循環器トライアルデータベース

CAMELOT
Comparison of Amlodipine vs. Enalapril to Limit Occurrences of Thrombosis

目的 正常血圧の冠動脈疾患(CAD)患者において,心血管イベント抑制効果をCa拮抗薬amlodipine,ACE阻害薬enalapril,プラセボで比較する。
さらにIVUS(血管内超音波エコー)サブスタディで両薬剤の動脈硬化抑制効果を検討。

一次エンドポイントはamlodipine群とプラセボ群の有害心血管イベント*の比較。
二次エンドポイントはenalapril群とプラセボ群の有害心血管イベントの比較,およびamlodipine群とenalapril群の比較。サブスタディのエンドポイントは標的血管のアテローム容積の変化。
*心血管死,非致死的心筋梗塞,蘇生した心停止,血行再建術,狭心症による入院,うっ血性心不全による入院,全脳卒中あるいは一過性脳虚血発作,新規末梢血管疾患。
コメント 冠動脈疾患のハイリスクでかつ正常血圧の症例に対する大規模試験としてはACE阻害薬の有用性を証明したHOPE,EUROPAなどが知られている。本試験では以前,心毒性が懸念されたこともあるCa拮抗薬が,ACE阻害薬と同等か,あるいはそれ以上の冠動脈疾患の予後改善効果を有している可能性を示した点で画期的である。最近,ニフェジピン徐放錠でもACTION試験のサブ解析で140/90mmHg以上の高血圧群でのみ同様の有用性を示しているが,CAMELOT試験は治療前の平均値が約129/78mmHgという完全な正常血圧症例でも,Ca拮抗薬が心血管イベントを抑制することを示した。一方,エナラプリル群ではほぼ同等な降圧が達成できているにもかかわらず有意な予防効果には至らなかった。ALLHAT試験以来,相次いで長時間作用型Ca拮抗薬の冠動脈疾患に対する予防効果が証明され,いまや降圧効果を超えた心保護効果はCa拮抗薬にこそ認められる可能性を示唆している。本試験の特徴はすでにスタチン薬やアスピリンが80%以上の症例で処方されているという状態であるにもかかわらず,さらにCa拮抗薬の追加によって血管イベントが予防できることを示した点でも注目に値する。Ca拮抗薬,ACE阻害薬群とも正常血圧レベルをさらに124/75mmHgまで降圧することで,プラセボ群よりも有意なイベント発症予防効果が認められていることは,JNC第7次ガイドラインでいう至適血圧<120/80mmHgが最終的な降圧目標であるかもしれないことを示すとともに,虚血性心疾患にとっては血圧はやはり負荷であることをあらためて示している。
本試験のもう一つの特徴はIVUSを用いて冠動脈の形態の変化で,動脈硬化の進展の抑制も確認したが,冠動脈硬化進展予防における積極的降圧の有用性を新しい手法によって証明した点で意義深い。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設[北米(アメリカ,カナダ),欧州の100施設,サブスタディは38施設]。
期間 治療期間は24か月。
登録期間は1999年4月~2002年4月。
対象患者 1991例(うち274例がIVUSサブスタディに参加);30~79歳;胸痛のため冠動脈造影を要する,あるいはPCI(percutaneous coronary intervention)が必要な例;CAD(冠動脈造影で20%以上の狭窄病変が1つ以上)を有する;降圧治療の有無を問わず拡張期血圧<100mmHg。
除外基準:左冠動脈主幹部閉塞>50%,EF<40%,中等度~重症のうっ血性心不全。
■患者背景:平均年齢(amlodipine群57.3歳,プラセボ群57.2歳,enalapril群58.5歳:p=0.02),男性(76.3%, 73.0%, 71.9%),白人(89.4%, 89.0%, 89.3%),BMI(29.9, 29.7, 29.7),LDL-C(104mg/dL, 100mg/dL, 101mg/dL:p=0.04);治療歴:高血圧(61.4%, 60.3%, 59.7%),脳卒中(3.6%, 4.1%, 4.5%),糖尿病(17.3%, 19.8%, 17.5%),class 4狭心症(8.1%, 9.9%, 8.3%),1枝病変(30.6%, 28.2%, 27.8%),2枝病変(32.7%, 34.1%, 36.1%),3枝病変(34.7%, 36.5%, 34.8%),PCI(26.1%, 30.4%, 28.5%),CABG(8.0%, 8.2%, 6.8%),心筋梗塞(37.4%, 37.7%, 40.3%);併用療法:スタチン(83.1%, 84.3%, 81.7%),利尿薬(32.1%, 33.4%, 26.8%:p=0.02),β遮断薬(74.2%, 78.8%, 74.7%),aspirin(94.4%, 95.4%, 94.7%),ACE阻害薬(7.4%, 12.8%, 7.0%:p<0.001),アンジオテンシン受容体拮抗薬(1.7%, 2.3%, 1.6%),Ca拮抗薬(5.0%, 12.1%, 6.1%:p<0.001);試験薬投与状況:目的最大投与量到達率(86.7%, 89.8%, 84.3%),平均投与量(8.6mg, -, 17.4mg),試験終了率(93.4%, 93.7%, 92.4%),試験薬投与中止率(29.3%, 31.1%, 35.1%:p=0.07)。
治療法 ACE阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,Ca拮抗薬は2~6週間投与を中止し,試験期間中は試験薬を除く薬剤の投与は禁止し,β遮断薬,α1遮断薬,利尿薬は可とした。
プラセボによる2週間のrun-in後,次の3群にランダム化。amlodipine群(663例/IVUS substudy 91例):5mg→ 2週目の終わりに10mg/日,enalapril群(673例/88例):10mg→ 20mg/日,プラセボ群(655例/95例)。
IVUSをベースライン時および終了時に実施。
結果 (血圧の推移)amlodipine群はベースライン時の129.5/77.7mmHgから4.8/2.5mmHg低下,enalapril群は128.9/77.2mmHgから4.9/2.4mmHg低下,プラセボ群は128.9/77.6mmHgから0.7/0.6mmHg上昇(実薬両群 vsプラセボ群 p<0.001)。
(心血管イベント)プラセボ群(151例[23.1%])に対するハザード比(HR)は,amlodipine群(110例[16.6%])で0.69(95%信頼区間[CI]0.54-0.88, p=0.003),enalapril群(136例[20.2%])で0.85(95%CI 0.67-1.07, p=0.16)であった。心血管イベントで最も頻度の高かった血行再建術はamlodipine群(11.8%)でプラセボ群(15.7%)より低下し(HR 0.73, 95%CI 0.54-0.98, p=0.03),同群の狭心症による入院(7.7%)はプラセボ群(12.8%)より低下した(HR 0.58, 95%CI 0.41-0.82, p=0.002)。心血管イベント発生についてamlodipine群とenalapril群に有意差はなかった(enalapril群20.2%,amlodipine群16.6%:HR 0.81, 95%CI 0.63-1.04, p=0.10)。
(サブ解析)事前に特定したサブグループ(脂質低下薬治療,年齢,性,座位収縮期血圧)は,いずれもプラセボ群よりamlodipine群で良好であった。糖尿病例についての後付け解析でもamlodipine群で良好であった(amlodipine群 vs enalapril群:HR 0.58, p=0.04)。
(有害事象)両実薬群とも忍容性は良好。有害事象による投与中止は13%で3群間に有意差はなかった。低血圧はamlodipine群3.3%,enalapril群9.5%,プラセボ群3.2%。末梢浮腫はそれぞれ32.4%, 9.5%, 9.6%。amlodipine群では浮腫により5.0%が投与を中止。咳は5.1%, 12.5%, 5.8%でenalapril群の3.9%が咳により投与を中止した。
(IVUSサブスタディ)amlodipine群はプラセボ群に比べアテローム性動脈硬化進展を抑制する傾向が認められ(p=0.12),収縮期血圧が平均より高い例では有意に抑制した(p=0.02)。ベースライン時と比べ,amlodipine群に動脈硬化の進展は認められず(p=0.31),enalapril群では進展する傾向(p=0.08),プラセボ群は進展した(p<0.001)。amlodipine群の降圧と動脈硬化進展の相関はr=0.19, p=0.07であった。
★結論★正常血圧のCAD患者においてamlodipineは有害心血管イベントを抑制した。enalaprilも同様の有効性が認められたが,その効果は小さく有意差には至らなかった。IVUSによりamlodipineのアテローム性動脈硬化の進展抑制効果が認められた。
文献
  • [main]
  • Nissen SE et al for the CAMELOT investigators: Effect of antihypertensive agents on cardiovascular events in patients with coronary disease and normal blood pressure.the camelot study. a randomized controlled trial. JAMA 2004; 292: 2217-26. PubMed
  • [substudy]
  • 危険因子のコントロールが良好なCAD患者において,2年間の降圧治療による炎症マーカーの変化は認められず。
    [炎症マーカースタディ]IVUSサブスタディ参加者のうち炎症マーカーを1種類以上測定した患者(196例)での検討結果:2年後,治療群(amlodipine/enalapril群)ではプラセボ群にくらべて拡張期血圧(-4.7mmHg vs +1.3mmHg;p=0.002)とアテローム容積率(PAV)(0.6% vs 2.1%;p=0.031)が有意に低下した。一方,炎症マーカー(IL-18,ネオプテリン,IL-1受容体拮抗薬,マトリックスメタロプロテイナーゼ-9,CRP)には有意な変化はみられなかった。ベースライン時のスタチン使用はPAVの低下(-2.5%;p=0.0008),総アテローム容積の減少(-10.9%;p=0.0103)と強く関連したが,IL-18を除く炎症マーカーの変化との関連性は認められなかった。降圧治療によるアテローム性動脈硬化アテロームの進展抑制の進展抑制は,炎症マーカーが反映するメカニズムを介したものではないと考えられる:Am Heart J. 2012; 163: 735-40. PubMed
  • IVUSサブスタディであるNorvasc for Regression of Manifest Atherosclerotic Lesions by Intravascular Sonographic Evaluation(NORMALISE)参加者のうち追跡血管造影を実施した298例(amlodipine群99例,enalapril群96例,プラセボ群103例)での検討:患者背景はamlodipine群で糖尿病症例が多かった(p=0.03)ことを除いては3群間に差はなかった。24か月後の最小血管径(MLD)はamlodipine群-0.02mm,enalapril群-0.03mm,プラセボ群-0.03mm(p=0.40)。主要な虚血性イベント発症率はそれぞれ20.2%, 24%, 25.2%(p=0.68)。MLDの変化と年齢,性,スタチン系薬剤,収縮期血圧との間に有意な相関はなかった。治療にかかわらず,MLDの変化は心血管イベント発症例-0.05mm,非発症例-0.02mmで差はなかった(p=0.48)。多変量解析によると,病変血管の数(CADの進展:extent of CAD)のみが一次エンドポイントと有意な相関がみられた★結論★プラセボ群と比べamlodipine群は虚血性イベントを抑制したが,これは血管径の改善によるものではなかった:Am Heart J. 2006; 152: 1059-63. PubMed
  • 新カテゴリー“前高血圧”を追加したJNC 7の血圧分類(正常,前高血圧,高血圧の3分類)によるCADの進展の検討(IVUSサブスタディ274例):ベースライン時の血圧はCAMELOT試験全体と同様で129.9/77.2mmHg。2/3が実薬群であったため2年後の血圧は126.2/75.1mmHgに有意に低下。治療群の試験期間中の平均血圧は127.0/75.5mmHg。正常群(76例)の血圧は114/71mmHg,前高血圧群(157例)は128/76mmHg,高血圧群(41例)は147/80mmHg。血圧がより高い症例は高齢で女性,高血圧既往が多く,血圧が低い症例ではLDL-C/HDL-C比が高く,トリグリセリドが高い傾向にあった。血圧の低い症例は実薬群に割付けられた場合が多く,スタチンの併用に群間差はなかった。
    多変量解析によるCADの有意な進展因子は収縮期血圧(SBP,p=0.006),脈圧(p=0.02)。アテローム容積の変化(ベースライン時→追跡後)は,正常群-4.6mm³(187.9mm→184.5mm³),前高血圧群+0.9mm³(190.8mm→191.7mm³),高血圧群+12.0mm³(202.2mm→211.5mm³)と,ベースライン時は3分類間に有意差はなかったが,アテローム性動脈硬化の進展において分類間に有意差が認められた。しかし治療群間に差はなかった。
    前高血圧例→正常例は42例でうち32例は実薬群,121例は追跡後も前高血圧のままであった。動脈硬化の進展度は前高血圧から正常になった症例で6.2mm³減少,前高血圧のままの症例は1.5mm³増加した。★結論★アテローム性動脈硬化の進展を最も抑制したのは,JNC-7の血圧分類の正常(SBP<120mmHgかつ拡張期血圧<80mmHg)範囲に降圧した症例であった:J Am Coll Cardiol 2006; 48: 833-8. PubMed

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収載年月2004.11
更新年月2012.05