循環器トライアルデータベース

VALISH
Valsartan in Elderly Isolated Systolic Hypertension

目的 高齢収縮期高血圧患者の降圧目標を明らかにすべく,異なる降圧目標(厳格降圧:<140mmHg,緩徐降圧:140~149mmHg)でのARB valsartan投与による心血管イベントの発生率を比較。
一次エンドポイントは複合心血管イベント(突然死,致死的・非致死的脳卒中,致死的・非致死的心筋梗塞[MI],心不全死,その他の心血管死,心血管疾患による予定外の入院,腎障害[血清クレアチニン値が2倍以上に上昇かつ>2mg/dL,または透析導入])。
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded endpoint),多施設(日本の461施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は2.85年(中央値3.07年)。
登録期間は2004年2月~’05年8月。追跡終了は2008年3月あるいは2.5年以上追跡。
対象患者 3,079例。70~84歳の収縮期高血圧*患者。
* 座位収縮期血圧(SBP)>160mmHgかつ座位拡張期血圧(DBP)<90mmHg
除外基準(プロトコール:Hypertens Res. 2004; 27: 657-61):二次性高血圧または悪性高血圧;座位SBP≧200mmHg;座位DBP≧90mmHg;6か月以内における脳血管障害またはMIの既往;過去6か月以内の冠動脈形成術歴または今後6か月以内の施行予定;重度心不全(NYHA心機能分類≧III度);重度の大動脈狭窄または弁膜症;心房細動または心房粗動または重篤な不整脈;腎機能障害(血清クレアチニン値≧2mg/dL);重篤な肝機能障害など。
■患者背景:平均年齢76.1歳,女性(厳格降圧群62.3%,緩徐降圧群62.5%),BMI(23.5kg/m², 23.4kg/m²),心拍数(72.4拍/分,71.9拍/分)。
既往;脳卒中(6.4%, 6.7%),虚血性心疾患(5.2%, 4.7%),心不全(1.6%, 1.8%),腎機能障害(1.2%, 1.6%);危険因子:喫煙(21.0%, 17.4%;p=0.011),糖尿病(13.7%, 12.3%),脂質異常症(38.5%, 36.6%)。
治療状況:降圧薬治療(49.1%, 50.8%):Ca拮抗薬(31.7%, 33.3%);ARB(12.4%, 13.0%);ACE阻害薬(7.8%, 8.0%);利尿薬(3.9%, 4.7%);β遮断薬(4.5%, 3.9%),その他の薬物治療(両群とも52.1%):高コレステロール血症治療薬(22.5%, 23.4%);糖尿病治療薬(10.0%, 8.6%);抗血小板薬(9.1%, 10.1%);硝酸薬(両群とも2.3%);抗不整脈薬(2.2%, 1.9%);その他(29.4%, 28.8%)。
治療法 厳格降圧群(1,545例):降圧目標;SBP<140mmHg,緩徐降圧群(1,534例):140~<150mmHg,にランダム化。
全例にvalsartan 40~80mg/日を投与。1~2か月後に降圧目標を達成できない場合は160mg/日まで増量。十分な降圧効果が得られない場合は,さらに低用量利尿薬やCa拮抗薬などの他の降圧薬(ARBを除く)を併用。
結果 [降圧治療]
追跡終了時のvalsartan投与量:厳格降圧群91.2mg/日,緩徐降圧群88.1mg/日(p=0.02)。
valsartan単独投与例:それぞれ56.1%, 57.6%。
併用治療例:43.9%, 42.4%:Ca拮抗薬(37.1%, 36.4%);利尿薬(13.0%, 11.9%);β遮断薬(6.0%, 5.0%);ACE阻害薬(2.1%, 2.5%);その他(5.8%, 5.5%)。
併用治療例(試験終了時マイナスベースライン時):Ca拮抗薬(5.4%, 3.1%:p=0.002);利尿薬(9.1%, 7.2%);β遮断薬(1.4%, 1.0%);ACE阻害薬(-5.7%, -5.5%);その他(3.2%, 3.8%)。
終了時の併用薬剤数(valsartanを含む)は,両群とも1.6剤。
[血圧の変化]
両群とも降圧は良好であったが,36か月後は厳格降圧群が緩徐降圧群より有意に降圧した。両群間差は5.6/1.7mmHg(SBP, DBPともp<0.001)。
厳格降圧群:ベースライン時169.5/81.7mmHg→ 36か月後136.6/74.8mmHg
緩徐降圧群:169.6/81.2mmHg→ 142.0/76.5mmHg
[一次エンドポイント:複合心血管イベント]
両群間に有意差は認められなかった。
8,765.3人・年(厳格降圧群4,436.6人・年,緩徐降圧群4,338.7人・年)の追跡で,厳格降圧群:10.6例/1,000人・年 vs 緩徐降圧群12.0例/1,000人・年:ハザード比[HR]0.89;95%信頼区間0.60~1.34(p=0.38)。
あらかじめ設定したサブグループでも両群間差はみられなかった。
[二次エンドポイント]
ハードエンドポイント(心血管死,非致死的脳卒中[一過性脳虚血発作は除外],非致死的MI):厳格降圧群32例 vs 37例:HR 0.484;0.53~1.36(p=0.84)。
全死亡:24例 vs 30例:0.78;0.46~1.33(p=0.362)
心血管死:11例 vs 11例:0.97;0.42~2.25(p=0.950)
突然死:6例 vs 8例:0.73;0.25~2.11(p=0.564)
致死的・非致死的脳卒中:16例 vs 23例:0.68;0.36~1.29(p=0.237)
致死的・非致死的MI:5例 vs 4例:1.23;0.33~4.56(p=0.761)
予定外の入院:12例 vs 14例:0.84;0.39~1.82(p=0.656)
腎機能障害:5例 vs 2例:2.45;0.48~12.64(p=0.267)
[有害事象]
厳格降圧群18.2% vs 緩徐降圧群17.9%で両群間に有意差はなく(p=0.851),そのほとんどが胃腸あるいは呼吸器症状であった。
重篤な有害イベント(5.6% vs 5.2%;p=0.61)のうち,valsartan関連と思われるものは5.6% vs 4.4%(p=0.126)。
valsartanが原因であることが明確あるいは疑われる投与中止率は1.9% vs 1.2%(p=0.11)。
★サマリー★70歳以上の比較的健康な収縮期高血圧患者において,<140mmHgの降圧は安全に達成できたが,厳格降圧が緩徐降圧より有効であることを示すには検出力不足であった。
文献
  • [main]
  • Ogihara T et al for the valsartan in elderly isolated systolic hypertension study group: Target blood pressure for treatment of isolated systolic hypertension in the elderly. Valsartan in elderly isolated systolic hypertension study. Hypertension. 2010; 56: 196-202. PubMed
  • Ogihara T et al for the VALISH study group: Valsartan in elderly isolated systolic hypertension (VALISH) study; rationale and design. Hypertens Res. 2004; 27: 657-61. PubMed

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収載年月2005.09
更新年月2010.07