循環器トライアルデータベース

4D
German Diabetes and Dialysis Study

目的 血液透析を受けている2型糖尿病患者において,HMG-CoA reductase阻害薬atorvastatinの心血管イベントに対する有効性を検討した。
一次エンドポイントは,心臓起因の死亡(致死的心筋梗塞[MI],突然死,うっ血性心不全[CHF]死,冠動脈疾患[CHD]治療のためのインターベンション施行中または施行後28日以内の死亡,そのほか全CHD死)+非致死的MI+脳卒中。
コメント 慢性腎障害患者(CRD)では心血管病の発症率が高く,本研究でも虚血性心疾患は年8.2%の発症率であり,4Sという二次予防の試験のプラセボ群では6.6%であったということから,二次予防より高いということができる。これまでの後ろ向きの観察研究ではCRD患者に対するスタチン投与が虚血性心疾患を36%抑制するという報告があったが,本研究のような前向き試験では,スタチンの投与により心血管病予防は証明できなかったということは,いかに前向きの試験が重要かを示すものである。また,2型糖尿病に対する予防試験であるCARDSでは心血管病の予防効果が十分にあったことから,糖尿病性腎症が完成する前の段階で介入することが重要であることを示したものといえる。また,このことはCRDではLDL-Cが関与する病変以外のリスクが絡んでいることを推定させるものであり,別のアプローチを考える必要があるのかもしれない。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(ドイツ),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4年(中央値)。ランダム化は1998年3月~2002年10月,追跡終了は2004年3月。
対象患者 1255例。18~80歳の維持血液透析(2年未満)を受けている2型糖尿病患者。
除外基準:空腹時LDL-C<80mg/dLまたは>190mg/dL。トリグリセリド>1000mg/dL;肝機能値が正常上限の3倍以上または症候性胆汁うっ滞患者と同等に上昇例;造血障害または末期腎疾患に関連しない全身性疾患例;3か月以内の血管インターベンション施行例,CHF,MI;腎移植不成功例;治療抵抗性高血圧(収縮期血圧>200mmHgまたは拡張期血圧>110mmHg)。
■患者背景:平均年齢65.7歳,女性(atorvastatin群46.2%,プラセボ群45.9%),糖尿病罹病期間(17.5年,18.7年),透析期間(8.2か月,8.4か月),BMI(27.6,27.5),血圧(146/76mmHg,145/76mmHg),総コレステロール(218mg/dL,220mg/dL),LDL-C(125mg/dL,127mg/dL),HDL-C(両群とも36mg/dL)。既往:MI(17.9%,17.3%);MI,CABGあるいはPTCA,冠動脈疾患(30.7%,28.1%);CHF(35.9%,34.9%);末梢血管疾患(45.7%,43.6%)。降圧治療状況:ACE阻害薬(49%,47%);ARB(両群とも12%);β遮断薬(37%,38%);Ca拮抗薬(41%,40%);抗血小板薬(54%,50%)。
治療法 脂質低下薬は投与を中止し,プラセボ投与のrun-in期間(4週)後,患者をatorvastatin群(619例):20mg/日を投与し,LDL-Cが<50mg/dLに低下した場合は10mg/日に減量,プラセボ群(636例)にランダム化。
結果 4週後のLDL-C中央値はatorvastatin群で121mg/dL→ 72mg/dLと42%低下したが,プラセボ群は125mg/dL→ 120mg/dLと1.3%の低下でほとんど変わらなかった。
一次エンドポイントは469例(37%)で,うちatorvastatin群226例(37%),プラセボ群243例(38%)であった(相対リスク[RR]0.92,95%信頼区間[CI ]0.77~1.10,p=0.37)。一次エンドポイントを構成する各アウトカムにおいてもatorvastatin群の有意な抑制は認められず,致死的脳卒中はatorvastatin群で増加した(27例[4%] vs 13例[2%],RR 2.03,95%CI 1.05~3.93)。
二次エンドポイントの検討では,全心イベントはatorvastatin群で減少したが(205例[33%] vs 246例[39%],RR 0.82,95% CI 0.68~0.99,p=0.03),全死亡(297例[48%] vs 320例[50%],RR 0.93,95%CI 0.79~1.08,p=0.33)および全脳血管イベント(79例[13%] vs 70例[11%],RR 1.12,95%CI 0.81~1.55,p=0.49)は同群の有効性は認められなかった。
★結論★維持血液透析を受けている2型糖尿病患者において,atorvastatin投与による心血管死+非致死的MI+脳卒中の有意な抑制は認められなかった。
文献
  • [main]
  • Wanner C et al for the German diabetes and dialysis study investigators: Atorvastatin in patients with type 2 diabetes mellitus undergoing hemodialysis. N Engl J Med. 2005; 353: 238-48. PubMed
  • [substudy]
  • 糖尿病血液透析患者において血糖コントロール不良は突然死と強く関連したが,心筋梗塞とは関連せず。
    HbA1c値(≦6%[404例],6~8%[664例],>8%[187例])と心血管イベントとの関連性を検証:>8%例の突然死リスクは≦6%例の2倍以上(ハザード比2.14,95%信頼区間1.33~3.44)。HbA1c値が1%上昇するごとに突然死リスクは有意に18%増加(1.18,1.05~1.32),脳卒中および心不全死のリスクは増加傾向を示したが,心筋梗塞との関連はみられなかった。心血管イベントおよび死亡リスクはともに8%増加したが,これには突然死リスクの増加が大きく寄与していた:Circulation. 2009; 120: 2421-8. PubMed

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収載年月2005.10
更新年月2010.01