循環器トライアルデータベース

COMMIT
Clopidogrel and Metoprolol in Myocardial Infarction Trial

目的 ST上昇型急性心筋梗塞(AMI)患者において次の抗血小板薬,β遮断薬の有効性を検討する下記2試験から成る。
(1) 抗血小板薬clopidogrelのaspirinへの上乗せ効果を検討する。
(2) β遮断薬metoprololの早期投与による標準治療への上乗せ効果を検討する。

(1) 一次エンドポイントは試験期間内(退院あるいは28日間)の(i)死亡+再梗塞+脳卒中,(ii)全死亡。
(2) 一次エンドポイントは試験期間内(退院あるいは28日間)の(i)死亡+再梗塞+心停止,(ii)全死亡。
コメント (1)急性冠症候群(ACS)におけるclopidogrelの有効性の検証はCURE(非ST上昇ACS),CLARITY-TIMI28,PCI-CLARITY ,COMMIT(いずれもST上昇AMI)等が代表的なトライアルである。ISIS-2にてaspirin 160mg の内服により1か月で血管死は21%減少(aspirin内服群8587例中804例死亡,aspirin非内服群8600例中1016例死亡),再梗塞は45%減少(aspirin内服群8587例中156例,aspirin非内服群8600例中284例)させたが,本トライアルではわずか2週間のclopidogrel 75mg の追加によってさらに約9%の心血管イベントが抑制されることが示された。その相乗作用は両者の作用機序の違いで説明することができる。ともに血栓溶解療法を標準的治療としたCLARITY-TIMI28との相違点は,治療期間のほかに,年齢制限がない,発症から投薬までの時間が長くしかもloadingも行わず,血栓溶解療剤が主としてUKでその併用率も低く,さらにPCI予定症例を除外した点などである。すなわち,CLARITY-TIMI28 より不利な条件が多いにもかかわらず,一次エンドポイントはプラセボ群に比していずれも有意に改善しており,clopidogrel の"底力"を示す形となった。primary PCIが血栓溶解療法に優るというのは多くのデータが示してはいるが,本トライアルが施行された中国などの医療状況を考えると,こうした薬物療法への期待はまだまだ大きい。

(2)ACC/AHAガイドライン(2004) では,STEMI急性期でのβ遮断薬は経口投与が再還流療法に関わらずclass I,超急性からの経静脈投与はclass IIaと定義されている。しかしいずれも「禁忌を除く」という条件付きでである。歴史的には血栓溶解療法が確立されていなかった時代のISIS-1(atenolol) やMIAMI trial(metoprolol)で経静脈投与および経口投与が死亡率減少効果をもたらすと報告されている。一方血栓溶解療法の時代に報告されたTIMI IIb (metoprolol)やGUSTO-I(atenolol)では再梗塞や虚血の再燃抑制効果はあるものの死亡率低下には結びついていない。COMMIT trilalでも同様の結果となった。しかし,血圧や脈拍に除外規定があるもののKillip II・IIIを含んだ対象群は「禁忌を除く」とは言えず,これまでのトライアルとは趣を異にする。その圧倒的な症例数から得られたサブ解析によると,リスクの層別化が経静脈投与の鍵を握っており,発症24時間以内に大勢が決する心原性ショックのリスクを見極めてから投与を開始する方法も一考に値する。また対象から除外されたprimary PCI症例に対する有効性も検討して欲しい。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,2×2 factorial,多施設(中国の1250施設),intention-to-treat解析。
期間 登録期間は1999年8月~2005年2月。
対象患者 45,852例。AMIが疑われる症状の発症から24時間以内のST上昇あるいは低下,左脚ブロックを有するもの。
(1) 除外基準:primary PCI予定例,出血例,止血異常の既往など。
(2) 除外基準:primary PCI予定例,収縮期血圧(SBP)100mmHg以下,徐脈(50拍/分以下),ブロック,心原性ショック。Killip分類class II~IIIは除外せず。
■患者背景:平均年齢61歳,女性28%,発症からの平均経過時間は10時間(6時間以内が34%),収縮期血圧128.2mmHg,心拍数82拍/分,ST上昇87%,脚ブロック6%,ST低下7%,心不全(Killip class II~III)24%。MI既往8%,高血圧既往43%,aspirin投与例18%,β遮断薬投与例7%,血栓溶解療法(主にurokinase)50%。
治療法 (1) 全例にaspirin 162mg/日を投与し,clopidogrel群(22,961例):75mg/日を28日間,あるいは退院,死亡時まで継続,プラセボ群(22,891例)にランダム化。
(2) metoprolol群(22,929例):ランダム化直後に5mgを2~3分で静注し,2~3分後に心拍数が50拍/分,SBPが90mmHgを超えていたら2回目の静注,同様に3回目の静注を実施。静注から15分後に50mgを経口投与し,以後6時間ごとの経口投与を投与開始日と翌日継続する。その後200mg/日を28日間(あるいは退院,死亡まで)投与。プラセボ群(22,923例)。
試験薬以外の抗血小板薬,β遮断薬の投与は強い適応(コントロールできない胸痛,高血圧など)がない限り不可とした。また血栓溶解療法はランダム化を待たずに開始した。
結果 試験(治療期間)はいずれも平均15日間にわたって行われた。
(1) 一次エンドポイント(i)はclopidogrel群2121例(9.2%),プラセボ群2310例(10.1%)でclopidogrel群で有意に低下した(p=0.002)。全死亡は1726例(7.5%) vs 1845例(8.1%)でclopidogrel群で有意に低下した(p=0.03)。clopidogrel群の有効性は併用治療とは独立していた。
同群で致死的出血,輸血,脳出血のリスクが上昇することはなく(p=0.59),70歳以上,血栓溶解薬投与の有無による差異もなかった。
★考察★さまざまな患者背景を有する急性心筋梗塞患者において,aspirnおよびその他の血栓溶解薬などの標準治療にclopidogrel 75mgを追加投与することにより安全に死亡および主要な血管イベントが抑制された。

(2) metoprolol群において90%に3度静注を施行でき,内服を予定通りに完了したのは86.2%であった。
一次エンドポイント(i)はmetoprolol群2166例(9.4%),プラセボ群2261例(9.9%)で両群間に有意差はみられなかった(オッズ比[OR]0.96,95%信頼区間[CI]0.90~1.01;p=0.1)。(ii)の死亡率も1774例(7.7%) vs 1797例(7.8%)で有意差はなかった(OR 0.99,0.92~1.05;p=0.69)。
再梗塞は464例(2.0%) vs 568例(2.5%);OR 0.82,95%CI 0.72~0.92(p=0.001),心室細動は581例(2.5%) vs 698例(3.0%);OR 0.83,95%CI 0.75~0.93(p=0.001)とmetoprolol群で有意に減少したが,その有効性は心原性ショックの有意な増加(1141例[5.0%] vs 885例[3.9%];OR 1.30,95%CI 1.19~1.41[p<0.00001])で相殺された。心原性ショックは主に入院当日あるいは翌日に発生したが,再梗塞,心室細動への効果はこれ以降に認められた。その結果,一次エンドポイント(i)に対しては初日から翌日は有意に不利に,それ以降は有利に作用していた。血行動態的に不安定な例にはリスクとなり,比較的安定している例では有効性がみられた。
★結論★急性心筋梗塞治療としてのβ遮断薬早期投与は再梗塞および心室細動を抑制するが,心原性ショックのリスクが特に投与当日あるいは入院後に上昇する。よって心筋梗塞後に血行動態が安定している場合にのみβ遮断薬の投与開始を考慮するべきであると思われる。
ClinicalTrials.gov Identifier: NCT00222573
文献
  • [main]
  • Chen ZM et al for the COMMIT (clopidogrel and metoprolol in myocardial infarction trial) collaborative group: Addition of clopidogrel to aspirin in 45,852 patients with acute myocardial infarction; randomised placebo-controlled trial. Lancet. 2005; 366: 1607-21. PubMed
  • Chen ZM et al for the COMMIT (clopidogrel and metoprolol in myocardial infarction trial) collaborative group: Early intravenous then oral metoprolol in 45,852 patients with acute myocardial infarction: randomised placebo-controlled trial. Lancet. 2005; 366: 1622-32. PubMed

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収載年月2006.04