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Stenting and Angioplasty with Protection in Patients at High Risk for Endarterectomy

目的 血管内膜除去術によりリスクが増大する可能性がある合併症および重度の頸動脈狭窄を有する患者において,塞栓保護デバイスの併用による頸動脈ステント術と血管内膜除去術とを比較。
一次エンドポイントは手技後30日以内の死亡+脳卒中+心筋梗塞(MI),31日~1年後の死亡+同側性脳梗塞の累積発生率。
コメント 頸動脈狭窄患者に対して薬物療法よりも血管内膜除去術の方が優れているが,手術に対するハイリスク症例では臨床成績は必ずしも良くない。ハイリスク症例に対して頸動脈ステント術が最近行われているが,遠位部の塞栓症が課題であった。本研究では,従来の血管内膜除去術の臨床研究では除外されていたハイリスク症例において,塞栓保護デバイスを併用した頸動脈ステント術が血管内膜除去術と同等の臨床効果を示すことを明らかにしている。血管内膜除去術後の合併症の頻度は他のstudyよりも少なく,外科医の技量が結果に影響したとは考えにくい。塞栓保護デバイスの出現により頸動脈ステント術の周術期にみられた約10%の合併症は著明に低下し,頸動脈ステント術が一般化したため,本研究が予定より早く終了したのかもしれない。エンドポイントとして心筋梗塞や頭蓋内神経麻痺が入っているのでステント群に有利であること,頸動脈再狭窄例では血管内膜除去術の方が合併症が生じやすいこと,症例数が少ないこと,が本研究の課題である。ローリスク症例においても本研究結果と同様であるか否かは現在studyが進行中である。(星田
デザイン 無作為割付け,多施設(米国の29施設),intention-to-treat(ITT)解析。
期間 追跡期間は3年。
登録期間は2000年8月~'02年7月。
対象患者 334例(ランダム化した334例の他にステント登録406例,血管内膜除去術登録7例を非無作為に割付け)。18歳以上。native頸動脈に片側/両側性アテローム硬化病変または再狭窄病変を有し,症候性の場合は頸動脈狭窄が超音波診断上50%以上,無症候性の場合は80%以上の狭窄を有するもの。頸動脈内膜除去術によりリスク増大の可能性がある次の合併症を有するもの:臨床的に重大な心疾患(うっ血性心不全,負荷試験の結果が異常,開胸術の必要),重度の肺疾患,対側頸動脈閉塞,対側喉頭神経麻痺,頸部根治術/放射線治療既往,血管内膜除去術後の再狭窄,>80歳。
除外基準:48時間以内の脳梗塞,動脈内血栓,標的血管の完全閉塞,カテーテル使用を妨げる血管疾患,直径>9mmの頭蓋内動脈瘤,3本以上のステントの必要,出血性疾患の既往,30日以内の経皮的インターベンション/手術の予定,生存の見込み<1年,総頸動脈/腕頭動脈の入口部病変。
■患者背景:平均年齢(ステント群72.5歳,血管内膜除去術群72.6歳),男性(66.9%,67.1%),冠動脈疾患(85.8%,75.5%),糖尿病(25.3%,27.5%),高脂血症既往(78.5%,76.9%),高血圧既往(85.5%,85.1%),PTCA既往(34.8%,23.4%),CABG既往(43.4%,30.8%),一過性脳虚血発作既往(31.1%,34.0%),脳卒中既往(27.1%,23.8%)。
治療法 神経内科医,血管/神経外科医,インターベンション医からなるチームによりステント,血管内膜除去術ともに適切であると認められた患者を,ステント+塞栓保護デバイス群(167例),血管内膜除去術群(167例)にランダム化(いずれか片方のみ適切であると判断された患者には該当の方法をそれぞれ実施)。施設,症状の有無により層別化。ステント群では脳血管造影後,自己拡張型のnitinolステント(Smart or Precise,Cordis社)を塞栓保護デバイス(Angioguard or Angioguard XP,Cordis社)とともに使用し,施術24時間前よりclopidogrel 75mg/日を投与開始し,2~4週継続。血管内膜除去術群では動脈造影を行わず施術。全例に施術72時間以上前よりaspirin 81mgまたは325mg/日の投与を開始し無期限に継続,施術中に活性化部分トロンボプラスチン時間250~300秒を維持するようheparinを投与。施術後30日,6,12か月,以後3年まで年1回フォローアップ来院。超音波診断を退院時,6か月以降の毎来院時,神経学的検査,臨床的有害事象の監視を施術後24時間以内,退院まで毎日,毎来院時に実施。
結果 一次エンドポイントの発生はステント+塞栓保護デバイス群20例(累積発生率12.2%) vs 血管内膜除去術群32例(累積発生率20.1%)で絶対差は-7.9%であった[95%信頼区間(CI )-16.4~0.7,非劣性 p=0.004,優性 p=0.053]。
1年後の頭蓋内神経麻痺,標的血管の血行再建術の推定発生率は,それぞれ血管内膜除去術群がステント群に比べ高かった(4.9% vs 0%,p=0.004;4.3% vs 0.6%,p=0.04)。周術期(30日後まで)の脳卒中+MI+死亡の累積発生率は,ITT解析でステント群4.8% vs 血管内膜除去術群9.8%(p=0.09),on-treatment解析で4.4% vs 9.9%(p=0.06)であった。平均入院期間はステント施行例1.84日 vs 血管内膜除去術例2.85日(p=0.002)であった。
★結論★重度の頸動脈狭窄と合併症を有する血管内膜除去術のハイリスク患者における頸動脈ステントと塞栓保護デバイスの併用は,脳卒中,死亡,MIの予防において血管内膜除去術に劣らない。
ClinicalTrials.gov No: NCT00231270
文献
  • [main]
  • Yadav JS et al for the stenting and angioplasty with protection in patients at high risk for endarterectomy investigators: Protected carotid-artery stenting versus endarterectomy in high-risk patients. N Engl J Med. 2004; 351: 1493-501. PubMed
  • [substudy]
  • 長期転帰における頸動脈ステント+塞栓保護デバイス群と血管内膜除去術群に差はない。
    3年後の予後:解析例は260例(77.8%)で頸動脈ステント+塞栓保護デバイス群の85.6%,血管内膜除去術群の70.1%。
    一次エンドポイントのイベント+31日後~1080日後の死亡,同側の脳卒中は頸動脈ステント+塞栓保護デバイス群41例(24.6%),血管内膜除去術群45例(26.9%);内膜除去術群に比べたステント群の絶対差は-2.3%(95%信頼区間-11.8~7.0,p=0.71)。脳卒中は各群15例で同側の脳卒中はステント群11例,内膜除去術群9例:N Engl J Med. 2008; 358: 1572-9. PubMed

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収載年月2005.01
更新年月2008.05