循環器トライアルデータベース

IDEAL
Incremental Decrease in End Points Through Aggressive Lipid Lowering

目的 心筋梗塞(MI)の既往を有する患者において,HMG-CoA reductase阻害薬atorvastatinによる強力なLDL-C低下療法が,simvastatinによる中等度の脂質低下療法に比べさらなる有効性をもたらすかを検討。
一次エンドポイントは主要な冠動脈イベント(冠動脈死,非致死的急性心筋梗塞[AMI]による入院,心停止からの蘇生)。
コメント スタチンによるランドマーク的な大規模予防試験に4Sという二次予防試験がある。はじめて,LDL低下療法にて総死亡を抑制した試験である。最近は,二次予防については,どの程度まで下げるべきかが大きなテーマとなっており,IDEALもアトルバスタチンでよりLDLコレステロールを低下させた場合の意義を検討した試験である。一次エンドポイントについては有効性を示しえなかったが,これは冠動脈死に差が認められなかったからである。最近の傾向として,二次予防については,スタチンをはじめとしてアスピリン,β遮断薬等あらゆる手を尽くして冠動脈死を予防する手立てをしている。そのために差が出てこなかったものと考えられる。その他のイベントに関しては有意に抑制していることから,LDLコレステロールを80mg/dLくらいに低下させることは安全性も含めてそれなりに意義のあるものと考えられる。今後は,医療経済的観点からの評価が要求されよう。(寺本
デザイン PROBE((Prospective, Randomized, Open, Blinded-Endpoint),多施設(デンマーク,フィンランド,アイスランド,オランダ,ノルウェー,スウェーデンの救急心臓病センターおよび私立の専門センター190施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4.8年(中央値)。登録およびランダム化期間は1999年3月~2001年3月,2005年3月終了。
対象患者 8888例。80歳以下。明確なMIの既往を有し,各国ガイドラインに基づくスタチン治療の適応例。
除外基準:スタチン治療の禁忌,低/高用量のスタチンに対する不忍容の既往,肝酵素が正常範囲上限の2倍超,妊娠/授乳中,ネフローゼ症候群,コントロール不良の糖尿病,コントロール不良の甲状腺機能低下症,トリグリセリド>600mg/dL,うっ血性心不全(NYHA心機能分類IIIb~IV度)など。
■患者背景:平均年齢( simvastatin群61.6歳, atorvastatin群61.8歳 ),男性( 80.8%, 80.9% ),血圧( 137.0/80.6mmHg, 136.7/80.1mmHg ),MI発症後1年超( 17.0%, 16.6% ),血管形成術のみ施行( 19.7%, 19.9% ),CABGのみ施行( 16.8%, 16.5% ),高血圧( 33.0%, 32.9% ),糖尿病( 12.1%, 12.0% ),simvastatin治療歴( 50.1%, 50.3% ),atorvastatin治療歴( 11.5%, 11.2% ),aspirin併用( 79.5%, 78.7% ),β遮断薬併用( 73.7%, 76.1% ),ACE阻害薬併用( 30.7%, 29.2% )。
治療法 simvastatin 20mg/日群(4449例),atorvastatin (最大推奨投与量)80mg/日群(4439例)にランダム化(run-in,washout期間なし)。
24週後に総コレステロール値が>190mg/dLの場合はsimvastatinを最大40mg/日まで増量。有害事象発生の場合はatorvastatinを40mg/日まで減量。LDL-C<39mg/dLとなった場合は試験薬投与量の減量を検討することとした。
結果 平均LDL-C値はsimvastatin群104mg/dL,atorvastatin群81mg/dL。

一次エンドポイントはsimvastatin群463例( 10.4% )vs atorvastatin群411例( 9.3% )であり( ハザード比[HR]0.89, 95%信頼区間[CI]0.78~1.01, p=0.07 ),このうち冠動脈死は178例( 4.0% ) vs 175例( 3.9% ) : HR 0.99, 95%CI 0.80~1.22 ( p=0.90 ), 非致死的AMIは321例( 7.2% ) vs 267例( 6.0% ) : HR 0.83, 95%CI 0.71~0.98( p=0.02 )であった。
二次エンドポイントである主要な心血管イベントの発生は608例( 13.7% ) vs 533例( 12.0% ) : HR 0.87, 95%CI 0.78~0.98( p=0.02 ), CHDイベント発生は1059例( 23.8% ) vs 898例( 20.2% ) : HR 0.84, 95%CI 0.76~0.91( p<0.001 ), 非心血管死は156例( 3.5% ) vs 143例( 3.2% ) : HR 0.92, 95%CI 0.73~1.15( p=0.47 ), 全死亡は374例( 8.4% ) vs 366例( 8.2% ) : HR 0.98, 95%CI 0.85~1.13( p=0.81 )であった。
simvastatin群に比べatorvastatin群では有害事象発生による投薬の中止が186例( 4.2% ) vs 426例( 9.6% ) ( p<0.001 ), 正常範囲上限の3倍超のアスパラギン酸(AST)上昇( 2例[0.04%]vs 18例[0.41%], p<0.001 ),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇( 5例[0.11%]vs 43例[0.97%], p<0.001]が有意に多かった。重篤な心筋症および横紋筋融解は両群で非常に少なかった。
★結論★MIの既往を有する患者において強力なLDL-C低下療法は,一次エンドポイントである主要な冠動脈イベントを有意に減少させなかったが,その他の複合二次エンドポイントおよび非致死的AMIのリスクを低下させた。心血管死,全死亡には両群間に差はなかった。MI患者おける強力なLDL-C低下療法は,非心血管死やその他の重篤な有害事象を増加させることなく有効であると考えられる。
Clinical Trials.goc identifier: NCT00159835
文献
  • [main]
  • Pedersen TR et al for the incremental decrease in end points through aggressive lipid lowering (IDEAL) study group: High-dose atorvastatin vs usual-dose simvastatin for secondary prevention after myocardial infarction: the IDEAL study: a randomized controlled trial. JAMA. 2005; 294: 2437-45. PubMed
  • [substudy]
  • MI既往例において,高用量atorvastatinは通常用量simvastatinよりも初発イベント以降の続発イベントも予防。
    Wei, Lin, Weissfeld法を用いたpost hoc解析。atorvastatin 80mg/日群ではsimvastatin 20~40mg/日群と比較して,二次エンドポイント(一次エンドポイント,脳卒中,血行再建術,不安定狭心症による入院,うっ血性心不全による入院,末梢動脈疾患)の続発リスクが抑制された。atorvastatinによるリスク低下は,初発17%(p<0.0001),2回目24%(p<0.0001),3回目19%(p=0.035),4回目24%(p=0.058),5回目28%(p=0.117)。初発イベント(2,546例,心血管死221例発生)のおもなイベントは血行再建術32%,非致死的MI 18%,不安定狭心症による入院14%で,この割合は3回目のイベント発生まで大きく変化しなかった。2回目の心血管イベント発生は1,048例(心血管死109例),3回目は416例(52例),4回目192例(24例),5回目93例(14例):J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 2353-7. PubMed
  • 非HDL-C(総コレステロール マイナス HDL-C),アポリポ蛋白BはLDL-Cよりも心血管イベントと関連する(TNTと合わせた結果):Circulation. 2008; 117: 3002-9. PubMed
  • アポリポ蛋白A-I,Bで調整した場合,HDL-Cが非常に高い例,HDL粒子サイズが非常に大きい例はCAD発症のリスクが上昇。
    EPIC-Norfolkと合わせた検討結果(CAD発症858例 vs 非発症例1491例)。平均HDL-C: IDEAL試験46.5mg/dL, EPIC-Norfolk 50.9mg/dL。
    IDEAL: 年齢,性,喫煙,アポリポ蛋白A-I(apoA-I)およびBで調整後,高HDL-Cは冠イベントの危険因子( 40~49mg/dLの相対リスクは1.10, 50~59mg/dL: 1.12, 60~69mg/dL: 1.25, 70~79mg/dL: 2.19, >80mg/dL: 2.49 vs <40mg/dL )。EPIC: 42.5~54.1mg/dLのオッズ比0.98, 54.1~69.6mg/dL: 1.00, 69.6~81.2mg/dL: 1.11, 81.2~96.7mg/dL: 1.47, >96.7mg/dL: 1.41 vs <42.5mg/dL )。同様の関連がEPIC-NorfolkのHDL粒子サイズでもみられた。apoA-Iとは逆相関した (van der Steeg WA et al: High-density lipoprotein cholesterol, high-density lipoprotein particle size, and apolipoprotein A-I: significance for cardiovascular risk: the IDEAL and EPIC-Norfolk studies. J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 634-42.) 。 PubMed

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収載年月2006.01
更新年月2010.02