循環器トライアルデータベース

Vascular Basis Study
Vascular Basis for the Treatment of Myocardial Ischemia Study

目的 安定冠動脈疾患患者において,HMG-CoA reductase阻害薬atorvastatin単独または抗酸化ビタミンCおよびEとの併用による強力なLDL-Cの低下が,低用量のlovastatinと食事療法による中等度のLDL-C低下に比べ心筋虚血を減少させるかを検討。
一次エンドポイントは(1)12か月後の虚血エピソードの数と持続時間の変化,(2)12か月後の1.0mmのST低下までの時間の変化,(3)12か月後の上腕動脈の血流依存性血管拡張(flow-mediated dilation:FMD)の変化。
コメント 心筋虚血の評価をホルター心電図とトレッドミル運動負荷試験で行っている。冠動脈疾患ありの患者では,LDL-Cを100mg/dL未満にすることが勧告されており(動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年度版;日本動脈硬化学会),今回の結果は,心筋虚血の評価法と12か月という試験期間が十分妥当なものであるか議論が必要と思われる。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設。
期間 試験期間は12か月。
対象患者 300例。85歳未満。空腹時総コレステロール180~250mg/dL,冠動脈疾患の客観的証拠,運動誘発性ST低下≧1.0mm,48時間ホルター心電図(ambulatory ECG: AECG)モニタリング中の≧1.0mmの可逆的ST低下1回以上。
除外基準:1か月以内の急性冠症候群,6か月以内の血行再建術,NYHA心機能分類IV度のうっ血性心不全,重度の心臓弁膜症,2か月以内の喫煙,安静時12誘導心電図で虚血の検出不能のもの。
■患者背景:男性(atorvastatin群86%,atorvastatin+ビタミンC/E群84%,対照群88%),既往:狭心症(67%,61%,70%),心筋梗塞(42%,40%,36%),PCI(63%,67%,63%),治療を要する高血圧(65%,66%,60%),高脂血症(50%,54%,46%),2型糖尿病(71%,45%,79%)。
治療法 全例でNCEP step 2の食事療法を実施し,atorvastatin群(96例):80mg/日またはLDL-C<80mg/dLを目標として投与,atorvastatin+ビタミンC/E群(101例):atorvastatin群と同様のLDL-C強力低下を達成するような投与に加えビタミンC 1000mg/日およびE(dl-αトコフェリル酢酸800mg/日)を投与,対照群(103例):低用量lovastatinを投与。LDL-C<130mg/dLを目標とする。
ベースライン時,ランダム化後6,12か月に長時間作用型抗狭心症薬投与を48時間以上中止し,トレッドミル運動負荷試験,上腕動脈のFMD測定,週日の48時間 AECGモニタリングを行った後,投与再開。4週ごとに空腹時血中脂質を測定し,必要に応じて脂質低下薬を増量。
結果 12か月後のLDL-Cはatorvastatin群,atorvastatin+ビタミンC/E群で153mg/dL→ 83mg/dL,対照群で147mg/dL→ 120mg/dLと各群でベースライン時に比べ有意に低下した(各群p<0.0001)。
12か月後の48時間AECGモニタリングにおける平均虚血発生数はベースライン時に比べ各群で31~61%減少し(各p<0.001,群間でp=0.15),平均虚血持続時間もベースライン時に対し各群で26~62%減少したが(各p<0.001,群間でp=0.06),心拍数には有意な変化がなかった。LDL-C低下とAECGにおける虚血の減少に相関関係はなかった。6,12か月後のトレッドミル運動負荷試験における1.0mmのST低下までの時間は各群で有意に延長したが,総運動時間,最大ST低下の合計の平均には改善がみられなかった。6,12か月後のFMDにはベースライン時に対して有意な変化がなかった。6,12か月後の狭心症の頻度は各群で同様に低下した。
★結論★atorvastatin単独または抗酸化ビタミンとの併用によりLDL-C値を80mg/dLまで低下させる強力な脂質低下療法は,食事療法と低用量lovastatinによりLDL-C値を<130mg/dLに低下させる中等度の脂質低下療法に比べ,AECGにおける虚血,虚血発生までの運動時間,狭心症の頻度について追加的な利益をもたらさない。
文献
  • [main]
  • Stone PH et al for the vascular basis study group: Effect of intensive lipid lowering, with or without antioxidant vitamins, compared with moderate lipid lowering on myocardial ischemia in patients with stable coronary artery disease; the vascular basis for the treatment of myocardial ischemia study. Circulation. 2005; 111: 1747-55. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2005.10