365例):80mg/日投与,プラセボ群(2366例)にランダム化。
試験期間中,NCEP Step 1の食事指導を行った。
結果 試験期間中の平均LDL-Cはatorvastatin群73mg/dL,プラセボ群129mg/dL(p<0.001),HDL-Cは52.1mg/dL vs 51.0mg/dL(p=0.006),総コレステロールは147.2mg/dL vs 208.4mg/dL(p<0.001),トリグリセリドは111.5mg/dL,145.0mg/dL(p<0.001)であった。
一次エンドポイントはatorvastatin群265例(11.2%),プラセボ群311例(13.1%)で,atorvastatin群の絶対リスク低下は2.2%(p=0.05),補正後の相対リスクは16%有意に低下した(補正ハザード比[HR]0.84[95%信頼区間]0.71~0.99,p=0.03)。脳梗塞はatorvastatin群218例,プラセボ群274例(atorvastatin群の補正HR 0.78),出血性脳卒中はそれぞれ55例 vs 33例(HR 1.66),分類できない脳卒中は7例 vs 12例(HR 0.55)であった。
atorvastatin群の5年間の主要心血管イベントの絶対リスク低下は3.5%(ハザード比0.80;0.69~0.92,p=0.002)。総死亡率は両群間に差はなく(216例 vs 211例,p=0.98),重篤な有害イベントも両群で同様で(988例 vs 975例),治療中止に至った有害イベントは415例 vs 342例。肝酵素上昇(ALTあるいはAST>正常値上限の3倍)がatorvastatin群で多くみられた(51例 vs 11例)。
★結論★1~6か月以内に脳卒中,TIAを発症し,冠動脈疾患の既往のない症例において,atorvastatin 80mg/日治療は出血性脳卒中を増加させたものの,脳卒中,心血管イベントを抑制した。
ClinicalTrials.gov No.: NCT00147602
文献
  • [main]
  • Amarenco P et al for the stroke prevention by aggressive reduction in cholesterol levels (SPARCL) investigators: High-dose atorvastatin after stroke or transient ischemic attack. N Engl J Med. 2006; 355: 549-59. PubMed
  • [substudy]
  • (後ろ向き解析)LDL-Cが≧50%低下した症例は,変化しなかったもの,あるいは上昇したものに比べ,脳出血が増加することなく脳卒中,主要な冠動脈イベントのリスクが低下。
    LDL-Cが不変,増加例は32.7%,<50%低下は39.4%,≧50%低下は27.9%。≧50%低下症例は不変・増加例に比べ,脳卒中リスクが31%低下,脳梗塞は33%それぞれ有意に低下,有意ではないものの出血性脳卒中が増加,冠動脈イベントが37%低下した。筋肉痛,横紋筋融解症の増加はなかったが,≧50%低下症例で持続する肝酵素上昇が多くみられた:Stroke. 2007; 38: 3198-204. PubMed

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収載年月2006.07
更新年月2008.01