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ULSAM
Uppsala Longitudinal Study of Adult Men

目的 心血管疾患の危険因子を同定するためにスウェーデン・ウプサラで実施されているcommunity-basedの観察研究。
コメント 糖尿病が慢性心不全の危険因子であることはフラミンガム心臓研究でも示されている。一方,心不全になると,インスリン抵抗性が増強することも報告されている。しかし,インスリン抵抗性が慢性心不全の予測因子になるか否かは明らかになっていなかった。本研究はコホート研究でこの可能性を初めて示したといえる。肥満も慢性心不全の増悪因子であるが,インスリン抵抗性との関連を示唆しており,今後そのメカニズムの解明が待たれるところである。(
デザイン 観察研究。
期間 1970年開始。
参加者 1970~'73年の調査時に50歳だった男性2322例を登録。
調査方法 検査は健康診断,採血,仰臥位血圧測定,経口ブドウ糖負荷試験(OGTT),インスリン値測定,脂質値測定などとした。
結果

[主な結果]
  • MetSの中年男性はBMIにかかわりなく心血管イベント,総死亡リスクが増大。過体重・肥満-非MetS例もリスク上昇。
    50歳時に非糖尿病であった1,758例:BMI-メタボリックシンドローム(MetS)カテゴリー;正常体重(BMI<25kg/m2)-非MetS(891例),正常体重-MetS(64例),過体重(25~30kg/m2)-非MetS(582例),過体重-MetS(125例),肥満(>30kg/m2)-非MetS(30例),肥満-MetS(66例)。
    30年(中央値)追跡した結果:788例が死亡,681例が心血管疾患(心血管死,心筋梗塞・脳卒中・心不全による入院の複合)を発症。年齢,喫煙,LDL-Cで調整後,正常体重-非MetS例と比べて心血管リスクが次のように増大:正常体重-MetS(ハザード比1.63;95%信頼区間1.11~2.37),過体重-非MetS(1.52;1.28~1.80),過体重-MetS(1.74;1.32~2.30),肥満-非MetS(1.95;1.14~3.34),肥満-MetS(2.55;1.81~3.58)。総死亡に関してもBMI-MetSカテゴリーが同様パターンで予測した(Arnlöv J et al: Impact of body mass index and the metabolic syndrome on the risk of cardiovascular disease and death in middle-aged men. Circulation. 2010; 121: 230-6.)。 PubMed
  • 生化学マーカー(トロポニンI,N-BNP,シスタチンC,CRP)を危険因子に加えると全死亡,心血管死リスクの層別が改善。
    追跡期間中央値10年でバイオマーカーを測定した1135例(平均年齢71歳)のうち315例が死亡し(3.0例/100人・年),心血管死は136例(1.3例/100人・年)であった。ベースライン時に心血管疾患を有していなかった例の死亡は149例(2.4例/100人・年),心血管死54例(0.9例/100人・年)。
    危険因子(年齢,収縮期血圧,降圧治療の有無,総コレステロール,HDL-C,脂質低下治療の有無,糖尿病の有無,喫煙,BMI)で補正後,マーカー(トロポニンI,N-terminal pro-B-type natriuretic peptide[N末端プロBNP:N-BNP],シスタチンC[腎機能マーカー],CRP)は心血管死を有意に予測した。上記4マーカーを危険因子モデルに組み込んだ心血管死のC統計量は,危険因子+4マーカー;0.766 vs 危険因子のみ(マーカーなし);0.664(p<0.001),ベースライン時の非心血管疾患例(661例)では0.748 vs 0.688(p=0.03)(Zethelius B et al: Use of multiple biomarkers to improve the prediction of death from cardiovascular causes. N Engl J Med. 2008; 358: 2107-16.)。 PubMed
  • 開始から20年後の1991~'95年に再調査した70歳1681例のうち1221例(73%)を2002年末まで追跡。24時間自由行動下血圧を測定し,うっ血性心不全(CHF)および心臓弁膜症の既往,心電図上の左室肥大を除外した951例での検討:追跡期間9.1年(中央値)のCHFの発症は70例(8.6例/1000人・年)。降圧治療,危険因子(心筋梗塞,糖尿病,喫煙,BMI,コレステロール値)で補正すると,夜間拡張期血圧(DBP)の1mmHg上昇のCHFハザード比(HR)は1.26(95%信頼区間[CI]1.02~1.55),non-dipping(夜間/日中血圧比≧1)のHRは2.29(95%CI 1.16~4.52)。外来血圧で補正後もnon-dippingはCHFの有意な予測因子であった。ベースライン時あるいは追跡時の急性心筋梗塞を除外した後も夜間DBP,non-dippingは依然として有意な予測因子であった★結論★CHFの予測因子として夜間血圧は外来血圧,CHFの危険因子を凌ぐ可能性がある(Ingelsson E et al: Diurnal blood pressure pattern and risk of congestive heart failure. JAMA. 2006; 295: 2859-66.)。 PubMed
  • 1991年8月~'95年5月の再調査時に70歳だった1203例での検討:ベースライン時に心血管疾患を有していなかった男性において,心臓トロポニンIは死亡および冠動脈疾患初発の予測因子である(Zethelius B et al: Troponin I as a predictor of coronary heart disease and mortality in 70-year-old men; a community-based cohort study. Circulation. 2006; 113: 1071-8.)。 PubMed
  • インスリン抵抗性がうっ血性心不全(CHF)を予測するか,また肥満とCHFの関連を検討:1990~'95年に再調査が可能であった70歳以上1681例のうち1221例が参加。うっ血性心不全既往の20例および心臓弁膜症14例を除いた1187例が対象。ベースライン時に糖尿病であった126例を除いた1061例,ベースライン時にBMIが30以上であった153例を除いた1034例,およびBMI≧25の754例を除いた433例で検討。■参加者背景:心筋梗塞既往(糖尿病11.1%・非糖尿病6.9%,肥満11.8%・非肥満6.7%),高血圧(85.7%・73.0%, 90.2%・72.1%),ECG上の左室肥大(10.7%・6.7%, 7.5%・7.0%),コレステロール(222.8mg/dL・224.7mg/dL・223.6mg/dL, 224.7mg/dL),空腹時血糖値(163.1mg/dL・96.8mg/dL, 113.3mg/dL・102.3mg/dL),2時間OGTT値(307.7mg/dL・130.6mg/dL, 177.5mg/dL・145.0mg/dL),空腹時インスリン(83.3pmol/L・48.8pmol/L, 83.1pmol/L・47.8pmol/L),空腹時プロインスリン値(19.9pmol/L・7.1pmol/L, 14.3pmol/L・7.6pmol/L),BMI(28.5kg/m2・26.0kg/m2, 32.4kg/m2・25.4kg/m2),胴囲(101.3cm・94.0cm, 110.3cm・92.5cm)。
    追跡期間8.9年(中央値)でCHF発症は104例で,リスクは10.5例/1000人・年であった。
    危険因子で補正後の心不全ハザード比は,MI既往が3.04(95%信頼区間1.76~5.25),高血圧2.88(1.43~5.79),糖尿病1.42(0.78~2.58),心電図上の左室肥大1.98(1.10~3.56),喫煙2.23(1.42~3.52),2時間OGTT 1.44(1.08~1.93),空腹時プロインスリン値1.29(1.02~1.64),BMI 1.35(1.11~1.65),胴囲1.36(1.10~1.69)。一方で,グルコース・クランプ法におけるブドウ糖処理速度(clamp glucose disposal rate)のハザード比は0.66(0.51~0.86)であった。ブドウ糖処理速度はCHFの強い予測因子である★結論★インスリン抵抗性は危険因子とは独立してCHFを予測する。肥満とCHFの関連にはインスリン抵抗性が大きく関与する可能性がある(Ingelsson E et al: Insulin resistance and risk of congestive heart failure. JAMA. 2005; 294: 334-41.)。 PubMed
  • 新しいマーカーであるプロインスリン,apo蛋白B/apo蛋白A1比(apoB/apoA1)を加えて算出したULSAMリスク予測スコアを追跡期間28.7年1108例で評価;リスク予測スコアはULSAMコホートの半数(training data set; 1921年,'22年,'24年後半生まれ・心筋梗塞[MI]135例)で収縮期血圧(SBP),喫煙,MIの家族歴,プロインスリン,apoB/apoA1,血糖値,脂質値,糖尿病などから算定。スコアを算定しなかった残りの半数(prediction data set; 1920年,'23年,'24年前半生まれ・MI 116例。ULSAMリスクスコアの有用性を確認し,FraminghamおよびPROCAMスコアと比較)でのULSAMリスクスコアのMI予測度は高い(ハザード比1.77, p<0.0001)。プロインスリン,apoB/apoA1,SBP,喫煙,MIの家族歴が全MIの独立した有意な予測因子であった。同スコアの予測能はFraminghamおよびPROCAMスコアよりもやや良好であった(Dunder K et al: Evaluation of a scoring scheme, including proinsulin and the apolipoprotein B/apolipoprotein A1 ratio, for the risk of acute coronary events in middle-aged men; Uppsala longitudinal study of adult men (ULSAM). Am Heart J. 2004; 148: 596-601.)。 PubMed

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収載年月2006.01
更新年月2010.07