循環器トライアルデータベース

ACCOMPLISH
Avoiding Cardiovascular Events through Combination Therapy in Patients Living with Systolic Hypertension

目的 高血圧患者における至適な併用療法はまだ確立していないが,JNC 7ガイドラインは降圧利尿薬をベースとすることを推奨している。
高リスクの高血圧患者において,ACE阻害薬benazepril+Ca拮抗薬amlodipine併用療法の心血管イベント抑制効果は,benazepril+サイアザイド系利尿薬hydrochlorothiazide(HCTZ)併用療法より優れているという仮説を検証する。

一次エンドポイントは心血管死*,心血管イベント(非致死的心筋梗塞[MI],非致死的脳卒中,狭心症による入院,突然心停止からの蘇生,血行再建術)の初発。
*心臓突然死,致死的MI,致死的脳卒中,血行再建術による死亡,うっ血性心不全死あるいはその他の心血管起因死。
コメント N Engl J Med. 2008; 359: 2417-28. へのコメント
ハイリスク高血圧症例に対して,ACE阻害薬とCa拮抗薬併用の方がACE阻害薬と降圧利尿薬の併用よりも心血管合併症予防効果の上で優れていたという結論である。この2つの組み合わせ同士の比較試験としては初めての大規模臨床試験であり,いずれの併用も臨床の場で迷うことが多いだけにその結果が期待されていたが,心血管イベント抑制の差は意外に大きく,絶対的リスク減少は2.2%,相対的減少は19.6%というものである。降圧利尿薬の降圧効果や心血管イベント抑制効果がACE阻害薬やCa拮抗薬に劣らないことはすでにALLHAT試験で実証済みであるにもかかわらず,ACE阻害薬との併用ではCa拮抗薬に劣るというのは予想外といわざるをえない。
24時間血圧の結果は今後発表されると思うが,EditorialでChobanian博士は,降圧利尿薬の違い,すなわちALLHAT試験で用いられた chlorothiazideの方が本試験で用いられたhydrochlorothiazideよりも夜間血圧の降圧効果が強いことに由来するのかもしれないと論文を引用し,いささか苦し紛れのコメントを掲載している。
同じ降圧レベルであれば,降圧利尿薬の糖代謝への悪影響が関係していることも考えられるが,サブ解析をみる限り,参入時の糖尿病の有無は結果に影響していないようである。
ただし,対象はハイリスクとはいっても心不全は除外されていること,そして血清クレアチニンで女性1.5mg/dL,男性1.7mg/dL以上の腎障害症例が参加可能になっており,降圧利尿薬の有効性が発揮されにくく,腎機能が悪化しやすい中等度の腎障害症例が両群とも18%前後含まれていること,さらに体液コントロールのためとの理由でループ利尿薬1日1回投与が可能とされていることなど降圧利尿薬に不利に作用する要因があることに注意する必要がある。今後の発表の中で両治療薬群におけるループ利尿薬の併用頻度が明らかになると思われるが,ACE阻害薬+Ca拮抗薬群にもループ利尿薬が併用されていることが結果にどの程度影響したか知りたいところである。
いずれにしてもより低い降圧目標の達成が求められている今日において,わが国ではARBとサイアザイド系降圧利尿薬との配合剤の開発ラッシュであるが,本試験の結果が降圧薬併用のあり方と配合剤開発に大きく影響しそうである。(桑島

プロトコール(N Engl J Med. 2008; 359: 2417-28.) へのコメント
これまでの多くの臨床試験で,血圧と心血管合併症の関連は,the lower the betterであることが次第に明らかにされてきたが,厳格な血圧管理を達成するためには降圧薬の効率的な併用が不可欠である。本試験は高リスクの高血圧患者にACE阻害薬/Ca拮抗薬の併用がACE阻害薬/利尿薬の併用よりも血管合併症予防に優れているという仮説をたて,それを証明することを目的として企画,開始された。スポンサーはNovartis社である。研究デザインはやはり同社がスポンサーとなったVALUE試験といくつかの点で類似している。対象が高リスク高血圧症例であること,run-in期間を設けずいきなり試験薬にランダム化していること,降圧目標値を140/90mmHg未満としていることなどである。用量調整はランダム化後3ヶ月以内に最大量まで増量することとなっている。
RAS抑制薬とCa拮抗薬の併用は,わが国の実地診療ではおそらくもっとも多用されている組み合わせと思われるが,これとRAS抑制薬と相性が良いとされるサイアザイド系利尿薬との組み合わせを比較することはきわめて臨床的意義が大きく,結果が大いに待たれるところである。しかし降圧目標値を140/90mmHgと低く設定していることから,両群とも同程度の血圧レベルに到達することで血管合併症予防効果には差がつきにくいかもしれない。ただし副作用や費用対効果では差がでる可能性があり,結果が待たれる。(桑島
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(5か国[米国,スウェーデン,ノルウェー,デンマーク,フィンランド]548施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は36か月。
実施期間は2003年10月~2008年1月。
対象患者 11,506例。60歳以上の収縮期血圧≧160mmHgあるいは降圧薬治療例で,心血管疾患,腎疾患,標的臓器障害を1つ以上有するもの(心血管疾患[冠動脈疾患,MI,血行再建術,脳卒中]既往;腎イベント[クレアチニン:女性>1.5mg/dL,男性>1.7mg/dL,蛋白尿];末梢血管疾患;左室肥大;糖尿病),55~59歳で上記2疾患以上を合併した高リスク高血圧患者。
除外基準:現在狭心症を発症しているもの(特に3か月以内の全症例);症候性心不全の既往あるいはEF<40%;;1か月以内の心筋梗塞,その他の急性冠症候群,血行再建術;3か月以内の脳卒中あるいは脳梗塞など(Am J Hypertens. 2004; 17: 793-801.)。
■患者背景:平均年齢(benazepril+amlodipine併用群68.4歳,benazepril+HCTZ併用群68.3歳):≧65歳(両群とも66.4%),≧70歳(41.1%,40.6%),血圧(145.3/80.1mmHg,145.4/80.0mmHg),白人(83.9%, 83.2%),アメリカ人(70.8%, 70.9%),腹囲(103.9cm, 103.8cm),BMI(両群とも31.0kg/m²),血糖(127.9mg/dL, 127.0mg/dL),総コレステロール(184.9mg/dL, 184.1mg/dL),脂質異常症(73.5%, 75.0%)。
治療状況:降圧薬1剤(22.8%, 22.2%);2剤(36.8%, 35.5%);3剤以上(37.4%, 39.6%),脂質低下薬(67.0%, 68.9%),β遮断薬(46.6%, 48.7%),抗血小板薬(64.6%, 64.8%)。
危険因子:既往:MI(23.3%, 23.8%);脳卒中(13.3%, 12.8%);不安定狭心症によ
る入院(11.4%, 11.6%);CABG(21.7%, 20.8%);PCI(18.4%, 11.4%),糖尿病(60.6%, 60.2%),腎機能障害(両群とも6.1%),推定糸球体濾過量<60mL/分/1.73m² (18.2%, 17.9%),ECG所見による左室肥大(13.3%, 13.2%)。
治療法 wash-out期間は設けずにランダム化した。
benazepril+amlodipine併用群(5,744例):benazepril 20mg+amlodipine 5mg/日で投与を開始し,1か月後にbenazeprilを40mgまで増量し,その後目標降圧(<140/90mmHg,糖尿病,腎機能障害合併の場合は<130/80mmHgを推奨)達成のため,amlodipineを10mgまで増量可とした。
benazepril+HCTZ併用群(5762例):benazepril 20mg+HCTZ 12.5mg/日で投与を開始,1か月後にbenazeprilを40mgまで増量し,その後目標降圧達成のため,HCTZを25mgまで増量可とした
最初の用量調整期間は3か月。他の降圧薬(Ca拮抗薬,ACE阻害薬およびARB,サイアザイド系利尿薬を除くβ遮断薬,α遮断薬,clonidine,spironolactone)を追加投与。体液コントロールのためループ系利尿薬(1日1回)投与は可とした。
結果 追跡期間は5年の予定(Am J Hypertens. 2004; 17: 793-801)であったが,登録終了から6か月後の2006年1月~2007年10月の中間報告はデータ安全モニタリング委員会に試験中止の勧告を促し,試験は予定より早く終了した。
[治療]
平均治療期間はbenazepril+amlodipine併用群30.0か月,benazepril+HCTZ併用群29.3か月,benazepril+amlodipine併用群の平均投与量はbenazepril 36.3mg/日(中央値39.4mg),amlodipine 7.7mg/日(8.9mg),benazepril+HCTZ併用群はbenazepril 36.1mg/日(39.4mg),HCTZ 19.3mg/日(22.1mg)。
1年後,試験薬最大用量にその他の降圧薬を追加投与していたのは両群とも32.3%。
[降圧]
・benazepril+amlodipine併用群が有意に降圧した。
用量調整後の平均血圧はbenazepril+amlodipine併用群131.6/73.3mmHg,benazepril+HCTZ併用群132.5/74.4mmHg。両群間の血圧差は0.9/1.1mmHg(いずれもp<0.001)。
<140/90mmHg達成率はそれぞれ75.4%, 72.4%。
[一次エンドポイント]
・benazepril+amlodipine併用群はbenazepril+HCTZ併用群より有意に抑制した。
benazepril+amlodipine併用群552例(9.6%:32.3例/1000人・年) vs benazepril+HCTZ併用群679例(11.8%:39.7例/1000人・年):benazepril+amlodipine併用群のbenazepril+HCTZ併用群と比較した絶対リスク低下は2.2%,相対リスク19.6%低下(ハザード比[HR]0.80;95%信頼区間0.72~0.90, p<0.001)。
一次エンドポイントの各構成エンドポイントのHRは,心血管死:0.80;0.62~1.03(p=0.08),全MI:0.78;0.62~0.99(p=0.04),全脳卒中:0.84;0.65~1.08(p=0.17),不安定狭心症による入院:0.75;0.50~1.10(p=0.14),血行再建術:0.86;0.74~1.00(p=0.04),心臓突然死からの蘇生:1.75;0.73~4.17(p=0.20)。
サブグループ(性別,年齢:65歳以上,70歳以上,糖尿病の有無)における一次エンドポイントの結果も同様であった。
[二次エンドポイント]
心血管死,非致死的MI,非致死的脳卒中の複合:288例(5.0%) vs 364例(6.3%):HR 0.79;0.67~0.92(p=0.002)。
[有害イベント]
死亡(4.1% vs 4.5%)を除く治療中止例は28.8% 31.2%で,最初の90日間の中止は8.5% vs 9.1%。治療中止理由で最も多かったのは検査値異常および有害イベント(17.6% vs 18.4%),有害イベントによる中止例は13.4% vs 14.3%。
有害イベントで多かったのは,めまい(20.7%, 25.4%),末梢浮腫(31.2%, 13.4%),空咳(20.5%, 21.2%)。
★結論★高リスク高血圧患者における心血管イベント抑制効果において,benazepril+amlodipine併用療法はbenazepril+HCTZ併用を凌いだ。
ClinicalTrials. gov No: NCT00170950
文献
  • [main]
  • Jamerson K et al for the ACCOMPLISH trial investigators: Benazepril plus amlodipine or hydrochlorothiazide for hypertension in high-risk patients. N Engl J Med. 2008; 359: 2417-28. PubMed
    Chobanian AV: Does it matter how hypertension is controlled? N Engl J Med. 2008; 359: 2485-8. PubMed
  • プロトコール
    Jamerson KA et al: Rationale and design of the avoiding cardiovascular events through combination therapy in patients living with systolic hypertension (ACCOMPLISH) trial; the first randomized controlled trial to compare the clinical outcome effects of first-line combination therapies in hypertension. Am J Hypertens. 2004; 17: 793-801. PubMed
  • [substudy]
  • 脈圧(PP)と降圧治療-benazepril+amlodipine群のbenazepril+hydrochlorothiazide群より優れたCVD抑制効果は,PPに依存しない。
    脈圧(PP)は動脈スティフネスの指標で,死亡を含むCVDの独立した危険因子であるが, benazepril+amlodipine併用(B+A)群のbenazepril+利尿薬hydrochlorothiazide併用(B+H)群より優れた心血管疾患(CVD)抑制効果がPPに依存するかを検討した結果(11,499例;女性39.5%):ベースラインPPにより第1三分位群(<58mmHg,平均50.3mmHg;B+A群1,888例・66.9歳,B+H群1,881例・66.4歳),第2三分位群(58~70.7mmHg, 63.9mmHg;1,924例,1,887例・両群とも68.4歳),第3三分位群(≧70.7mmHg, 82.2mmHg;1,929例,1,990例・両群とも70歳)にわけて検証。
    CVD(心血管死,非致死的心筋梗塞[MI],非致死的脳卒中)発生率はPPの上昇に伴い増加し(第1~第3三分位群:それぞれ4.4%, 5.4%, 7.2%),第3三分位群は他の2群より高かったが(p<0.01),第2 vs 第1三分位群には差がなかった。MIも同様の結果であったが,脳卒中では有意な関連はみられなかった。
    CVDリスクは,第3,第2三分位群で B+A群がB+H群より有意に低く(それぞれB+A群6.2% vs B+H群8.2%:ハザード比[HR]0.75;95%信頼区間0.60~0.95, p=0.018, 4.6% vs 6.1%:0.74;0.56~0.98, p=0.034),第1三分位群では有意差はなかった(4.2% vs 4.5%:0.91;0.67~1.23)。B+A群のCVDリスク低下にPPによる差はなかった(HRの全三分位群間比較:p=0.56):J Clin Hypertens (Greenwich). 2015; 17: 141-6. PubMed
  • benazepril+HCTZは正常体重者よりも肥満者で心血管保護効果を示したが,benazepril+amlodipineの効果はBMIの影響を受けず。
    11,482例(benazepril+HCTZ群5,745例,benazepril+amlodipine群5,737例)において,心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中の複合エンドポイントとBMIの関係を評価した結果:肥満(BMI≧30kg/m²;5,709例),過体重(≧25~<30kg/m²;4,157例),正常体重(<25kg/m²;1,616例)に層別。benazepril+HCTZ群におけるイベント発生率は正常体重者が高かったが(正常体重30.7,過体重21.9,肥満18.2/1,000人・年;全体のp=0.0034),benazepril+amlodipine群ではBMIによる差はみられなかった(それぞれ18.2, 16.9, 16.5/1,000人・年;p=0.9721)。イベント発生リスクを体格別に治療群間で比較すると,肥満患者は差を認めなかったが(ハザード比0.89;95%信頼区間0.71~1.12),過体重者と正常体重者はbenazepril+amlodipine群のほうが有意に低かった(それぞれ0.76;0.59~0.94, p=0.0369;0.57;0.39~0.84, p=0.0037):Lancet. 2013; 381: 537-45. PubMed
  • 糖尿病合併例においても,心血管イベント抑制効果はbenazepril+amlodipine併用療法がbenazepril+HCTZ併用療法より大きい。
    サブグループ:糖尿病合併例6,946例;高リスク(心血管イベントまたは脳卒中の既往)糖尿病合併例2,842例;糖尿病非合併例4,559例における事前に計画された層別解析の結果:試験期間中の達成血圧値は,benazepril+amlodipine(B+A)群(131.5/72.6mmHg)とbenazepril+HCTZ(B+H)群(132.7/73.7mmHg)で,サブグループ群間差はなかった。
    どのサブグループでも,一次エンドポイントの発生率はB+A群でB+H群に比べて有意に低かった。
    [糖尿病合併例] B+A群307/3,478例(8.8%)vs B+H群383/3,468例(11.0%):ハザード比0.79;95%信頼区間0.68~0.92(p=0.003)。個別のイベントで有意差がみられたのは血行再建術(p=0.024),血行再建術を要さない冠イベント(p=0.013)。30か月間で一次エンドポイントの発生1例を予防するためのNNTは46。
    [高リスク糖尿病合併例] 195/1,432例(13.6%)vs 244/1,410例(17.3%):0.77;0.64~0.93(p=0.007)。NNTは28。
    [糖尿病非合併例] 245/2,266例(10.8%)vs 296/2,293例(12.9%):0.82;0.69~0.97(p=0.020)。NNTは48:J Am Coll Cardiol. 2010 ;56: 77-85. PubMed
  • 慢性腎臓病(CKD)進展抑制効果はbenazepril+amlodipine併用群のほうが有意に大きい。
    ベースライン時のCKD例(1,093例:benazepril+amlodipine併用群561例,benazepril+HCTZ併用群532例)。非CKD例よりもeGFRが低く,男性,黒人が多く,高齢,≧75歳,>33.9mg/mmolのアルブミン尿が多かった。糖尿病性腎症は差はなかった。
    CKD例では非CKD例より心血管死(4.2% vs 1.9%),全死亡(8.3% vs 3.9%)が有意に多かった(いずれもp<0.0001)。
    腎転帰:CKDの進展(クレアチニン値倍増あるいは末期腎疾患[推算糸球体濾過量:eGFR<15mL/分/1.73m²]あるいは透析の必要)は,benazepril+amlodipine併用群113例(2.0%) vs benazepril+HCTZ併用群215例(3.7%):benazepril+amlodipine併用群のハザード比は0.52(95%信頼区間0.41~0.65, p<0.0001)。65歳以上(2.7%)と未満(3.1%)に有意差はなかった。糖尿病性腎症例(59.7%, 58.1%)におけるCKDの進展に治療群間差はみられなかった(4.8%, 5.5%)。
    2.9年後のeGFRの低下はbenazepril+amlodipine併用群のほうが小さく(-0.88mL/分/1.73m² vs -4.22mL/分/1.73m²),CKDの進展+全死亡も同群のほうが少なかった(6.0% vs 8.1%:0.73;0.64~0.84, p<0.0001)。
    CKD例で最も多くみられた有害イベントは末梢浮腫(benazepril+amlodipine併用群33.7% vs benazepril+HCTZ併用群16.0%;p<0.0001)で,血管浮腫は1.6% vs 0.4%。非CKD例で多かったのは末梢浮腫(31.0% vs 13.1%;p<0.0001),benazepril+HCTZ併用群のほうが多かったのはめまい(20.3% vs 25.5%;p<0.0001),空咳(20.4%, 21.6%),低血圧(2.3%, 3.4%),低カリウム血症(0.1%, 0.3%;p=0.003):Lancet. 2010; 375: 1173–81. PubMed

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収載年月2006.01
更新年月2015.01