循環器トライアルデータベース

Octopus II

目的 オフポンプ(心肺バイパスと心停止をしない)冠動脈バイパス術と従来のオンポンプ手術における,グラフト開存率および臨床転帰を比較する。
コメント stabilizerの進歩に伴ってオフポンプ冠動脈バイパス手術が増加している。オンポンプに比し心・腎・脳障害が減少,在院日数の短縮,輸血量の減少,術後心房細動発生率の低下も報告されている。一方,オフポンプは狭心症再発,再冠血行再建術のリスクが高く,グラフトの不完全さが示唆されている。本研究では,グラフト3本以上のリアルワールドでのオフポンプとオンポンプの無作為化試験を行っており,オフポンプでは3か月後のグラフト開存率が有意に低下していた。橈骨動脈を用いたバイパス術の成績が特に悪く,オフポンプに一番適していると考えられる左前下行枝領域での成績もオンポンプより悪かった。オフポンプは術野が不安定で狭いために習熟が難であり,手術成績は術者の技量に依存する。しかし,本研究の術者のオンポンプにおけるバイパス開存率は一般の施設より高く(98%),オフポンプの経験も豊富で,今回の検討でも死亡例は認めていない。オフポンプとオンポンプではグラフト開存率に差はない(91% vs 93%)と報告された以前の研究(Octopus)では,グラフト数が少なく(2.4 vs 2.6),follow-up CAGは25%に施行されたに過ぎない。トロポニンTで評価した心筋障害度はオンポンプでより大きい結果を示しているが,短時間(6~12時間)のトロポニンTの評価では優劣は不明である。オフポンプはポンプに関連する合併症のリスクが高く,標的冠動脈数が少なく,本手術に適している病変を有する症例に最適である。現時点では,長期的有用性が高く,リスクの少ない術式を個々の症例において選択すべきである。(星田
デザイン 無作為割付け,単施設,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3か月。ランダム化は2000年1月~'02年1月。
対象患者 104例。3つ以上のグラフトを要し,他の同時手術がなく冠動脈手術のみを初めて受けるもの。
除外基準:30歳未満または>80歳,他の手術の適応,6か月以内の脳卒中,>70%の頸動脈狭窄,3か月以内の心筋梗塞(MI),左室機能不良(EF<20%),妊娠および授乳,インフォームドコンセント取得が困難,診断冠動脈造影後の合併症。
■患者背景:平均年齢63歳,男性87%,糖尿病27%,MI既往44%。
治療法 オンポンプ群(50例):membrane oxygenatorおよび回転ポンプ使用。術中の体温を32℃に落とした。300U/kgのheparinを投与後,protamineを投与。オフポンプ群(54例):Octopus stabilizer使用。術中35℃以上を維持。半量のheparinを投与。
抗血小板療法(aspirinを術後6時間に300mg投与後150mg/日投与)などの標準的な術後ケアを成人集中治療室で実施。トロポニンTをベースライン時(麻酔導入中),6,12,24,48,72時間後に測定。3か月後に冠動脈造影を実施。
グラフトおよびnative血管の両方に灌流がみられた場合を開存と定義。
結果 術中にオフポンプ群の1例が難治性心室頻拍,1例が左冠動脈内前下行枝の心筋内走行のため,オンポンプに変更した。
1患者当たりのグラフト数(オンポンプ群3.4 vs オフポンプ群3.1),グラフト遂行率(グラフト実施数/予定数)は両群で同様であったが,オフポンプ群ではオンポンプ群に比べ橈骨動脈グラフトの比率が高く(55% vs 74%,p=0.04),吻合に要する平均時間が長かった(9.5分 vs 13.1分,p<0.001)。死亡例はなかった。オンポンプ群で2例が術直後の出血のため再胸骨切開を要した。出血量は両群間差はなかったが,オンポンプ群の方が充填赤血球(p=0.004),凝固成分(p=0.002)の輸血が多かった。抜管までの平均時間または術後の入院期間において両群間に有意差はなかった。
術後6,12時間のトロポニンT値はオンポンプ群で有意に高かった(各p<0.001)が,24時間後にはこの差は消失した。トロポニンT濃度曲線下面積はオンポンプ群で有意に高かった(30.96時・μg/L vs 19.33時・μg/L,p=0.02)。3か月後の冠動脈造影は82例(オンポンプ群39例,オフポンプ群43例)で実施され,全般的なグラフト開存率はオンポンプ群で有意に高く(98% vs 88%,p=0.002),この差は右冠動脈ではp=0.01,左前下行枝動脈ではp=0.07であった。オフポンプ群では橈骨動脈グラフトの開存率が有意に低かった(76% vs 100%,p=0.01)。
★結論★オフポンプ冠動脈バイパス術はオンポンプ術よりも心筋ダメージが小さく,同程度に安全であったが,3か月後のグラフト開存率は低く,この差は長期転帰に影響しうると思われる。
文献
  • [main]
  • Khan NE et al: A randomized comparison of off-pump and on-pump multivessel coronary-artery bypass surgery. N Engl J Med. 2004; 350: 21-8. PubMed

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収載年月2004.04