循環器トライアルデータベース

OmniHeart
Optimal Macronutrient Intake Trial to Prevent Heart Disease

目的 前高血圧あるいはstage 1の高血圧患者において,飽和脂肪酸の含有量を減らした3種類の食事療法(炭水化物を多めに摂取する食事,タンパク質を多めに摂取する食事,不飽和脂肪を多めに摂取する食事)が血圧値および脂質値に与える効果を比較する。
一次アウトカム評価項目は収縮期血圧,LDL-C。
コメント 食事療法による動脈硬化予防がもっとも重要であることは周知のことであるが,実際にはエビデンスに乏しく,医療現場でのインパクトがないのが現状である。重要な動脈硬化危険因子である高血圧に対するDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食がよく知られているが,その内容は3大栄養素というより,果物・野菜・低脂肪乳製品や飽和脂肪酸・総脂肪・コレステロールを抑えた食品である。本研究は,この炭水化物の多いDASH食に対し,一部の炭水化物をたんぱく質または不飽和脂肪酸で置き換えて,その影響を見たという意味で評価される。結果として,たんぱく質(植物性を50%以上としている)を多くすることにより,高血圧,LDLコレステロールなどに有効性を示すことが明らかになった。規模の大きさからしても,今後の食事療法の参考になるものと期待される。ただし,この食事療法でのイベント抑制効果は判明しておらず,今後の課題として残される。(寺本
デザイン 無作為割付け,クロスオーバー。
期間 登録期間は2003年4月~2005年6月。
対象患者 191例。30歳以上の健康なもの;収縮期血圧(SBP)120~159mmHgあるいは拡張期血圧(DBP)80~99mmHg(前高血圧[SBP 120~139mmHg)あるいはDBP 80~99mmHg]およびstage 1の高血圧[SBP 140~159mmHgあるいはDBP 90~99mmHg]を含む)。アフリカ系アメリカ人コホート(50%)を設定できるようにリクルートした。
除外基準:糖尿病,現在心血管疾患あるいは既往,LDL-C>220mg/dL,空腹時トリグリセリド>750mg/dLなど。
■2種類の食事療法を完了した164例の患者背景:平均年齢53.6歳,女性45%,アフリカ系アメリカ人55%,非ヒスパニック系白人40%,体重87.3kg,BMI 30.2kg/m²,過体重34%,肥満45%,アルコール摂取例は45%で1週間の飲酒回数は4回,喫煙例11%,喫煙経験なし61%,閉経後73%。
治療法 検討した食事は次の3種類。(1)炭水化物が豊富な食事:1日の摂取量が2100kcalの場合,炭水化物58%,脂肪酸27%;飽和脂肪酸6%;一価不飽和脂肪酸13%;多価不飽和脂肪酸8%,タンパク質15%;肉5.5%;乳製品4%;植物性5.5%,(2)タンパク質の摂取量が豊富な食事:タンパク質25%;肉9%;乳製品4%;植物性12%,炭水化物48%,脂肪酸27%;飽和脂肪酸6%;一価飽和脂肪酸13%;多価不飽和脂肪酸8%,(3)不飽和脂肪酸の摂取量が豊富な食事:脂肪酸37%;飽和脂肪酸6%,一価不飽和脂肪酸21%;多価不飽和脂肪酸10%,炭水化物48%,タンパク質15%;肉5.5%;乳製品4%;植物性5.5%。
6日間のrun-in期間に3種類の食事のうちいずれかの食事を2日間摂ったあと,次の6群にランダム化。(1)の食事→(2)の食事→(3)の食事群(32例),(1)→(3)→(2)群(33例),(2)→(1)→(3)群(29例),(2)→(3)→(1)群(32例),(3)→(1)→(2)群(32例),(3)→(2)→(1)群(33例)。
5種類の摂取熱量(1600,2100,2600,3100,3600kcal)の1週間食事メニューを開発。各食事療法期間は6週間。食事療法を変える際は2~4週間のwash-out期間を設け,その期間は自身の通常の食事をとる。参加者は1日に2杯以上の飲酒はしないように指示し,体重は開始時から2%をこえないことを目標とした。
結果 全食事療法群で血圧,LDL-C,冠動脈疾患発症予測リスクがベースライン時と比べ低下した。
タンパク質が豊富な食事群は炭水化物が豊富な食事群に比べ,収縮期血圧(SBP)は全体の降圧は1.4mmHg(p=0.002),高血圧例の降圧3.5mmHg(p=0.006),LDL-Cは3.3mg/dL(p=0.01),トリグリセリドは15.7mg/dL(p<0.001),いずれも有意に低下した。
不飽和脂肪酸が豊富な食事群も炭水化物が豊富な食事群に比べ,SBPが全体で1.3mmHg(p=0.005),高血圧例で2.9mmHg(p=0.02)低下したが,LDL-C低下には有意な効果は示さず,HDL-Cは1.1mg/dL増加し(p=0.03),トリグリセリドは9.6mg/dL低下した(p=0.02)。
炭水化物が豊富な食事群に比べタンパク質が豊富な食事群,不飽和脂肪酸が豊富な食事群では同様に冠動脈疾患の10年間発症推定リスクが低下した。
★結論★健康的な食事療法で炭水化物摂取量の一部をタンパク質あるいは一価不飽和脂肪酸に代えることにより,より降圧し,脂質値が改善し,推定心血管イベント発症リスクが低下した。
ClinicalTrials.gov identifier: NCT00051350
文献
  • [main]
  • Appel LJ et al for the OmniHeart collaborative research group: Effects of protein, monounsaturated fat, and carbohydrate intake on blood pressure and serum lipids; results of the OmniHeart randomized trial. JAMA. 2005; 294: 2455-64. PubMed

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収載年月2006.02