循環器トライアルデータベース

On-TIME
Ongoing Tirofiban in Myocardial Infarction Evaluation Trial

目的 急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者でprimary PCI例において,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬tirofibanの前投与が梗塞責任血管(IRV)の再灌流に及ぼす影響を,投与時期(早期:入院前/後期:入院後)で比較する。
一次エンドポイントは初回の血管造影におけるIRVのTIMI grade 3の灌流。
コメント STEMIにおいてGP IIb/IIIa受容体拮抗薬がIRVの再灌流を促し,primary PCIの臨床成績を改善することは多くのstudyで支持されている。しかし投与のタイミングに関しては結論が出ていない。本トライアルではPCI前のTIMI IIIへの改善に有意差はなかったものの,再灌流(TIMI II/III)・心筋 blushにおいては早期群が優っていた。ところがPCIによってその優位性はリセットされ,血管造影所見に群間差は認められず,短~中期予後にも影響を与えることはなかった。tirofibanやabciximabによる同様のstudyを検討したメタアナリシス(JAMA. 2004; 292: 362-6)でも,TIMI III血流(20.3% vs 12.2%),再灌流(TIMI II/III;41.7% vs 29.8%)は早期群で有意に改善するも,予後(4.7% vs 3.4%)には差が出なかった。本トライアルでは高度の心不全や心原性ショックが除外されており,重症例に対する早期投与の有効性は明らかではない。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(オランダ12施設,イタリア1施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は1年。ランダム化期間は2001年6月~'02年11月。
対象患者 507例。30分を超える胸痛,心電図の2つの連続誘導で>0.2mV(前壁MI)あるいは>0.1mV(非前壁MI)のST上昇,発症から6時間以内の血管形成術が可能なもの。
除外基準:81歳以上,50歳未満の女性,24時間以内の血栓溶解療法,7日以内のwarfarin/acenocoumarol投与例,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の禁忌,重度の心不全/心原性ショック(Killip class III~IV),血液透析中。
■患者背景:年齢(前期投与群63歳,後期投与群61歳),男性(79%,80%),糖尿病(10%,11%),高血圧(27%,30%),喫煙(62%,68%),前壁MI(44%,47%),多枝疾患(58%,53%)。IRV;右冠動脈(39%,41%);回旋枝(17%,12%),左前下行枝(42%,45%)。
治療法 早期投与群(251例):1回目tirofiban,2回目プラセボ,または後期投与群(256例):1回目プラセボ,2回目tirofiban投与にランダム化。
全例に搬送前に未分画heprin 5000IUをボーラス静注およびaspirin 250mgを静注し,救急車または搬送先病院にて1回目の試験薬投与として10μg/kgボーラス静注および0.15μg/kg/分を維持点滴。PCIセンター到着後,IRVのTIMI灌流評価のための血管造影を行い,手技前に2回目の試験薬ボーラス静注後,全例オープンラベルでtirofiban 0.15μg/kg/分を24時間維持点滴。PCI後に全例にclopidogrelを300mgで投与を開始し,75mg/日を1か月,aspirin,β遮断薬,スタチン,ACE阻害薬による治療を実施。
結果 搬送先病院を経てPCIセンターに到着した患者は258例(51%),救急車内で診断とランダム化が行われた患者は209例(41%)。
早期群におけるtirofiban前投与は後期群に比べ中央値で59分(11~178分)早く行われた。初回の血管造影時のTIMI grade 3の灌流は早期群19%(46/243例)vs 後期群15%(36/244例)でp=0.22,TIMI grade 2~3の灌流は43% vs 34%(p=0.04),冠動脈内血栓は25% vs 32%(p=0.06),血栓像あるいは急性閉塞像が60% vs 73%(p=0.002),心筋の染まり方を分類する心筋 blush grade(myocardial blush grade:MBG)2~3は搬送中のtirofiban前投与例で30% vs 22%(p=0.04)であった。PCI後のTIMI grade 3,MBGに群間差はなかった。
死亡率は30日後に3.7% vs 0.8%(p=0.03),1年後に4.5% vs 3.7%(p=0.66)で,死亡+MI再発は両群とも7.0%であった(p=0.99)。出血に群間差はなく,tirofiban治療中の頭蓋内出血は発生しなかった。
★結論★早期のtirofiban投与開始はカテーテル室到着後の投与開始に比べ,PCI前のIRVのTIMI grade 3の灌流を有意に改善することはなかった。PCI前の開存率(TIMI grade 2~3),血栓/ fresh occlusion,IRVの心筋灌流には改善がみられたものの,PCI後の血管造影上,臨床上の転帰についての有用性はみられなかった。
文献
  • [main]
  • van't Hof AW et al on behalf of the on-time study group: Facilitation of primary coronary angioplasty by early start of a glycoprotein 2b/3a inhibitor; results of the ongoing tirofiban in myocardial infarction evaluation (On-TIME) trial. Eur Heart J. 2004; 25: 837-46. PubMed
  • [substudy]
  • 入院時に正常血糖群(<140mg/dL・138例),高血糖群(≧140mg/dL・322例)に分類し,血糖値がPCI前のTIMI灌流に関連するかを検討。高血糖群ではPCI前のTIMI grade 3の達成度が低く(12% vs 28%,p<0.001),ベースライン時の患者背景による調整後,高血糖がPCI前の再灌流不良の強力な独立予測因子であることが示された(オッズ比2.6,95%信頼区間1.5~4.5):J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 999-1002. PubMed

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収載年月2005.10