循環器トライアルデータベース

CARE-HF
Cardiac Resynchronization-Heart Failure Study

目的 標準的な薬物治療を受けている中等症~重症心不全患者において,心臓再同期治療(CRT)の合併症および死亡抑制効果を検討。

一次エンドポイントは全死亡+主要な心血管イベントによる予定外の入院。
二次エンドポイントは全死亡。
コメント N Engl J Med. 2005; 352: 1539-49. へのコメント
心室再同期治療が心不全例の死亡率を有意に改善することはこれまで明確に示されてこなかった(COMPANION試験ではp=0.06)。本研究により,心室同期不全を持つ心不全例には薬物療法に加えて心室再同期治療を標準的治療として行うことが勧められる。(井上
デザイン PROBE(Prospective, Randomized, Open, Blinded-Endpoint),多施設(欧州の82施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は29.4か月。
登録期間は2001年1月~'03年3月で'04年9月30日試験終了。
対象患者 813例。18歳以上。心不全の罹患期間が6週間以上であり,標準的な薬物療法にもかかわらずNYHA心機能分類III~IV度,EF≦35%,左室拡張末期径(身長で補正)≧30mm,QRS間隔≧120msec。
除外基準:6週以内の主要な心血管イベント発症例,ペースメーカー/植込み型除細動器の適応,継続的な経静脈的治療を要する心不全,心房性不整脈。
■患者背景:年齢中央値(CRT群67歳,薬物治療群66歳),男性(74%, 73%),NYHA IV度(6%, 7%),EF(中央値ともに25%),血圧(ともに110/70mmHg),拡張型心筋症(43%, 48%),虚血性心疾患(40%, 36%),その他の原因による心疾患(16%, 17%)。治療状況:ACE阻害薬(ともに95%),β遮断薬(70%, 74%),spironolactone(54%, 59%),高用量ループ利尿薬;furosemide 80mg以上,bumetanide 2mg以上,あるいはtorsemide 20mg以上(43%, 44%),digoxin(40%, 45%)。
治療法 薬物療法群(404例),CRT群(409例):標準的な薬物治療+Medtronic InSync/InSync IIIによる心房+両室ペーシング。
NYHA心機能分類により層別化。1, 3, 6, 9, 12, 18か月後,以後6か月ごとに来院し,薬物治療を調整。ベースライン時,3, 18か月後に心臓の非同期性の重症度,心室機能,僧帽弁閉鎖不全,N末端プロBNPなどの生化学値の評価,心エコー実施。90日後にNYHA心機能分類とMinnesota Living with Heart Failure質問票およびEuroQoL EQ-5DスコアによるQOLを評価。
結果 18か月後のNYHA I度例はCRT群105例,薬物療法群39例,II度は150例 vs 112例,III~IV度は80例,152例。
一次エンドポイントはCRT群159例(39%)vs 薬物療法群224例(55%)で,CRT群で有意に抑制された[ハザード比(HR)0.63, 95%CI 0.51~0.77, p<0.001]。心血管イベントによる予定外の入院率は31% vs 46%でCRT群で有意に低かった(HR 0.61, p<0.001)。
死亡も82例(20%)vs 120例(30%)でCRT群で有意に低下し(HR 0.64, 95%CI 0.48~0.85, p<0.002),心血管死が最も多かった(71%)。心不全悪化による死亡は40% vs 47%,突然死は35% vs 32%。1年後および2年後の死亡率はCRT群9.7%, 18.0%,薬物療法群12.6%, 25.1%。
CRT群は薬物療法群に比べ全死亡+心不全悪化による入院(HR 0.54),90日後の症状およびQOL,EF,収縮末期容積,左室の機械的収縮の遅れが有意に改善し(p<0.001),僧帽弁閉鎖不全領域が有意に縮小した(p=0.003)。
★結論★心室同期不全と左室収縮機能不全による心不全患者において,標準的薬物療法+CRTは症状およびQOLを改善し,合併症および死亡のリスクを抑制した。
ClinicalTrials. gov No: NCT00170300
文献
  • [main]
  • Cleland JGF et al for the cardiac resynchronization-heart failure (CARE-HF) study investigators: The effect of cardiac resynchronization on morbidity and mortality in heart failure. N Engl J Med. 2005; 352: 1539-49. PubMed
  • [substudy]
  • CRTと右室機能-右室機能不全はCRT適応例の予後不良因子ながら,CARE-HFではCRTの予後改善効果には影響せず。
    右室機能指標である三尖弁輪収縮期移動距離(tricuspid annular plane systolic excursion: TAPSE)を計測した688例(中央値:66歳,EF 24%;CRT群345例)において,心臓再同期療法(CRT)の右室機能への影響と,右室機能不全がECG上・臨床上のCRTの有効性に及ぼす影響を評価した結果(追跡期間中央値748日):ベースライン時のTAPSE(中央値)は19mm。左室機能・サイズ,QRS時間にTAPSE三分位群(第1三分位[T1]群:5.5~17.3mm,第2三分位[T2]群:17.4~21.1mm,第3三分位[T3]群:21.2~33.4mm)による差はなかったが,T1群は虚血性心疾患例が多かった。
    CRTにより左室の構造および機能は改善したが,右室の改善はみられず,TAPSEとの交互作用もみられなかった。
    一次エンドポイント(全死亡+主要なCVDによる予定外の入院)は329例(T1群145例,T2群99例,T3群85例),死亡は213例。治療群を問わず,死亡リスクはTAPSEが低いほど有意に上昇した(p<0.001)。また,ベースライン時の心室間機械的遅延低値,NYHA心機能分類IV度,対照(薬物療法)群への割付けと,3か月後の僧帽弁逆流増悪,NT-proBNP高値,TAPSE低値は,高死亡率と独立して関連した。右室機能不全例(TAPSE≦14mm;93例)のみでも,CRTによる一次エンドポイント,死亡の低下は同様であった:J Am Coll Cardiol. 2013; 61: 2153-60. PubMed
  • 追跡期間37.6か月(中央値)での死亡はCRT群101例,薬物療法群154例。CRTを含む心不全治療にかかわらず,3か月後の重度の僧帽弁逆流例,アミノ末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が持続して高い例は死亡率が高い。インターベンション前および3か月後の変数で調整後も,CRT群の方が死亡率が低い:J Am Coll Cardiol. 2008; 52: 438-45. PubMed
  • 追跡期間を8か月延長した結果:平均追跡期間37.4か月。死亡はCRT群101例(24.7%),薬物療法群154例(38.1%)であった(HR 0.6;95%CI 0.47~0.77, p<0.0001)。CRT群の死亡リスク低下は,心不全死(38例 vs 64例,HR 0.55, p=0.003),突然死(32例 vs 55例,HR 0.54, p=0.005)抑制によるものであった:Eur Heart J. 2006; 27: 1928-32. PubMed
  • CRTは心房細動/粗動(AF)を抑制しなかったが(CRT群66例,薬物療法群58例,HR 1.05),AF発症にかかわらず転帰を改善した:Circulation. 2006; 114: 18-25. PubMed
  • CRTにより4,316ユーロの増額で,獲得生存年は0.10年,獲得質調整生存年(quality adjusted life year: QALY)は0.22。獲得QALYにつき増分費用効果比(incremental cost-effectiveness ratio)は19,319ユーロ,獲得生存年につき43,596ユーロ。CRTのコストベネフィットの見込みは獲得QALYにつき支払いをいとわない(willingness-to-pay)増分額29,400ユーロ(20,000ドル)だと考えられる:Eur Heart J. 2005; 26: 2681-8. PubMed

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収載年月2005.05
更新年月2014.01