循環器トライアルデータベース

TAXUS-IV

目的 native冠動脈の未治療1枝病変において,slow-release,ポリマーベースの抗腫瘍薬paclitaxel溶出ステントが臨床上,冠動脈造影上の再狭窄のリスク低下に及ぼす効果と安全性を検討。一次エンドポイントは9か月後の虚血による標的血管血行再建術。
コメント →サブスタディ(J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1193-200.)へのコメント
SIRIUS 試験とTAXUS-IV 本試験によると,CypherステントとTAXUSステントの9か月後のTLRは4.1%と3.0%でほぼ同等であるが,ステント内のlate lossは前者が0.17mm vs 1.00mm(ベアメタル),後者が0.39mm vs 0.92mm(ベアメタル)と大きく異なっている。しかし,ステントセグメント全体で解析すると,両者の平均late lossは0.24mm vs 0.23mmと同様である。薬剤溶出ステント(DES)時代では,再狭窄の指標としてのlate loss測定の意義が変化している。
本サブ解析では(1) ステント内でもセグメント内でもlate lossはTLR(臨床的再狭窄の指標)と直線的ではないが関連すること,(2) TLRが5~10%を超えるのは参照血管径2.8mmの場合はセグメント内late lossが0.5~0.65mm以上であること,(3) 同じlate lossでもその部分によりTLRは異なり,分散が大きかったり正規分布をせずゆがみが大きいとTLRは大きくなること,を示している。late lossを0.5~0.65mm以下にできるステント材質や処理で臨床的再狭窄を顕著に低下させることができる。2つのステントの対比試験でlate lossがともに0.5~0.65mm以下であれば臨床的に優劣はつけられない。DESはベアメタルステントよりもlate lossの平均値は小さいが,逆に分布のゆがみが大きいため,参照血管径が小さいこととlate lossの平均値の比較だけではTLRは判断できない。よりよいDESを目指すにはlate lossの詳細な解析と長期間の観察が不可欠である。(星田
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(米国の73施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は5年。ランダム化は2002年3月29日~7月8日。
対象患者 1314例。18歳以上。安定/不安定狭心症または誘発性虚血,native冠動脈の未治療1枝病変(参照血管径が目測2.5~3.75mm。病変長10~28mmで1本のステントでカバーできるもの)を有しPCI(percutaneous coronary intervention)施行予定のもの。
除外基準:標的血管に対する冠動脈内放射線療法または薬剤溶出ステントの施行歴,または予定;72時間以内の心筋梗塞(MI);EF<25%;出血性疾患;aspirin,thienopyridine,paclitaxel,ステンレススティールの禁忌またはアレルギー;ヨウ素含有造影剤に対するアナフィラキシー歴;12か月以内のpaclitaxel使用またはcolchicine使用中;血清クレアチニン値>2.0mg/dL,白血球数<3500/mm³,血小板数<100,000/mm³など。
■患者背景:糖尿病24.2%,平均参照血管径2.75mm,平均病変長13.4mm。
治療法 paclitaxel溶出ステント(TAXUS・662例)群:TAXUS(Boston Scientific社)使用,またはベアステント群(652例):TAXUSと外見上同様のEXPRESS(同社)使用,にランダム化。
糖尿病の有無,血管径(3.0mm未満,または以上)により層別化。
カテーテル前にaspirin 325mg,clopidogrel 300mgを経口投与し,ベースライン時の心電図,クレアチンキナーゼ,アイソザイム値を測定。手技後心電図を実施,心筋酵素を8時間ごとに24時間測定。aspirin 325mg/日を無期限に,clopidogrel 75mg/日を6か月間投与。
結果 患者あたりの平均植込みステント数は1.08本(長さ21.8mm)であった。
一次エンドポイントはベアステント群の12.0%に対し,TAXUS群で4.7%とpaclitaxel群で有意に低かった[相対リスク(RR)0.39,95%信頼区間(CI )0.26~0.59,p<0.001]。9か月後の標的病変に対する血行再建術施行率はベアステント群の11.3%に対し,TAXUS群で3.0%と有意に低かった(RR 0.27,95%CI 0.16~0.43,p<0.001)。
フォローアップ冠動脈造影実施は559例(予定されていた732例の76.4%)。再狭窄率はベアステント群の26.6%に対し,TAXUS群で7.9%と有意に低下した(RR 0.30,95%CI 0.19~0.46,p<0.001)。
9か月後の心臓死およびMIはベアステント群4.3% vs TAXUS群4.7%,ステント内血栓は0.8% vs 0.6%と両群間に差はなかった。
★結論★ベアステントに比べ,slow-release,ポリマーベースのpaclitaxel溶出ステントは安全で9か月後の臨床上,冠動脈造影上の再狭窄を著明に抑制する。
文献
  • [main]
  • Stone GW et al for the TAXUS-IV investigators: A polymer-based, paclitaxel-eluting stent in patients with coronary artery disease. N Engl J Med. 2004; 350: 221-31. PubMed
  • [substudy]
  • TAXUS群はTVRを12.2件/100治療例抑制し,1年後のコストはTAXUS群14,583ドル,ベアステント群14,011ドルで,両群の差は572ドル/1例。予防できるTVR1件ごとの増分費用対効果は4678ドル,獲得質調整生存年(QALY)ごとに47,798ドル。冠動脈造影非実施の予後追跡のみのサブグループでは,1年後の総コスト差は97ドル/1例,費用対効果はTVRごとに760ドル,獲得QALYは5105ドル:J Am Coll Cardiol. 2006; 48: 253-61. PubMed
  • 追跡冠動脈造影実施例は536例(TAXUS群269例,ベアステント群267例)は非実施例に比べ,1年後の標的血管血行再建術率(TVR)が有意に高かった(調整ハザード比1.46,p=0.04)。TVRの相対的増加はTAXUS群,ベアステント群で同様であった。が,TAXUSは追跡冠動脈の実施,非実施を問わず実質的にTVRを抑制した:J Am Coll Cardiol. 2006; 48: 32-6. PubMed
  • 血管造影サブスタディ559例(セグメント内の晩期損失径と転帰の関連):セグメント内の晩期損失血管径(late loss)が0.5mmを超えるまで標的病変血行再建術(TLR)は5%未満であり,0.65mmを超えるまで10%未満であった。late lossが0.65mm以上になるとTLRとの関係が急峻で直線的になった。late lossの分布形態によってもTLRは異なり,分布の分散が大きかったり正規分布せずゆがみが大きいとTLRは大きかった:J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1193-200. PubMed
  • ACS例(450例:TAXUS群237例,ベアステント群213例)において30日後の転帰は両群で同様であったが,1年後TAXUS群ではベアステント群に比べ標的血管の血行再建術(TVR:3.9% vs 16.0%,p<0.0001),主要な有害心イベント(11.1% vs 21.7%,p=0.002)が有意に少なかった。多変量解析によると,ACSはベアステント群のステント内再狭窄の独立した予測因子で(ハザード比[HR]2.03,p=0.035),TAXUS群では再狭窄非発生の予測因子であった(HR 0.27,p=0.044):J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1165-71. PubMed
  • 糖尿病例(318例,うち要インスリンは105例)において9か月後の再狭窄はベアステント群に比べTAXUS群で81%有意に低下(6.4% vs 34.5%,p<0.0001)。1年後のTLRは65%(7.4% vs 20.9%,p=0.0008),TVRは53%(11.3% vs 24%,p<0.004),それぞれ有意に低下した。また主要な有害心イベントは44%(15.6% vs 27.7%,p=0.01):J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1172-9. PubMed
  • 性差:TAXUS群(662例,うち女性は187例),ベアステント群(652例,うち女性は180例)。男性に比べ女性の方が高齢で高血圧,糖尿病,腎機能障害,不安定狭心症,心不全が多く,喫煙率は低かった。TAXUS群で補正前の1年後の標的病変血行再建術(TLR)は女性の方が多かったが(7.6% vs 3.2%,p=0.03),女性はTLRの独立した予測因子ではなかった(オッズ比1.72)。TAXUS群での再狭窄率,晩期損失に性差はなし。女性においてベアステント群に比べTAXUS群では9か月後の再狭窄(8.6% vs 29.2%,p=0.0001),1年後のTLRが有意に低下(7.6% vs 14.9%,p=0.02)。女性における再狭窄抑制の唯一の独立した予測因子はTAXUSステントである:J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1180-5. PubMed
  • 左前下行枝(LAD)植込み例(536例)において,9か月後の晩期損失血管径はTAXUS群0.28mm,ベアステント群0.54mm(p=0.0004),binary再狭窄率は11.3% vs 26.9%(p=0.004)。1年後の有害心イベントは13.5% vs 21.2%(p=0.01)。1年後のCABGの必要はTAXUS群で低下(2.6% vs 6.3%,p=0.02)。近位LAD群(126例)での1年後のTVRは7.9% vs 18.6%(p=0.009):J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1186-92. PubMed
  • IVUSサブスタディ(170例;TAXUS群88例,ベアステント群82例):9か月後の血管容積は123mm3 vs 104mm3とTAXUS群で有意に大きかった(p=0.005)。これは同群で新生内膜増殖が抑制されたためであった(18mm3 vs 41mm3,p<0.001)。ステント不完全密着は4.0% s 3.0%(p=0.12):J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1201-5. PubMed
  • 1年後の転帰:paclitaxel溶出ステント群で標的病変血行再建術を73%,標的血管血行再建術を62%,標的血管治療不成功を52%,主要な有害心イベントを49%低下した(いずれもp<0.0001)。心臓死,MI,亜急性血栓は両群間で同様であった:Circulation. 2004; 109: 1942-7. PubMed

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収載年月2004.03
更新年月2006.12