循環器トライアルデータベース

VINTAGE MI
Vascular Interaction with Age in Myocardial Infarction

目的 ST上昇型心筋梗塞患者において,梗塞後の標準治療にL-アルギニンの追加投与が動脈のstiffness(硬度)を低下させ左室機能を改善させるかを検討する。
コメント NO産出の基質であるL-アルギニンは,NOの存在やその合成経路が発見されて以来,生体内のNO産生を増加させる手段として注目されてきた。しかし当初から血中L-アルギニンがNO合成の律速段階でないことが知られており,その効果については疑問もあった。VINTAGE MIはL-アルギニン投与が動脈のstiffnessを変化させず,また予後も改善させないことを示し,10年来の議論に一定の結論を与えたといえる。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6か月。登録期間は2002年2月~2004年6月。
対象患者 153例。30歳以上;ST上昇型心筋梗塞(MI)初発から3~21日。
除外基準:Q波MIの記録があるもの;心原性ショック;急性冠症候群;コントロールできていない糖尿病;重症な非心疾患があるため予測余命が1年未満のもの;重症腎疾患(クレアチニン>3.0mg/dL)または肝疾患。
■患者背景:平均年齢(L-アルギニン群60.2歳,プラセボ群60.4歳),男性(両群とも68%),脈圧≧50mmHg(59%,57%),糖尿病(22%,17%),左前下行枝梗塞(47%,44%),1枝病変(37%,31%),最初に灌流のなかったもの(両群とも60%),梗塞血管へのPCI(89%,88%),最終TIMI grade 3(83%,82%),冠動脈疾患発症予測スコア(48.4,49.1),最大クレアチンフォスフォキナーゼ(2314.4IU/L,2210.8IU/L),トロポニンI(79.0ng/mL,79.4ng/mL),1mm以上のST上昇のECG誘導(4.3,4.4),ST部変化計(13.0mm,12.6mm)。治療状況:aspirin(両群とも全例),clopidogrel(91%,88%),ACE阻害薬(両群とも91%),β遮断薬(91%,97%),HMG-CoA reductase阻害薬(96%,97%)。
急性心筋梗塞による入院から平均5.9日後。
治療法 L-アルギニン群(78例):1g×3/日で投与を開始し1週間投与後,翌週は2g×3回/日,3週目に3g×3回/日に増量しこの用量を6か月間維持投与。漸増投与期間中に有害事象が発生した場合は忍容性のある前の投与量に戻す。プラセボ群(75例)。
EFはgated blood-pool scanにより測定した。
結果 脈圧(L-アルギニン群:試験開始時52.6mmHg→ 6か月後51.6mmHg,プラセボ群53.8mmHg→ 54.8mmHg),動脈弾性(1.6mmHg/mL→ 1.5
mmHg/mL, 1.5mmHg/mL→変化なし),脈波速度(807.4cm/秒→ 777.0cm/秒,781.5cm/秒→ 842.0cm/秒),橈骨動脈コンプライアンス(1.7mL/mmHg→ 2.0mL/mmHg, 1.8mL/mmHg→変化なし),EF(54.9%→ 55.7%, 57.2%→ 56.8%),梗塞域EF(37.7%→ 35.9%, 36.8%→ 35.7%),非梗塞域(84.1%→ 84.8%, 89.1%→ 88.2%),拡張終末期容積指数(79.9mL/m²→ 85.9mL/m², 78.2mL/m²→ 85.0mL/m²),収縮終末期容積指数(36.7mL/m²→ 39.9mL/m², 34.7mL/m²→ 37.6mL/m²)。
動脈硬度,EFの変化において,両群間および年齢(60歳以上と60歳未満)間に有意差は認められなかった。
死亡がL-アルギニン群6例,プラセボ群0例とL-アルギニン群で多かった(p=0.01)。安全性への懸念からデータ安全モニタリング委員会は登録を中止した。
★結論★標準梗塞後治療にL-アルギニンを追加しても動脈硬度およびEFは改善せず,死亡を増加させる可能性がある。よって,急性心筋梗塞後にL-アルギニンを投与することは推奨されるべきではない。
ClinicalTrials. gov Identifier: NCT00051376
文献
  • [main]
  • Schulman SP et al: L-arginine therapy in acute myocardial infarction; the vascular interaction with age in myocardial infarction (VINTAGE MI) randomized clinical trial. JAMA. 2006; 295: 58-64. PubMed

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収載年月2006.05