循環器トライアルデータベース

OASIS-6
Sixth Organization for the Assessment of Strategies for Ischemic Syndrome

目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,Xa阻害薬fondaparinuxの早期投与および発症から8日以内の投与と,標準的な抗血栓療法とを比較する。
一次エンドポイントは30日後の死亡+再梗塞。
コメント 毎年5,500万人が死亡し,約30%は心血管病が原因とされ,そのうち40~50%が急性心筋梗塞症に由来する。ST上昇型心筋梗塞において抗血小板薬,血栓溶解療法,ACE阻害薬は予後を改善する。PCIの方が血栓溶解療法より有用であるが,PCIができる施設は限られている。有用かつ安全で広く用いられやすい治療の進歩は臨床的インパクトが大きい。非分画heparin,トロンビン阻害薬,低分子量heparin enoxaparinはaspirinや血栓溶解療法と併用しても死亡率の低下はなく,出血は増大する。別の低分子量heparinであるreviparinは死亡や再梗塞を抑制したが,生命をおびやかす出血が増大した(CRETAE trial)。合成ペンタサッカライドであるfondaparinuxはXa阻害薬で,enoxaparinより静脈血栓塞栓症の予防に有用である。ST上昇型心筋梗塞以外の急性冠症候群患者を対象としたOASIS-5 trialにおいて,fondaparinuxはenoxaparinに比して急性期の虚血イベントは同等で,3~6か月後の死亡,心筋梗塞,脳卒中を抑制した。
本研究ではST上昇型心筋梗塞患者に対してfondaparinuxの有用性を検討しており,死亡や再梗塞を有意に抑制し,重度の出血は増加しなかった。特にPCIを行わない血栓溶解療法の患者や再灌流療法を受けない患者において死亡や再梗塞をより抑制し,過度の出血を生じていないので臨床的有用性が大きかった。fondaparinux群のPCI例ではheparin使用は21%のみで,ガイドカテの血栓症に由来する冠動脈合併症が多かった。primary PCI例では術前に抗血栓療法を行う時間が限られており,術中に非分画heparinが必要なのでfondaparinuxの有用性は低い。しかし,primary PCI後にfondaparinuxなどの抗血栓療法を1週間続けると,aspirinやclopidogrelを併用していても,さらに虚血イベントを低下させうるので今後の検討が期待される。fondaparinuxは体重補正なしに固定用量を1日1回投与し,血液モニタリングが不要で,血清クレアチニンの広い範囲内で投与が可能で,安全性も高いので,入院前治療としても有用かもしれない。(星田
デザイン 無作為割付け,二重盲検,factorial,多施設(41か国447施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3~6か月。実施期間は2003年9月~'06年1月,ランダム化期間は2003年9月~'05年9月。
対象患者 12,092例。発症から24時間以内(約4300例登録以降はCREATE試験の結果に基づき12時間以内とした)のSTEMI患者。
除外基準:出血の高リスクなどの抗凝固療法の禁忌,経口抗凝固薬投与例,クレアチニン>265.2mg/dL。
■患者背景:平均年齢(fondaparinux群61.6歳,対照群61.5歳),男性(72.8%,71.9%),喫煙歴(58.8%,57.2%),高血圧既往(54.3%,54.6%),心不全既往(14.0%,13.9%),CABG/PCI既往(両群とも3.9%)。
治療法 未分画heparin(UFH)の適応により,stratum 1:適応無し(5658例),stratum 2:適応有り(6434例。フィブリン特異的血栓溶解薬投与,抗血栓療法,primary PCIの予定)に層別化。
fondaparinux群(6036例:stratum 1:2823例,stratum 2:3213例),対照群(6056例:stratum 1:2835例,stratum 2:3221例)にランダム化。stratum 1ではfondaparinuxまたはプラセボ2.5mg/日を最大8日あるいは退院まで1日1回皮下注(初回は静注),stratum 2のprimary PCI非施行例はfondaparinux群:2.5mg/日を最大8日あるいは退院まで1日1回皮下注(初回は静注),対照群:UFH 60IU/kg(最大4000U)ボーラス投与後12IU/kg/時を24~48時間,primary PCI予定例ではfondaparinux群:手技直前にボーラス静注(血小板Gp IIb/IIIa受容体拮抗薬既使用例は2.5mg,未使用例5.0mg)後,2.5mg/日を最大8日間あるいは退院まで皮下注,対照群:手技直前にUFHボーラス静注(Gp IIb/IIIa既投与例は最大65IU/kg,非投与例は最大100IU/kg。UFH既投与例では活性化凝固時間に応じてheparin併用)。
他にグルコース・インスリン・カリウム(GIK)のランダム化が行われたが(2747例),他試験でGIKの有効性が認められなかったため2004年11月に中止。
結果 発症からランダム化までの時間は4.8時間(中央値)で,stratum 1(5.3時間)はstratum 2(4.3時間)に比べやや遅れた。
一次エンドポイントはfondaparinux群585例(9.7%)vs 677例(11.2%)とfondaparinux群で有意に低下した(ハザード比[HR] 0.86;95%信頼区間[CI] 0.77~0.96,p=0.008;絶対リスク低下1.5%,95%CI 0.4~2.6%)。
9日後も444例(7.4%) vs 537例(8.9%);HR 0.83(95%CI 0.73~0.94,p=0.003,絶対リスク低下1.5%)とfondaparinux群の有効性が確認された。
各時点の死亡(30日後の死亡:7.8%vs 8.9%,p=0.03),再梗塞(2.5% vs 3.0%,p=0.06)もそれぞれfondaparinux群が対照群に比べ有意に低かった。死亡+再梗塞に対するfondaparinuxの効果はstratum 1と2で有意差はみられなかった。strarum 2においては,primary PCI施行例ではfodaparinuxの有効性はみられなかったが,非施行例ではUFHに比べ有効性が認められた[30日後の死亡+再梗塞:fodaparinux群153例(11.5%)vs 対照群184例(13.8%);HR 0.82(95%CI 0.66~1.02,p=0.08),試験終了時:193例(14.9%)vs 245例(19.0%);HR 0.77(95%CI 0.64~0.93,p=0.008)。30日後の死亡+再梗塞に対するfodaparinux群の有意な有効性は非再灌流療法例(fondaparinux群12.2% vs 対照群15.1%;HR 0.80,p=0.003),血栓溶解療法群(10.9% vs 13.6%;HR 0.79,p=0.003)で認められた。
fondaparinux群では対照群に比べ,9日後の重度の出血が少ない傾向がみられ(61例[1.0%] vs 79例[1.3%];HR 0.77,p=0.13),うち致死的出血は35例(0.6%)vs 49例(0.8%);HR 0.72(p=0.13),心タンポナーデは28例(0.5%)vs 48例(0.8%);HR 0.59(p=0.02)であった。
★結論★STEMIを有する患者において,特にprimary PCI非施行例ではfondaparinuxは出血および脳卒中を増加させることなく,死亡および再梗塞を抑制した。
文献
  • [main]
  • Yusuf S et al for the OASIS-6 trial group: Effects of fondaparinux on mortality and reinfarction in patients with acute ST-segment elevation myocardial infarction; the OASIS-6 randomized trial. JAMA. 2006; 295: 1519-30. PubMed
  • [substudy]
  • fondaparinux治療はheparinをベースにした治療(未分画heparin,enoxaparin)に比べ,死亡率,虚血性イベント,大出血抑制効果に優れ,侵襲的治療例,保存的治療例を問わず,全体の臨床転帰を改善した(OASIS 5+OASIS 6の結果):Circulation. 2008; 118: 2038-46. PubMed

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収載年月2006.06
更新年月2008.12