循環器トライアルデータベース

CIBIS III
Cardiac Insufficiency Bisoprolol Study III

目的 軽症~中等症の慢性心不全(CHF)患者における至適薬物療法の検討:β遮断薬bisoprololで投与を開始後ACE阻害薬と併用投与 vs ACE阻害薬enalaprilで投与を開始しβ遮断薬と併用投与(非劣性試験)。
一次エンドポイントは全死亡+全入院の初回発生までの時間。
コメント 慢性心不全の治療にACE阻害薬とβ遮断薬は第一選択薬剤と位置づけられているが,開発の歴史からこれまでβ遮断薬はACE阻害薬に上乗せする形で投与が行われていた。本試験は両薬剤のいずれを先行投与するのがよいかを検討した初めての試験であり,一次エンドポイントではいずれの先行群もほぼ同様の成績となったが,生存率ではbisoprolol先行群の方がよい傾向にあり,心不全悪化率ではbisoprolol先行群の方が不良の傾向にあった。おそらくβ遮断薬は導入初期に心不全を悪化させる可能性があるが,突然死を減少させる効果が現れたものと考えられる。サブ解析の結果を待ちたい。(
デザイン PROBE(Prospective, Randomised, Open, Blinded-Endpoints),多施設(欧州18か国,オーストラリア,チュニジアの128施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は1.22年。試験期間は2002年10月~'05年5月。
対象患者 1010例。65歳以上の男女。NYHA心機能分類II~III度で,3か月以内の心エコー評価においてEF≦35%であり,ランダム化前の7日間に体液貯留や利尿薬による治療変更がなく症状が安定しているもの。
除外基準:3か月以内の7日を超えるACE阻害薬/アンジオテンシン受容体拮抗薬/β遮断薬投与例;3か月以内の急性冠症候群;3か月以内のPCI/CABGの予定あるいは施行例;1か月以内の脳卒中あるいは6か月以内の永続的な後遺症を伴う脳卒中;ペースメーカー不使用で安静時心拍数<60拍/分,安静時仰臥位収縮期血圧<100mmHgなど。
■患者背景:平均年齢(bisoprolol群72.4歳,enalapril群72.5歳),男性(65.9%,70.5%),NYHA II/III度(48.5/51.5%,49.5/50.5%),EF(両群とも28.8%),冠動脈疾患によるCHF(61.2%,63.6%),高血圧によるCHF(39.0%,34.1%),MI既往(50.3%,48.1%),末梢血管疾患既往(7.3%,11.1%),脳血管疾患既往(10.3%,9.7%),糖尿病既往(18.8%,22.4%),腎疾患既往(18.4%,17.6%),利尿薬投与(85.1%,83.4%);サイアザイド系利尿薬(19.2%,22.8%);ループ利尿薬(71.5%,66.9%);カリウム保持性利尿薬(10.3%,10.5%);アルドステロン受容体拮抗薬(14.3%,12.3%),抗血小板薬投与(68.3%,66.1%),強心配糖体投与(32.9%,30.7%),血糖降下薬投与(14.3%,17.0%)。
治療法 bisoprolol群(505例):1.25mg/日より投与を開始し,10.0mg/日を目標に2週間ごとに第10週まで漸増投与(2.5→ 3.75→ 5.0→ 7.5mg/日)。最大維持用量を16週間投与。第26週よりenalaprilを単剤治療期間と同様に段階的に目標用量まで増量しながら追加投与し,1~2.5年後の試験終了時まで併用。
enalapril群(505例):2.5mg×2回/日より投与を開始し,10mg×2回/日を目標に2週間ごとに第4週まで漸増投与後,第26週まで最大維持用量を投与。それ以降はbisoprololを追加併用投与。
単剤治療期間中の追加投与(アンジオテンシン受容体拮抗薬/アルドステロン受容体拮抗薬[試験前からの投与例は継続可])は不可とし,併用投与期間中は適切と考えられれば可とした。β遮断薬/ACE阻害薬のオープンラベル投与は全試験期間を通じて禁止。
結果 一次エンドポイントはintention-to-treat解析ではbisoprolol群178例(35.2%) vs enalapril群186例(36.8%)(絶対差-1.6%,ハザード比[HR]0.94;95%[CI] 0.77~1.16,bisoprolol vs enalaprilの非劣性* p=0.019)でbisoprololで治療を開始した場合のenalaprilに対する非劣性が認められた。しかし,per-protocol解析では163例(32.4%)vs 165例(33.1%)(絶対差-0.7%,HR 0.97;95%CI 0.78~1.21,p=0.046)でbisoprololのenalaprilに対する非劣性は証明されなかった(非劣性はp<0.025を有意とする)。
死亡はbisoprolol群65例 vs enalapril群73例(HR 0.88;95%CI 0.63~1.22,p=0.44),入院は151例 vs 157例(HR 0.95;95%CI 0.76~1.19,p=0.66),心血管死は55例 vs 56例(HR 0.97;95%CI 0.67~1.40,p=0.86),入院を要するCHFの悪化は63例 vs 51例(HR 1.25;95%CI 0.87~1.81,p=0.23)。単剤治療終了時の一次エンドポイントはbisoprolol群109例 vs enalapril群108例(HR 1.02;95%CI 0.78~1.33,p=0.90),死亡は23例 vs 32例(HR 0.72;95%CI 0.42~1.24,p=0.24),入院は99例 vs 92例(HR 1.08;95%CI 0.81~1.43,p=0.59)であった。
1年目のpost hoc解析では一次エンドポイントの発生はbisoprolol群155例 vs enalapril群165例(HR 0.94,p=0.59),死亡は42例 vs 60例(HR 0.69,p=0.065)。全試験期間中の試験薬投与の永続的な中止はbisoprolol群101例 vs enalapril群89例で,このうち有害事象(心,呼吸器・胸部,血管,消化器など)によるものは48例 vs 51例であった。
★結論★CHFにおいて,bisoprololによる治療開始のenalaprilによる治療開始に対する非劣性はper-protocol解析では証明されなかったが,両者は同様に安全かつ有効であると思われる。
文献
  • [main]
  • Willenheimer R et al on behalf of the CIBIS III investigators: Effect on survival and hospitalization of initiating treatment for chronic heart failure with bisoprolol followed by enalapril, as compared with the opposite sequence; results of the randomized cardiac insufficiency bisoprolol study (CIBIS) III. Circulation. 2005; 112: 2426-35. PubMed

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収載年月2006.04