循環器トライアルデータベース

TAXUS V

目的 従来の試験より複雑度がより高い病変において,slow-release,ポリマーベースの抗腫瘍薬paclitaxel溶出ステントの安全性と有効性をベアメタルステントと比較。
一次エンドポイントは9か月間の虚血による標的血管の血行再建術再施行。
コメント 世界中で毎月16万の薬剤溶出ステント(DES)が使用されている。しかし,これまでのDESのエビデンスは比較的単純な病変に限られており,現在ステントが使用されている例の55%以上は過去の研究の対象外の症例である。本研究ではreal worldにより近い病変として,これまで対象として確立されていない細い血管病変(2.25mm,ステント使用の有用性が明らかではない),太い血管病変(4mm,bare metal stent: BMSでも十分かもしれない),長い血管病変(複数ステント使用,周術期の合併症が多く有用性が低いかもしれない)に対するDESの臨床効果を検討した。結果は,これらの病変に対して総じて有意にTVR,TLR,再狭窄率を低下させている。
 本研究はこれまでの研究の中でも最も細い病変を対象にしており,再狭窄率は有意に低下しているがそれでも31%の例に認められ,TVRは症例数が少ないためか有意には低下させていない。予定されている5年間の観察結果が興味深い。太い血管病変ではBMSでもTVR,TLR,再狭窄率は低いので,DESが必要か否かは費用対効果の問題である。
 本研究で最も注目すべきは複数ステントを要する長い血管病変に対する効果である。DESは側枝への影響がより大きく,non-Q波梗塞の発症が有意に高かった。理由としては,BMSよりstrutsがより厚いこと,一過性の血栓形成・沈着が多いこと,パクリタキセルによりspasmが生じること,などが考えられるが,現時点では推測の域を出ない。死亡率やステント内血栓の頻度はBMSと同様で,TLR,TVR,再狭窄率は有意に低下しているので,長い病変長においてもDESは有用と考えられる。しかし,再狭窄率がいまだ27%と高いこと,周術期に生じた小梗塞の影響が明らかになるには長期間の観察が必要なことが課題である。さらに本研究ではB2/C病変が78%を占めているので,このサブグループの結果も知りたいものである。(星田
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(米国の66施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は5年。ランダム化期間は2003年2月27日~'04年3月29日。
対象患者 1156例。18歳以上;安定/不安定狭心症;native冠動脈の新規1枝病変へのPCI施行;標的病変が血管造影上で肉眼による参照血管径2.25~4.0mm;病変長10~46mm。
除外基準:標的血管に対する抗再狭窄薬剤溶出ステントまたは血管内近接照射療法の既往/予定;72時間以内の心筋梗塞(MI)または正常値上限の2倍超のCK-MB値上昇;EF<25%;6か月以内の脳卒中;9か月以内のCABG予定;出血傾向,aspirin, thienopyridine, paclitaxel,ステンレススティールの禁忌あるいはアレルギー,またはヨウ化造影剤のアナフィラキシー;12か月以内の化学療法または9か月以内のpaclitaxel, rapamycin, colchicine使用予定;血清クレアチニン>2.0mg/dL,白血球数<3.5×109/L,血小板数<100,000または>750,000/mm³;左主幹部/入口病変;血管あるいは病変の過度の石灰化,蛇行,屈曲;分岐部疾患;標的病変の閉塞あるいは血栓;アテレクトミーの予定など。
■患者背景:平均年齢(paclitaxel溶出ステント群62.9歳,ベアメタルステント群62.8歳),男性(70.2%, 68.7%),薬物療法を要する糖尿病(31.7%, 29.9%),高血圧(76.4%, 73.6%),高脂血症(72.3%, 73.9%),MI既往(31.4%, 26.3%),不安定狭心症(31.5%, 29.9%),ACC/AHA病変分類B2(38.6%, 42.3%),C(37.0%, 37.6%),病変長(17.3mm, 17.2mm),平均参照血管径(2.68mm, 2.69mm),平均狭窄径(67.9%, 68.7%)。
治療法 paclitaxel溶出ステント群(577例),ベアメタルステント群(579例)にランダム化。
薬物療法を要する糖尿病の有無,病変長(<18または≧18mm)により層別化。ステント(ポリマーベースのpaclitaxel溶出TAXUSステントまたはベアメタルExpressステント。Boston Scientific社)は8~32mm長,2.25~4.0mm径のものを使用。aspirin 325mg/日をステント植込み前,植込み後無期限に,手技の6時間以上前にclopidogrelを300mgで投与を開始し,75mg/日を6か月以上投与し,抗血栓薬,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の使用および後拡張の実施は術者にまかせた。追跡血管造影を9か月後に行った。
結果 1病変あたりの植込みステントは平均1.38(平均長28.4mm)。解析病変数は1156例,うち複雑病変または以前の試験の対象外であった病変は664例(57.4%)。2.25mmステントの使用は18%,4.0mmステントは17%,複数ステントの使用は33%であった。9か月後の臨床追跡例は1127例(97.5%),複雑病変または以前の試験の対象外であった病変例で648例(97.6%),追跡血管造影は各990例(85.6%),582例(87.7%)。
一次エンドポイントはpaclitaxel溶出ステント群ではベアメタルステント群に比べ,標的血管は全体で12.1% vs 17.3%(p=0.02),複雑病変または以前の試験の対象外であった病変例でも13.9% vs 21.2%(p=0.02)。標的病変で8.6% vs 15.7%(p<0.001),複雑病変または以前の試験の対象外であった病変例では9.9% vs 19.0%(p=0.001)でともに有意に低かった。
またpaclitaxel溶出ステント群ではベアメタルステント群に比べ,血管造影上の再狭窄の発生率が有意に低かった(18.9% vs 33.9%,p<0.001)。2.25mmステント例では31.2% vs 49.4%(p=0.01),4.0mmステントは3.5% vs 14.4%(p=0.02),複数ステント例は27.2% vs 57.8%(p<0.001)。心臓死/心筋梗塞は5.7% vs 5.5%,ステント血栓は両群とも0.7%で同様であった。
★結論★これまでの試験よりも複雑な病変において,paclitaxel溶出ステントはベアメタルステントに比べ有用で臨床上および血管造影上の再狭窄を抑制した。
文献
  • [main]
  • Stone GW et al for the TAXUS V investigators: Comparison of a polymer-based paclitaxel-eluting stent with a bare metal stent in patients with complex coronary artery disease: a randomized controlled trial. JAMA. 2005; 294: 1215-23. PubMed

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収載年月2005.12