循環器トライアルデータベース

CARDS
Collaborative Atorvastatin Diabetes Study

目的 LDL-C値が高くない2型糖尿病患者において,HMG-CoA reductase阻害薬atorvastatinの心血管イベント一次予防効果を検討する。
一次エンドポイントは急性冠動脈疾患イベント(心筋梗塞,不安定狭心症,急性冠動脈疾患死,蘇生した心停止)+血行再建術+脳卒中。
コメント 糖尿病を対象とした試験としてはHeart Protection Studyもあるが,ハイリスクの一つとして組み入れられており,その評価は一次評価項目ではなかった。その意味では,本試験は2型糖尿病を対象とした初めての大規模一次試験といえる。結果的には,一次エンドポイントの達成が十分みられたということから試験予定期間を切り上げて終了している。3.9年という短い期間であるためと思われるが,総死亡率の抑制効果は統計学的には有意ではなく,抑制傾向にとどまった。また,従来二次予防試験では認められていた脳卒中の抑制効果も認められ,ASCOT-LLAと同様,ハイリスクではLDL-C低下療法が脳卒中予防にも有効であることを確認している。また,アトルバスタチン10mgという本邦での使用量と同等の投与量で行われたという意味では,これらのエビデンスがわが国でも期待できるものと思われる。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,多施設(英国,アイルランドの132施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3.9年(中央値)。ランダム化期間は1997年11月~2001年6月。
対象患者 2838例。40~75歳;心血管疾患の既往がなく罹病期間が6か月以上の2型糖尿病;LDL-C≦159.8mg/dL;空腹時トリグリセリド≦600.0mg/dL;次のリスクが1つ以上該当するもの:降圧薬投与あるいは収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHg;網膜症;微量アルブミン尿;顕性アルブミン尿;喫煙中。
除外基準:血清クレアチニン>150μmol/L,HbA1c>12%など。
■患者背景(平均値):年齢(atorvastatin群61.5歳,プラセボ群61.8歳),白人(95%, 94%),女性(両群32%),総コレステロール(206.9mg/dL, 206.5mg/dL),LDL-C(117.3mg/dL, 116.6mg/dL),HDL-C(53.7mg/dL, 54.8mg/dL),トリグリセライド(150.5mg/dL, 147.8mg/dL),HbA1c(7.87%, 7.81%),空腹時血糖値(180.1mg/dL, 177.1mg/dL),BMI(28.7, 28.8),網膜症(両群30%),微量アルブミン尿(両群15%),喫煙例(22%, 23%),血圧(両群144/83mmHg),高血圧(両群84%);降圧薬投与(両群67%)状況:ACE阻害薬(45%, 44%),Ca拮抗薬(両群21%),利尿薬(18%, 20%),β遮断薬(15%, 17%)
治療法 atorvastatin群(1428例):10mg/日,プラセボ群(1410例)。
血糖コントロール,食事療法にもかかわらずLDL-Cが>179.5mg/dLあるいはトリグリセリドが>796.5mg/dLに上昇し4週間継続した場合は,試験薬の投与を中止し追跡は継続するものとしていたが,2002年10月併用投与(atorvastatin 10mg,simvastatin 最大投与量40mg,pravastatin 最大40mg,fluvastatin 最大80mg,cerivastatin 0.3mg)を可とするようプロトコールを変更した。
結果 atorvastatin群の有効性が明確になったため試験は予定より2年早く2003年6月12日に終了した。
一次エンドポイントはatorvastatin群83例(5.8%:1.54例/100人・年のリスク),プラセボ群127例(9.0%:2.46例/100人・年)でatorvastatin群でリスクが37%低下した(95%信頼区間-52~-17,p=0.001)。1000例にatorvastatinを4年間投与すると主要イベント37件を予防できることになる。
急性冠イベントは3.6% vs 5.5%(ハザード比0.64:0.45~0.91),血行再建術は1.7% vs 2.4%(0.69:0.41~1.16),脳卒中は1.5% vs 2.8%(0.52:0.31~0.89)。さらにatorvastatin群では死亡が27%低下した(-48~1,p=0.059)。有害事象あるいは重篤な有害事象は19例 vs 20例で両群間に違いはみられなかった。
★考察★atorvastatinはLDL-Cが低めの2型糖尿病において安全で脳卒中を含む心血管疾患イベントの初発を抑制する。2型糖尿病患者にスタチン治療を実施することを決定付けるLDL-C値を得るには至らなかった。
文献
  • [main]
  • Colhoun HM on behalf of the CARDS investigators: Primary prevention of cardiovascular disease with atorvastatin in type 2 diabetes in the collaborative atorvastatin diabetes study (CARDS); multicentre randomised placebo-controlled trial. Lancet. 2004; 364: 685-96. PubMed
  • [substudy]
  • アルブミン尿を認める症例においてatorvastatinは腎機能を軽度に改善
    ベースライン時の糸球体濾過量(eGFR)中等度低下例(30~60mL/分/1.73m2)は34%で,atorvastatinはeGFRを軽度に改善した(net: 0.18mL/分/1.73m2/年;0.04~0.32,p=0.01)。改善はアルブミン尿が認められた症例で最も顕著であった(net improvement: 0.38mL/分/1.73m2/年;p=0.03)。ベースライン時にアルブミン尿が認められたのは21.5%で,追跡期間中に発症したのは6.8%。atorvastatinによるアルブミン尿発症(ハザード比1.49;95%信頼区間0.73~3.04,p=0.3),正常アルブミン尿への寛解(1.19;0.57~2.49,p=0.6)への影響はみられなかった。
    eGFR中等度低下例でatorvastatinにより主要な心血管疾患が42%,脳卒中が61%抑制された:Am J Kidney Dis. 2009; 54: 810-9. PubMed
  • 65歳以上(群1129例):atorvastatin群572例,プラセボ群557例)と65歳未満群(1709例)の比較:一次エンドポイント抑制効果は65歳以上群で相対リスクが38%低下(95%信頼区間-58~-8,p=0.017),65歳未満群で37%低下(-57~-7,p=0.019)。絶対リスク低下は3.9% vs 2.7%(95%CI -2.8~5.3,p=0.546)。4年間で1イベント予防のためのNTTは21例 vs 33例。全死亡抑制のリスク低下は22% vs 37%(p=0.98)で有意差はみられなかった:Diabetes Care. 2006; 29: 2378-84. PubMed

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収載年月2005.01
更新年月2009.10