循環器トライアルデータベース

OACIS
Osaka Acute Coronary Insufficiency Study

目的 急性心筋梗塞(AMI)患者を登録し,臨床変数,治療方法,臨床イベントを評価するために社会人口統計学的変数などの様々なデータを収集する。合わせて遺伝子解析も行う。
本報はAMI患者において,梗塞関連動脈(IRA)への側副血行が加齢により減少するか,またその障害が院内予後不良の決定因子となるかを検討したもの。
コメント AMIにおいて側副血行による心筋灌流はリスクエリアの心筋を救済し,心室のリモデリングを予防する。従って側副血行の存在はAMIの予後改善につながると考えられる。一方,動物実験では高齢になると血管新生や内皮機能が鈍化することが証明されており,今回の研究はこれがヒトにも共通している可能性を示唆する。
今回の結果から,側副血行の発達しにくい高齢者ではより一層早い再灌流が必要
であると改めて実感させられる。院内予後だけではなく,長期的予後にどう影響するのかも知りたいところである。(中野中村永井
デザイン 登録研究,多施設(大学病院,第3次医療施設,小規模病院)。
期間 登録期間は1998年4月~2002年5月。
参加者 1934例。OACIS登録患者3573例(発症後1週間以内で,臨床症状,ECG所見,心酵素によりAMIと診断された患者)のうち,発症後72時間以内に冠動脈造影を行い,IRAの完全閉塞(TIMI grade 0~1)のもの。
■患者背景:男性76.6%,平均年齢64.0歳。
調査方法 診療記録,本人または家族との面接,担当医との面接により,社会人口学的変数,病歴,治療,入院中の臨床イベントに関するデータを記録し,中央データ収集センターにて分析。緊急カテーテル時の冠動脈造影によりIRAへの側副循環の程度を評価し,Rentrop分類1~3を側副血行ありと定義。4つの年齢群(<50歳,50~59歳,60~69歳,≧70歳)で側副血行率を比較。
結果 側副血行のある患者802例(41.5%)では側副血行のない患者1132例(58.5%)に比べ,平均年齢が有意に低く(62.7歳 vs 65.0歳,p<0.001),高脂血症(44.3% vs 39.0%,p=0.033),狭心症既往(33.1% vs 25.5%,p=0.001),梗塞前狭心症(53.1% vs 45.6%,p=0.002)が有意に多く,平均罹患枝数(1.27 vs 1.36,p=0.011)と左回旋枝梗塞(8.2% vs 15.9%,p<0.001)が有意に少なく,発症からカテーテルまでの時間が有意に長かった(13.1時間 vs 8.6時間,p<0.001)。側副血行率は加齢に伴って低下した(<50歳:47.9%,50~59歳:45.8%,60~69歳:43.4%,≧70歳:34.0%,p<0.001)。側副血行に影響する諸因子の頻度は70歳前後で同程度であったが,同因子による側副血行率はいずれも70歳未満で有意に高かった(梗塞前狭心症49.2% vs 36.5%,p=0.001;狭心症既往50.5% vs 38.5%,p=0.01;カテーテルまでの時間;51.7% vs 39.0%,p=0.003)。カテーテルまでの時間も<3,3~6,6~12,12~24,24~48,48~72時間,すべてのカテゴリーで70歳未満の側副血行率が有意に高かった。また70歳未満とは異なり,70歳以上では側副血行の欠如は院内死亡の独立した危険因子であった(多変量解析によるオッズ比15.6,95%信頼区間3.51~69.6)。
★結論★AMI患者において,IRAへの側副血行は加齢により減少し,これは予後に関連すると思われる。

[主な結果]
  • 早期(急性心筋梗塞発症から平均8.7日後)のpravastatin投与により,主要有害心イベント(大半が血行再建術)再発が抑制された。
    OACIS-LIPID(早期の脂質コントロールにより中期的転帰が改善するかを検討するPROBE・多施設(14施設)試験:353例:総コレステロール 200~250mg/dL;トリグリセライド<300mg/dL)。
    pravastatin群(176例):10mg/日,非pravastatin群(177例)。86%がAMI治療としてPCIを施行。平均追跡期間は259日。
    結果:LDL-Cはpravastatin群が-22%(150→117mg/dL,p<0.001)vs 非pravstatin群が-6%(146→137mg/dL,p=0.025)。
    一次エンドポイント(死亡,非致死的心筋梗塞,不安定狭心症,非致死的脳卒中,血行再建術,その他の心血管疾患による入院)は,31例(17.9%) vs 51例(31.4%);p=0.006。pravastatin群の有効性は主に血行再建術抑制(12.7% vs 20.6%,p=0.049。PCI:11.0% vs 18.3%,p=0.054)によるものであった(Sato H et al for the Osaka acute coronary insufficiency study (OACIS)-LIPID study investigators: Effect of early use of low-dose pravastatin on major adverse cardiac events in patients with acute myocardial infarction: the OACIS-LIPID study. Circ J. 2008; 72: 17-22.)。 PubMed
  • 73のアテローム性動脈硬化症関連遺伝子から87の遺伝子多型を特定した。多変量解析によると,lymphotoxin alpha(LTA)遺伝子の252番目にあるGアレル(252G allele)をもつ症例は死亡リスクの上昇と独立して関連した(Mizuno H et al on behalf of the Osaka acute coronary insufficiency study (OACIS) group: Impact of atherosclerosis-related gene polymorphisms on mortality and recurrent events after myocardial infarction. Atherosclerosis. 2006; 185: 400-5.)。 PubMed
  • 1998年4月~2003年3月の登録例4545例中,退院した生存例4113例で1年の追跡を終了した4099例でスタチン治療と死亡率の関連を検討。さらに血液収集を開始した1999年4月~2003年3月登録した2391例の血液サンプルから炎症とスタチン治療による生存改善効果との関連を検討:スタチン治療例は1191例(29.1%)でatorvastatin 222例,pravastatin 593例,simvastatin 225例,fluvastatin 94例,cerivastatin 27例。スタチン治療例は非治療例より若く,BMIが高く,高血圧が多く,脂質値(総コレステロール,トリグリセライド,LDL-C)が高く,心筋梗塞の既往が多く,脳血管疾患が少なく,Killip分類に基づく重症度が低く,ACE阻害薬,β遮断薬,抗血小板薬,再灌流治療率が高かった。
    スタチン治療群は非治療群に比べ1年後の死亡率が有意に低かった。さらに1年後の死亡率はC-reactice protein(CRP)の低い例(<2.9mg/L)ではスタチン治療群,非治療群で同様であったが,CRP≧2.9mg/Lの症例ではスタチン治療群の方が有意に低かった。スタチン非治療群では高CRPと1年後の死亡率は有意に相関,スタチン治療群では有意差はなくなった(Kinjo K et al on behalf of the Osaka acute coronary insufficiency study (OACIS) group: Relation of C-reactive protein and one-year survival after acute myocardial infarction with versus without statin therapy. Am J Cardiol. 2005; 96: 617-21.)。 PubMed
  • Kurotobi T et al on behalf of the OACIS group: Reduced collateral circulation to the infarct-related artery in elderly patients with acute myocardial infarction. J Am Coll Cardiol. 2004; 44: 28-34. PubMed
  • 1998年4月~2002年3月の登録例3614例中(発症から24時間以内のPCI施行例2487例を含む),1年後の追跡を終了した2475例で心房細動(AF)の頻度と1年後の死亡率の関連を検討:AF例は12.0%で,非AF例に比べ高齢,Killip分類に基づく重症度が高く,心筋梗塞および脳血管疾患の既往,収縮期血圧<100mmHg,心拍数≧100拍/分,多枝疾患が多く,梗塞責任血管の再灌流が不良であった。
    AF症例は非AF例に比べ入院中(16.0% vs 6.7%,p<0.001),1年後(18.9% vs 7.9%,p<0.001)の死亡率が高かった。多変量Cox回帰分析によると,AFは1年後の死亡の独立した予測因子であるが(ハザード比1.64),入院中の死亡率の予測因子ではなかった(Kinjo K et al on behalf of the Osaka acute coronary insufficiency study (OACIS) group: Prognostic significance of atrial fibrillation/atrial flutter in patients with acute myocardial infarction treated with percutaneous coronary intervention. Am J Cardiol. 2003; 92: 1150-4.)。 PubMed
  • 1999年4月~2001年6月登録例1309例中,長期追跡を終了した(平均追跡期間522日)1307例でCRPを検討:CRPは安定期(発症から平均25日後)に測定。再灌流治療実施率は90%。CRPが四分位の最大値(≧0.38mg/dL)例は<0.38mg/dLに比べ高齢で,糖尿病発症率が高く,Killip分類重症度が高かった。多変量ロジスティック回帰分析によると,CRPは年齢,血行再建術非施行と独立して関連した。CRP最大値例は長期死亡率が有意に高かった(8.9% vs 2.0%,p<0.001)。多変量Cox回帰分析によると,CRP最大値は長期死亡率の独立した予測因子である(ハザード比4.94)(Kinjo K et al on behalf of the Osaka acute coronary insufficiency study (OACIS) group: Impact of high-sensitivity C-reactive protein on predicting long-term mortality of acute myocardial infarction. Am J Cardiol. 2003; 91: 931-5.)。 PubMed

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収載年月2005.01
更新年月2008.05