循環器トライアルデータベース

TROPHY
Trial of Preventing Hypertension

目的 前高血圧(prehypertension)患者において,AII受容体拮抗薬candesartanの2年間投与により高血圧発症を抑制できるかを検討する。
主なエンドポイントは4年間の高血圧発症:試験期間中3回の来院時に収縮期血圧(SBP)≧140mmHgまたは拡張期血圧(DBP)≧90mmHg,あるいはその両方;1回の通院時にSBP≧160mmHgあるいはDBP≧100mmHg;4年後にSBP≧140mmHgあるいはDBP≧90mmHg;標的臓器障害あるいは薬物治療が必要と担当医が判断した場合。
コメント フラミンガム心臓研究では,120~139/80~88mmHgの正常~正常高値血圧レベルでも将来の脳心血管合併症の発症リスクが至適血圧レベルの群に比べて有意に高いことを示し,その結果を受けて米国のJNC7では至適血圧レベル以上を前高血圧症と定義した。TROPHY試験では,我が国のガイドラインでは正常高値に分類される130~139/85~89mmHgの血圧レベルでも,生活習慣の改善のみでは2年後に40.4%,4年後には63 %がステージ1以上の高血圧に進行することを示した点で貴重である。また2年間のARB治療によって66.3%が高血圧への進展を免れうるという結果を示し興味深い。高血圧への進展防止が,ARBの効果であるのか,あるいは廉価な降圧利尿薬やCa拮抗薬でも可能なのかはこの結果からは明らかにできない。この血圧レベルから降圧薬を開始することには多くの臨床医はさすがに抵抗を示すであろうが,どの程度の生活習慣指導が行われたのか,その内容が知りたいところである。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(米国の71施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4年(治療期間は2年)。ランダム化期間は1999年6月~2005年6月。
対象患者 772例。30~65歳の未治療例。JNC VIの正常高値例:3回の計測平均値がSBP 130~139mmHgおよびDBP≦89mmHg,あるいはSBP≦139mmHgおよびDBP 85~89mmHg。
■患者背景:平均年齢48.5歳,男性(candesartan群59.1%,プラセボ群60.1%),白人(79.8%, 84.3%),BMI(29.9kg/mm², 30.0kg/m²),診察時に自動血圧計を使用した場合の血圧(133.9/84.8mmHg, 134.1/84.8mmHg),総コレステロール(202.9mg/dL, 205.7mg/dL),トリグリセリド(145.8mg/dL, 159.8mg/dL),HDL-C(48.9mg/dL, 49.2mg/dL),グルコース(95.5mg/dL, 95.9mg/dL),インスリン(11.7IU, 11.2IU),インスリン/グルコース比(15.4, 15.1),クレアチニン(0.84mg/dL, 0.85mg/dL)。
治療法 candesartan群(391例):16mg/日,プラセボ群(381例)。
2年間の治療後,投与を中止しさらに2年追跡(プラセボ投与)。
降圧目標値は設けなかったが,高血圧発症の場合のみ降圧治療を変更できることとした。高血圧発症後,降圧薬(β遮断薬metoprolol 50mg/日,あるいはhydrochlorothiazide 12.5mg/日)を供したが,担当医はその他の降圧薬(アンジオテンシン受容体拮抗薬を除く)も投与できた。
全例に降圧のための生活習慣(食事,運動)の改善を指導した。
結果 最初の2年間(治療期間)の高血圧発症例はcandesartan群53例(13.6%),プラセボ群154例(40.4%)でcandesartan群の相対リスク低下(RRR)は66.3%(RR 0.34;95%信頼区間0.25~0.44,p<0.001)であった。
4年後(治療期間+追跡期間)の発症はcandesartan群208例(53.2%),プラセボ群240例(63.0%):RRR 15.6%(p=0.007)。
重篤な有害イベントはcandesartan群14例(3.5%),プラセボ群23例(5.9%)。
★結論★4年間で非治療の前高血圧患者の約2/3が高血圧を発症する。前高血圧患者におけるcandesartan治療の忍容性は良好で高血圧発症のリスクを低下する。よって前高血圧患者の治療は適切だと思われる。
ClinicalTrials.gov No.: NCT00227318
文献
  • [main]
  • Julius S et al for the trial of preventing hypertension (TROPHY) study investigators: Feasibility of treating prehypertension with an angiotensin-receptor blocker. N Engl J Med. 2006; 354: 1685-97. PubMed

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収載年月2006.06