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CABG Surgery Study

目的 CABG施行後のCOX-2阻害薬valdecoxibおよびparecoxib投与の安全性を検討する。一次エンドポイントは有害イベント:心血管イベント(心・脳血管・末梢血管イベント),腎イベント(腎不全あるいは腎障害),手技の傷害による合併症,胃腸合併症。
コメント 1987年,アラキドン酸からプロスタグランジンH2への変換酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)にCOX-1,COX-2が存在することが明らかとなった。その後COX-1の抑制が胃腸障害と関連すること,COX-2は炎症メディエーターの産出に関与することより選択的COX-2阻害薬が開発された。1999年FDAより2剤が認可されたが胃腸障害に対する有用性は明らかではなかった。celecoxibを用いたCLASS(Celecoxib Long-term Arthritis Safety Study)試験では胃腸障害に対する6か月後の有用性は12か月後には消失した。rofecoxibを用いたVIGOR (Vioxx Gastrointestinal Outcomes Research)試験では胃腸障害に対して長期間有用であったが,心筋梗塞の発生率が高かった。COX-2阻害薬に対して大腸ポリープや術後疼痛の抑制試験が行われ,安全性はモニターされていたが,心血管系毒性を直接明らかにするstudyはなかった。
本研究は大規模studyとして心肺バイパスを用いたCABG後における選択的COX-2阻害薬の安全性を検討しており,わずか10日間の投与により血栓塞栓症のリスクが有意に亢進していた。CABG中の体外循環において血小板や白血球が活性化し,動脈硬化血管では血栓症を生じやすい。心肺バイパスでは大動脈クランプが必要であり,心筋の虚血・再灌流障害を生じ,術後の血行動態の不安定さ,冠動脈塞栓,スパズムなどで心筋虚血に陥りやすい。心肺バイパス時にはプロスタサイクリンとトロンボキサンA2の血中レベルが上昇する。選択的COX-2阻害薬は善玉のプロスタサイクリンの産出を低下させ,悪玉のトロンボキサンA2の産出を抑制しないので,血栓症をより生じやすい。aspirinは理論的には血小板トロンボキサンA2産出を抑制するが,CABG後にはaspirinに対する血小板の耐性が報告されている。術後2週間以内では血小板増多症が生じやすく,血栓症をより発生しやすい。動脈硬化病変による他の血管術後やoff pump CABGにおいても同様であるか否かのエビデンスは未だない。対象疾患は異なるが3種類のCOX-2阻害薬すべてで心血管イベントの増加が明らかとなっており,class effectと考えざるをえない。(星田
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(27か国,175施設)。
期間 追跡期間は30日。実施期間は2003年1月~2004年1月。
対象患者 1671例。心肺バイパスを使用するprimaryあるいは待機的CABG施行例;18~80歳;NYHA I~III度あるいはEF≧35%;BMI≦40kg/m²,体重>55kg。
除外基準:試験開始前3か月以内に発症した血栓塞栓イベント(脳血管イベント,一過性脳虚血発作,深部静脈塞栓症,肺塞栓),7日以内の心筋梗塞,60日以内の胃あるいは十二指腸潰瘍など。
■患者背景:平均年齢(プラセボ群62.1歳,プラセボ+valdecoxib群61.6歳,parecoxib+valdecoxib群62.0歳),男性(85.2%,86.2%,85.6%),BMI(28.3,28.7,28.4),既往;狭心症(87.0%,86.9%,88.5%),高血圧(72.5%,73.2%,74.1%),心筋梗塞(39.5%,44.2%,43.6%),高脂血症(74.6%,76.1%,78.9%),糖尿病(24.6%,28.2%,28.8%)。
治療法 プラセボ群(560例),プラセボ+valdecoxib群(556例):プラセボを12時間ごとに3日間静注後,valdecoxib 20mgを10日目まで12時間ごとに経口投与,parecoxib+valdecoxib群(555例):手技後の朝parecoxib 40mg静注し(第1日),その後parecoxib 20mgを12時間ごとに3日間投与後,10日目まで12時間ごとにvaldecoxibを経口投与。
治療期間は10日で,この期間を通し全例に標準オピオイド鎮痛薬を投与。CABG後,全例にaspirin 75~325mgを投与。
結果 内胸動脈1本植込み例:プラセボ群474例(84.9%),プラセボ+valdecoxib群470例(84.5%),parecoxib+valdecoxib群447例(80.8%),手技所要時間:203.5分,202.3分,204.8分,手技終了から試験薬投与までの時間:1243分,1241分,1231分。
一次エンドポイントはプラセボ+valdecoxib群,parecoxib+valdecoxib群のCOX-2阻害薬群で7.4% vsプラセボ群4.0%とCOX-2阻害薬群で有意に高かった(COX-2阻害薬両群のいずれかとプラセボ群を比較したリスク比(RR)1.9;95%信頼区間1.1~3.2,p=0.02)。プラセボ群に比べCOX-2阻害薬両群で心血管イベント(心筋梗塞,心停止,脳卒中,肺塞栓)が有意に多かった(2.0% vs 0.5%:RR 3.7;1.0~13.5,p=0.03)。
一次エンドポイントのうち非心血管イベントもCOX-2阻害薬両群の方が多かったが有意差は認められなかった。手技の傷害によるイベントにおいてプラセボ群とparecoxib+valdecoxib群間に有意差はみられなかったが(p=0.48),プラセボ群とプラセボ+valdecoxib群間には傾向がみられた(p=0.08)。プラセボ群(2.9%)とCOX-2阻害薬両群(4.3%)との間にも有意差はなかった(p=0.15)。
死亡は8例,うちparecoxib+valdecoxib群で4例,プラセボ+valdecoxib群で3例,プラセボ群1例。7例が投与中,1例が30日の追跡終了後に死亡。
★結論★CABG施行後のparecoxib,valdecoxib投与は心血管イベント増加と関連した。
文献
  • [main]
  • Nussmeier NA et al: Complications of the COX-2 inhibitors parecoxib and valdecoxib after cadiac surgery. N Engl J Med. 2005; 352: 1081-91. PubMed

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収載年月2005.05