循環器トライアルデータベース

CHARISMA
Clopidogrel for High Atherothrombotic Risk and Ischemic Stabilization, Management, and Avoidance

目的 アテローム性血栓イベント高リスク患者において,心血管イベント抑制効果と安全性をclopidogrel,aspirinの併用投与とaspirin単独投与とで比較する。
有効性の一次エンドポイントは心筋梗塞(MI)+脳卒中+心血管死の初発。
コメント CHARISMAでは,長期間のdual antiplatelet therapyの有効性と安全性を検討した。論文に付随するEditorialでは,aspirinとclopidogrelによるdual antiplatelet therapyが急性冠症候群では有効であるとする報告を紹介している(N Engl J Med. 2001; 345: 494-502,N Engl J Med. 2005; 352: 1179-89)。
しかしCHARISMAではaspirinとclopidogrelの併用はaspirin単独の有効性を上回らなかった。さらに,サブグループ解析で,登録時に症候性(symptomatic)であった群ではわずかな有効性が認められたが,その解釈は慎重でなければならないとしている。その差は小さく,症候性の群でわずかな効果が認められたからといって,aspirinとclopidogrelの併用が心血管疾患の二次予防に有効であると結論づけるのは早計であると思われる。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(32か国768施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は28か月(中央値)。登録期間は2002年10月1日~2003年11月14日。
対象患者 15,603例。45歳以上。次のうち1つに該当するもの:アテローム性血栓症のマルチプルリスクファクター*;冠動脈疾患;脳血管疾患;症候性末梢動脈疾患。
* 糖尿病,糖尿病性腎症,足関節/上腕血圧比(ABI)<0.9,非症候性頸動脈閉塞(≧70%),1つ以上の頸動脈プラークなど。
除外基準:長期にわたり経口抗血栓薬あるいは非ステロイド性抗炎症薬を服用しているもの;担当医師がclopidogrelの適応と判断したもの;施術後clopidogrel投与が必要となる血行再建術予定例。
■患者背景:平均年齢64歳,女性(clopidogrel+aspirin群29.7%,aspirin群29.8%),白人(80.4%, 79.9%),血管疾患(77.7%, 78.1%),マルチプルリスクファクター(21.3%, 20.8%):糖尿病(42.3%, 41.7%);糖尿病性腎症(両群とも12.9%),高血圧(73.3%, 73.9%),高脂血症(73.7%, 74.2%),既往:MI(34.2%, 34.9%);脳卒中(24.9%, 24.3%);一過性脳虚血発作既往(12.0%, 11.9%);PCI(22.4%, 23.1%);CABG(19.5%, 19.9%);末梢血管形成術あるいはバイパス術(11.3%, 11.0%)。薬物治療:利尿薬(48.2%, 47.1%);硝酸薬(23.2%, 24.1%);Ca拮抗薬(36.7%, 36.9%);β遮断薬(55.0%, 55.7%);AII受容体拮抗薬(25.5%, 25.9%);ACE阻害薬(64.0%:うち17.8%がramipril, 64.6%:18.3%);スタチン(76.8%, 76.9%);糖尿病治療薬(41.8%, 41.5%)。
治療法 clopidogrel+aspirin群(7802例):clopidogrel 75mg/日+aspirin低用量(75~162mg/日),プラセボ+aspirin群(7801例):aspirin低用量(75~162mg/日)。
全例に至適標準治療(スタチン系薬剤,β遮断薬)を実施。
結果 治療中止率はclopidogrel+aspirin群20.4%,aspirin群18.2%(p<0.001)。うち有害イベントによる中止例は4.8% vs 4.9%。
一次エンドポイントはclopidogrel+aspirin群6.8%,aspirin群7.3%で両群間に有意差は認められなかった(相対リスク [RR] 0.93;95%信頼区間 [CI] 0.83~1.05, p=0.22)。
マルチプルリスクファクター(無症候例3284例)での一次エンドポイントは6.6% vs 5.5%(RR 1.2;95%CI 0.91~1.59, p=0.20),心血管死は3.9% vs 2.2%(p=0.01)と併用群の方が高かった。
二次エンドポイント(一次エンドポイント+不安定狭心症による入院,一過性脳虚血発作,血行再建術)は16.7% vs 17.9%(RR 0.92, p=0.04)。
重篤な出血例(GUSTO定義に拠る)はclopidogrel群1.7%,aspirin群1.3%(RR 1.25, p=0.09)。中等度の出血は2.1% vs 1.3%(RR 1.62, p<0.001)。頭蓋内出血は両群で同様であった。
症候性アテローム性血栓症サブ解析(12,153例):一次エンドポイントはclopidogrel群6.9%,プラセボ群7.9%(RR 0.88, p=0.046)。
★結論★clopidogrelとaspirinの併用投与は一次エンドポイント予防においてaspirin単独投与を凌げなかった。症候性アテローム性血栓症におけるclopidogrelの有効性とマルチプルリスクファクター例での有害性が示唆された。
ClinicalTrials.gov No.: NCT00050817
文献
  • [main]
  • Bhatt DL et al for the CHARISMA investigators: Clopidogrel and aspirin versus aspirin alone for the prevention of atherothrombotic events. N Engl J Med. 2006; 354: 1706-17. PubMed
  • [substudy]
  • 症候性,無症候性にかかわらず,clopidogrel群は最初の1年間に出血リスクが増大。中等度出血は全死亡と強く関連。
    GUSTO定義による重度出血の発生率はclopidogrel群1.7% vs プラセボ群1.3%(p=0.087),中等度出血は2.1% vs 1.3%(p<0.001)。血管疾患診断例(症候性)とマルチプルリスクファクター保有例(無症候性)とに,中等度~重度の出血の頻度に差はなかった(3.1%vs 3.4%, p=0.26)。
    clopidogrel群における出血リスクは最初の1年間に大きく増加したが(ハザード比1.88;95%信頼区間1.45~2.45, p=0.001),その後はプラセボ群との差は広がらなかった。
    中等度出血発生例は非発生例に比べて心血管死(2.936;1.874~4.600, p<0.001)および全死亡(3.052;2.162~4.307, p<0.001)のリスクが有意に高かった。また,交絡イベント(致死的出血,頭蓋内出血,致死的MI,致死的脳卒中)を認めた患者を除外して行った多変量解析で,中等度出血は全死亡と強く関連した(2.55;1.71~3.80, p<0.0001):Circulation. 2010; 121: 2575-83. PubMed
  • clopidogrelの有効性は現喫煙者でより大きいが,出血リスクも増大。
    12,152例の喫煙状態(現喫煙,過去喫煙,非喫煙)別の心血管疾患(CVD)結果:現喫煙例は非喫煙例に比べ全死亡リスク(調整後ハザード比2.58;95%信頼区間1.85~3.60),CVDリスク(2.26;1.48~3.45),癌リスク(3.56;1.96~6.46)が増大。
    現喫煙例でclopidogrelは全死亡リスクを低下した(0.68;0.49~0.94)が,過去喫煙例(0.95;0.75~1.19),非喫煙例(1.14;0.83~1.58)では低下しなかった:p for interaction
    =0.018。心血管死も同様の結果であった。
    出血リスクも喫煙状態による違いがみられた:現喫煙でclopidogrelは重症・中等度出血リスクが有意に増大(1.62, p=0.04)したが,非喫煙例でのリスク増大は小さく非有意であった(1.31, p=0.15):Circulation. 2009; 120: 2337-44. PubMed
  • 無症候例の一次予防としてaspirin+clopidogrelは推奨できない。
    心血管疾患の危険因子を有する無症候例で心血管疾患の既往がない2289例:aspirin群1141例,aspirin+clopidogrel群1148例。
    ・心血管死亡率は,aspirin群(1.8%)に比べてaspirin+clopidogrel群(3.0%)で高かったが有意差はなかった(p=0.07)。
    ・多変量解析による心血管死の予測因子は,clopidogrel投与(ハザード比[HR]1.72:95%信頼区間0.99~2.97, p=0.054),10歳加齢(1.68:1.23~2.29, p=0.001),収縮期血圧5mmHg上昇(1.09:1.02~1.18, p=0.01),心房細動(4.21:1.81~9.79, p=0.001),心不全既往(2.50:1.07~5.85, p=0.04)。
    ・aspirin+clopidogrel群では,軽度~重篤な出血のリスク増加は有意ではなかった(p=0.218):Eur Heart J. 2007; 28: 2200-7. PubMed
  • ベースライン時にスタチン系薬剤が投与されていたのは10078例,うちCYP3A4-metabolized(MET)群(8245例:atorvastatin, lovastatin, simvastatin),non-CYP3A4-MET群(1748例:pravastatin, fluvastatin)。
    一次エンドポイントはclopidogrel群6.8% vs プラセボ群7.3%(HR 0.93, p=0.22):CYP3A4-MET群でclopidogrel群5.9% vs プラセボ群6.6%(HR 0.89, p=0.18);non-CYP3A4-MET群で5.7% vs 7.2%(HR 0.78, p=0.19)と群間に違いはみられなかった。スタチンのタイプとランダム化された試験薬の間に有意な相互関連は認められなかった(p=0.69)。
    atorvastatin群(4127例):clopidogrel群5.7% vs プラセボ群7.1%(HR 0.80, p=0.06),pravastatin群(1440例):5.1% vs 7.0%(HR 0.72, p=0.13)も同様であった:J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 291-5. PubMed
  • clopidogrel+aspirin群の有効性はMI・脳梗塞既往例,症候性末梢動脈疾患症例で有意であった:J Am Coll Cardiol. 2007; 49: 1982-8. PubMed

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収載年月2006.06
更新年月2010.07