循環器トライアルデータベース

ASSENT-4PCI
Assessment of the Safety and Efficacy of a New Treatment Strategy with Percutaneous Coronary Intervention

目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,血栓溶解薬tenecteplaseの前投与を行うfacilitated PCIとprimary PCIの有効性を比較する。
一次エンドポイントは90日以内の死亡+うっ血性心不全+ショック。
コメント STEMIの予後やMACEを左右する因子として早期再灌流(TIMI IIIの達成)が重要であることは言うまでもない。facilitated PCIはカテ室を持たない施設や救急搬送において,PCIまでの“繋ぎ”として血栓溶解剤や血小板IIb/IIIa受容体阻害薬を前投与する治療法である。血栓溶解療法でのfacilitated PCIには,streptokinaseを用いたSAMI・PRAGUE-1,alteplaseを用いたLIMI・PACT,tenecteplaseを用いたGRACIA-2などのトライアルがある。また両者を併用したADVANCE-MI・SPEED・BRAVEトライアルも報告されている。これらのトライアルの大半では血管造影時のTIMI IIIの達成率はprimary PCI群より高い。しかし奇妙なことに,MACEや死亡率ではprimary PCI群に及ばないとの報告が多く,ASSENT-4 PCIも同様の結果を受けて中途で中止となった。一因としては出血性合併症が挙げられるが,本トライアルでは心不全・再梗塞・再血行再建術施行がfacilitated PCI群でより多く発生しており,事はそれほど単純ではなさそうである。特にステント使用例,PCIまでに時間を要した症例でMACE発生率に有意差が認められており,全く“facilitate”していないのは皮肉な結果である。理由は定かではない。発症からtenecteplase投与までの約2時間半という時間が遅すぎるのか,TIMI flowでは推し量れない再灌流の質の問題か,血栓溶解剤による責任病変血管や心筋内の出血のためか,併用薬(GP IIb/IIIa阻害薬)の影響かなど,様々な可能性が考えられる。いずれにしろ現時点では,特にハイリスク症例に対しては,一刻も早くprimary PCIを行うのがbetterのようである。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(24か国:第三次医療施設,PCIの設備を持たない地域病院,救急車内),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は90日。登録期間は2003年11月10日~'05年4月22日(facilitated PCI群の死亡率が高かったため早期に登録中止)。
対象患者 1,667例。18歳以上;ランダム化は発症から6時間以内;primary PCIへの同意;複数の誘導上で総ST上昇0.6mV以上,下壁梗塞の場合は誘導II,III,aVFでの0.4mV以上のST上昇を含む0.6mV以上のST偏位;ST上昇0.1mV以上で新規の左脚ブロック。
除外基準:カテーテル室到着予定がランダム化後1時間未満あるいは3時間後,血管アクセスの問題が予想されるものなど。
■患者背景:平均年齢(facilitated PCI群61歳,primary PCI群60歳),女性(両群とも23%),体重(77.9kg, 77.7kg),Killip分類 class I(91%, 93%),心拍数(74.3拍/分,76.1拍/分),収縮期血圧(両群とも133.7mmHg),前壁梗塞(49%, 46%),下壁梗塞(50%, 51%),高血圧(両群とも47%),糖尿病(17%, 16%),救急車20%,カテーテル設備のない地域病院35%,カテーテル設備を有する病院45%。
治療法 facilitated PCI群(829例):体重により用量調整した通常量のtenecteplaseをボーラス投与後にPCI施行,primary PCI群(838例):通常のprimary PCI施行。
全例に血管造影を実施し,aspirin 150~325mgを投与,および未分画heparinボーラス静注(facilitated PCI群60U/kg[最大4000U],primary PCI群70U/kg[上限なし]),目標活性化凝固時間(facilitated PCI群の手技中300~350秒,primary PCI群 350~400秒またはGP IIb/IIIa受容体拮抗薬使用例は250~300秒)に応じてheparinボーラス静注を追加。GP IIb/IIIa受容体拮抗薬はfacilitated PCI群では緊急の場合(責任冠動脈,再灌流を妨げる残存血栓が認められた場合)を除き不許可,primary PCI群では可。ステント植込みの場合はclopidogrel 300mgで投与を開始し75mg(維持用量)を投与。
結果 facilitated PCI群におけるtenecteplaseボーラス投与は発症後153分(中央値),初回のバルーン拡張はtenecteplase投与後104分(中央値)に行われた。ランダム化から初回のバルーン拡張までの時間は両群で同程度(facilitated PCI群115分,primary PCI群107分)であった。PCI前のTIMI grade 3の開存率はPCI後の開存率はfacilitated PCI群が有意に高率だった(43% vs 15%)が,TIMI grade 3の割合は両群で同等であった(88% vs 89%)。ステント,薬剤溶出ステントの使用率に差はなかった。
一次エンドポイントはfacilitated PCI群151例/810例(19%) vs primary PCI群110例/819例(13%)でfacilitated PCI群で有意に高かった(相対リスク1.39, 95%信頼区間[CI] 1.11~1.74, p=0.0045)。
再梗塞(6% vs 4%, p=0.0279),標的血管再血行再建術(7% vs 3%, p=0.0041)などの虚血性心合併症の発症率もfacilitated PCI群の方が有意に高かった。またfacilitated PCI群ではprimary PCI群に比べ脳卒中の発症率も有意に高かったが(1.8% vs 0%, p<0.0001),大出血合併症の発生は両群間に有意差がなかった(5.6% vs 4.4%, p=0.3118)。
★考察★STEMIにおいてPCI施行の1~3時間前に抗血栓療法とともにfull doseのtenecteplaseの投与を行う治療戦略は,PCIのみを行う場合に比して主要な有害イベントの発生率が高く,勧められない。
ClinicalTrials.gov No.: NCT00168792
文献
  • [main]
  • Assessment of the safety and efficacy of a new treatment strategy with percutaneous coronary intervention (ASSENT-4 PCI) investigators: Primary versus tenecteplase-facilitated percutaneous coronary intervention in patients with ST-segment elevation acute myocardial infarction (ASSENT-4 PCI); randomised trial. Lancet. 2006; 367: 569-78. PubMed
  • [substudy]
  • facilitated PCI群は残存血栓リスク(thrombus burden)が有意に大きく,臨床転帰不良と関連。
    facilitated PCI群で高い開存率が示されたにもかかわらず臨床転帰が不良であった背景を解明するため,1,342例の冠動脈造影像の盲検解析により,facilitated PCIと血栓への影響(thrombus burden[TB];残存TIMI thrombus grade[TTG]≧2+遠位血栓+slow flowの複合エンドポイント)の関係を検証した結果:facilitated PCI群では,primary PCI群に比べて,血栓溶解薬投与後の梗塞責任血管のTIMI flow grade 2/3が有意に多く(73.7% vs 33.4%, p<0.001),PCI後のTBが有意に高かった(19.7% vs 13.4%, p=0.002)。両群ともに,PCI後のTTGはST回復,TIMI frame countと有意に関連した(ともにp<0.0001)。facilitated PCI群では,PCI後の血栓(TTG≧1)は血栓なし(TTG=0)に比べて90日後の死亡+うっ血性心不全+ショックの複合エンドポイントのリスクが有意に高かった(32.1% vs 18.6%, p=0.023)。多変量ロジスティック回帰分析の結果,tenecteplaseの前投与(p=0.005)とTB(オッズ比2.43;95%信頼区間1.30~4.51, p=0.0052)は90日後の死亡の独立した予測因子であった:J Am Coll Cardiol. 2011; 57: 1867-73.。 PubMed

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収載年月2006.06
更新年月2011.08