循環器トライアルデータベース

CANPAP
Canadian Continuous Positive Airway Pressure for Patients with Central Sleep Apnea and Heart Failure

目的 至適薬物療法を受けている心不全患者において,持続気道陽圧療法(continuous positive airway pressure:CPAP)による中枢型睡眠時無呼吸の長期治療が死亡および心移植を抑制するかを検討。
一次エンドポイントは全死亡+心移植。
コメント CPAPは慢性心不全の20~40%に認められる中枢型睡眠時無呼吸の治療に用いられるようになってきているが,長期の臨床試験についてはこれまで報告されていなかった。本研究は中規模ではあるが,長期の追跡による心臓移植回避率(生存率)を観察したものであり意義が大きい。結論的には生存率の改善は得られなかったが,対照群との比較からCPAPは初期に悪化傾向になるが,長期的には改善傾向が得られる結果となっている。β遮断薬の長期効果と似ており,より長期の追跡により効果が期待できるかもしれない。(
デザイン 無作為割付け,オープンラベル,多施設(カナダの11施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は2年。スクリーニング期間は1998年12月~2004年5月。
対象患者 258例。18~79歳の男女。虚血性,高血圧性,特発性拡張型心筋症によるNYHA心機能分類 class II~IV度の心不全を有し,1か月以上の至適薬物療法により状態が安定している;心プールシンチグラフィによるEF<40%;中枢型睡眠時無呼吸(睡眠1時間当たり15回以上の無呼吸および低呼吸で,51%以上が閉塞型ではなく中枢型と判断される)。
除外基準:妊娠,3か月以内の心筋梗塞,心臓手術または不安定狭心症,閉塞型睡眠時無呼吸。
■患者背景:平均年齢(CPAP群63.2歳,対照群63.5歳),男性(98%,95%),白人(両群とも95%),NYHA II度(67%,66%),虚血性心筋症(65%,68%),拡張型心筋症(33%,29%),EF(24.8%,24.2%)。治療状況:ACE阻害薬(77%,82%),β遮断薬(77%,76%),ループ利尿薬(86%,89%),digoxin(52%,57%)。無呼吸-低呼吸指数(両群とも40回/睡眠1時間),睡眠時間(308分,304分)。
治療法 CPAP群(128例):薬物療法+CPAP。CPAPは次の3種のデバイスにランダム化(2:1:1)。Respironics Remstar Pro,ResMed Sullivan VII,Tyco Healthcare GoodKnight 420S,対照群(130例):慢性心不全の至適薬物療法を継続。
結果 中間解析の結果,早期に対照群の方が心移植非実施生存率が高かったこと,登録数が予定の50%であったこと,死亡率および心移植率の低下により一次エンドポイントについての2群間の差異の検出が不可能であったことから2004年5月21日に試験は中止された。
脱落例は両群とも20例。CPAP群のCPAP平均使用時間は最初の3か月間が4.3時間,1年後以降が3.6時間。対照群に比べCPAP群では3か月後の無呼吸-低呼吸指数(-21回/睡眠1時間 vs -2回/睡眠1時間,p<0.001),ノルエピネフリン値(-1.03nmol/L,+0.02nmol/L,p=0.009)が有意に低下し,夜間酸素飽和度(1.6% vs 0.4%,p<0.001),最小酸素飽和度(4.7% vs 0.9%,p<0.001)が有意に上昇した。さらにEFが上昇(2.2% vs 0.4%,p=0.02),6分間歩行距離が延長した(20.0m vs -0.8m,p=0.016)。睡眠時間,睡眠段階の分布,覚醒の頻度(各p>0.19),心房性ナトリウム利尿ペプチド値(p=0.64)は両群間に差はなかった。
一次エンドポイントは両群とも32例の発生で同様であった(ハザード比[HR]1.16,95%信頼区間[CI ]0.71~1.90,p=0.54)。CPAPのレベル,使用時間,デバイスの種類は一次エンドポイントの発生率に関連しなかった。一次エンドポイントは1998~'99年の20例/100人・年から2004年には4例/100人・年(p=0.003)に低下した。この低下は薬物療法の変化(β遮断薬[58%→ 86%,p<0.001]およびspironolactone[14%→ 41%,p=0.001]投与の増加,digoxin投与の減少[72%→ 36%,p=0.002])と関連した。
死亡率(HR 1.1,95%CI 0.65~1.88,p=0.714),入院数(0.56人/年 vs 0.61人/年,p=0.45),QOLスコアの変化には両群間に有意差はなかった。心移植非実施生存率は18か月後には対照群でより高かったが(HR 1.5,p=0.02),さらに18か月後にはCPAP群のほうが高くなった(HR 0.66,p=0.06)。
★結論★CPAPは中枢型睡眠時無呼吸を軽減し,夜間酸素飽和度,EF,ノルエピネフリン値,6分間歩行距離を改善したが,生存率には影響しなかった。本結果は中枢型睡眠時無呼吸を有する心不全患者での延命を目的としたCPAPの使用を支持するものではない。
文献
  • [main]
  • Bradley TD et al for the CANPAP investigators: Continuous positive airway pressure for central sleep apnea and heart failure. N Engl J Med. 2005; 353: 2025-33. PubMed
  • [substudy]
  • CPAP群において,apnea-hyponea index(無呼吸-低呼吸指数:AHI)<15に低下した症例(57例)は対照群に比べ,3か月後のEFが有意に改善し(p<0.001),心移植を伴わない生存率が有意に高かった(ハザード比0.371;95%信頼区間0.142~0.967,p=0.043)。一方で,AHIが低下しなかった症例(43例)はEF(p=0.984),心移植を伴わない生存率(1.463;0.751~2.850,p=0.260)の改善はみられなかった:Circulation. 2007; 115: 3173-80. PubMed

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収載年月2006.04
更新年月2007.08