循環器トライアルデータベース

WACS
Women’s Antioxidant Cardiovascular Study

目的 心血管疾患(CVD)または3つ以上のCVDの危険因子を有する40歳以上の女性において,抗酸化剤(ビタミンC,ビタミンE,βカロテン)の二次予防効果を検討する。
一次エンドポイントは,CVD合併症発症,死亡(心筋梗塞[MI],脳卒中,血行再建術[CABGまたはPTCA],CVD死)の複合。
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,2×2×2 factorial,多施設(米国),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は9.4年。
ランダム化期間は1995年6月~’96年10月。試験薬投与期間は2005年1月31日(葉酸群では7月31日)まで,2006年7月試験終了。
対象患者 8,171例。40歳以上の女性医療従事者;閉経後または妊娠の意思がなく,ベースライン時の自己記入式質問票によりCVD(MI,脳卒中,血行再建術[PTCA,CABG,頸動脈内膜除去術,末梢血管術],症候性狭心症,一過性脳虚血発作の既往),または3つ以上の危険因子(自己申告による高血圧,高コレステロール,糖尿病の診断,60歳未満のMI発症の家族歴,肥満[BMI≧30kg/m²],現在の喫煙,CVD既往があるとは必ずしも言えないエピソードのあるもの)を有するもの。
除外基準:10年以内の癌(悪性黒色腫以外の皮膚癌を除く)の既往,肝疾患,慢性腎不全,warfarinあるいはその他の抗凝固薬使用,ビタミンA・C・Eおよびβカロテン使用(U.S. recommended daily allowance:RDAの水準を超える量)の中止の意思がないもの。
■患者背景:平均年齢60.6歳,白人94.0%,CVDイベントの既往64%,3つ以上の危険因子を有するもの36%, BMI 30.3kg/m²,現在の喫煙16%,糖尿病19%,高血圧既往75%,高コレステロール血症既往73%。
治療法 12週のrun-in期間後,ビタミンC群(4087例) vs プラセボ群(4084例),ビタミンE群(4083例) vs プラセボ群(4088例),βカロテン群(4084例) vs プラセボ群(4087例)にfactorial にランダム化(さらに1998年より葉酸,ビタミンB6・B12の実薬群・プラセボ群を追加)。
ビタミンC群では合成ビタミンC(アスコルビン酸,BASF社)500mg/日,ビタミンE群では天然ビタミンE(D-α-トコフェロールアセテート)600IUを1日おき,βカロチン群ではLurotin 50mgを1日おきに服用。
ランダム化後1年間は6か月ごとに,以後年1回試験薬(1か月単位のパック)および質問票(コンプライアンス,副作用,イベント発生)を送付し,質問票・書簡・電話による本人の報告,医療記録等よりエンドポイントの発生を追跡。
結果 追跡期間中のCVDは1450例(MI 274例,脳卒中298例,血行再建術889例,心血管死395例),死亡は995例。
一次エンドポイントの相対リスク(RR)はビタミンC群1.02;95%信頼区間0.92~1.13(p=0.71),ビタミンE群0.94;0.85~1.04(p=0.23),βカロテン群1.02;0.92~1.13(p=0.71)で,プラセボ群と比べ有意差はなかった。
二次エンドポイント(一次エンドポイント各構成イベント:MI,脳卒中,血行再建術,CVD死)もプラセボ群に比べ有意差はなかった。
CVD既往サブグループ:ビタミンE群で一次エンドポイント(RR 0.89;0.79~1.00(p=0.04, p-interaction=0.07)の有意な抑制傾向が認められた。一次エンドポイント,また二次エンドポイントのうちMIおよびCVD死は抗酸化剤の相互作用は認められなかったが,脳卒中はビタミンC+ビタミンE群でプラセボ群と比較したRR 0.69;0.49~0.98(p=0.04, p-interaction=0.03)と有意な減少が認められた。
副作用(出血,消化器症状,倦怠感,眠気)は,βカロテン群における胃腸症状の増加傾向(RR 1.06;1.00~1.11, p=0.05)を除いて有意差はなかった。
★結論★CVDの高リスク女性において,ビタミンC,ビタミンE,βカロテンのCVDイベントに対する効果は認められなかった。
文献
  • [main]
  • Cook NR et al: A randomized factorial trial of vitamins C, E and beta carotene in the secondary prevention of cardiovascular events in women: results from the Women's Antioxidant Cardiovascular Study. Arch Intern Med. 2007; 167: 1610-8. PubMed
  • [substudy]
  • 心血管疾患,危険因子を有する女性において抗酸化ビタミンに認知機能低下の有意な抑制効果は認められず。
    認知機能サブスタディ(≧65歳・2824例)
    ランダム化後平均3.5年(3.1~4.7年。1998年12月~2000年7月)より8.9年(7.8~9.6年)までの平均5.4年間,最長2年ごとに電話によりTelephone Interview of Cognitive Status(TICS)を用いた全般的認知,言語記憶,カテゴリー流暢性に関する5つの検査を合計4回実施:一次エンドポイント(スコア全体のベースライン時からの変化の平均)は,プラセボ群に比べビタミンE群-0.01(95%信頼区間-0.05~0.04, p=0.78),ビタミンC群0.02(-0.03~0.07, p=0.39),βカロテン群0.03(-0.02~0.07, p=0.28)。最終評価時には,ビタミンC群でプラセボ群に比べ有意なスコアの改善が認められた(スコア全体の差0.13, 95%CI 0.06~0.20, p=0.0005)。ビタミンCの効果は試験期間中のCVDイベント新規発症患者でより大きかった(p-interaction=0.009):Circulation. 2009; 119: 2772-80. PubMed
  • CVDを有する女性において,SBPとCVDの二次イベントの発症間に強い,連続した直線の相関が認められた。SBPはCVDリスクに最も強く関連する血圧値である。
    ベースライン時の質問票によりCVDの罹患と血圧値が確認された5218例のサブ解析:平均年齢62.1歳,平均収縮期血圧(SBP)133.9mmHg,平均拡張期血圧(DBP)80.4mmHg,MI 1327例,脳卒中611例,血行再建術738例,狭心症/症候性血管疾患2542例。31714例・年の追跡期間中(中央値6.5年)のCVDイベントは661例で871件(CVD死 118件,MI 131件,脳卒中138件,CABG 182件,PTCA 302件)であった。年齢,治療群,降圧薬使用,冠リスク因子による調整後,SBPがCVDイベントの強力な予測因子であり,正,連続,直線の相関性を有し(p=0.001),SBPが10mmHg上昇するごとにCVDの二次発症リスクは9%[95%信頼区間(CI )4-15%]上昇した。DBP,動脈圧,脈圧はCVDリスクの予測因子としては弱く,SBPとDBPを合わせて考慮した場合はSBPのみが有意な予測因子であった。SBPとCVDリスクの相関に降圧治療は影響しなかった:Circulation. 2004; 109: 1623-9. PubMed

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収載年月2004.09
更新年月2010.05