循環器トライアルデータベース

GIPS
Glucose-Insulin-Potassium Study

目的 急性心筋梗塞(AMI)患者において,PTCA施行に併用するグルコース・インスリン・カリウム(GIK)注入の有効性を検討。一次エンドポイントは30日後の死亡率。
コメント GIK療法は1960年代から心筋梗塞急性期の治療法として報告され,虚血心筋への糖の取り込みを促進し,入院死亡率を低下させる。GIK療法は虚血障害を抑制し,遊離脂肪酸を低下させるだけでなく再灌流障害も予防し得る。虚血に陥った心筋組織の細胞膜を保護することにより細胞の膨張や毛細血管の圧排が抑制され,再灌流後のno-reflow現象が生じにくくなる。本研究は急性心筋梗塞症のPCIの補助療法としてのGIK療法を検討しており,発症後30日間の死亡率は低下させたが有意ではなかった。しかし,Killip I度の症例のみではGIK療法は有意に死亡率を低下させている。心不全例(Killip II度以上)で効果がみられなかったのは用量負荷(体重60kgで1440mL/8時間)が影響しているかもしれない。血栓溶解薬による再灌流療法を62%の症例に行ったECLA study(Circulation. 1998; 98: 2227-34.)ではGIKによる用量負荷は本研究の半量であり,心不全の発症がより低下している。本研究では心不全例は再灌流不成功が多く,ECLA studyでは再灌流成功例でGIK療法が有用であった。心不全例では用量負荷の少ない濃縮されたGIK療法がより有用であろう。血糖値を正常域まで低下させるインスリン強化療法の臨床的効果も今後の課題である。(星田
デザイン 無作為割付け,オープン,単施設,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。登録期間は1998年4月~2001年9月。
対象患者 940例。発症より24時間以内で>30分持続するAMI症状,心電図の連続する2つ以上の誘導で1mm以上(0.1mV以上)のST上昇,新規の左脚ブロック。
除外基準:血栓溶解療法前治療例,あるいは余命が著しく制限される疾患例。
治療法 GIK群(476例)と対照群(464例):GIK非注入にランダム化。GIK;可及的速やかに20%グルコース500mLに溶解した塩化カリウム 80mmoL を3mL/kg体重/時で8~12時間持続静注。0.9%の生理食塩水50mLに溶解した短時間作用型インスリン(50U Actrapid HM;投与量は血中グルコース値を7.0~11.0mmol/Lに保つようベースライン時および1時間ごとに調節)をポンプを用いて持続静注。全例にheparin静注,nitroglycerin,aspirinを投与。
静注開始後,PTCAを標準手技で施行。
再灌流成功はTIMI grade 3+心筋blush grade 2,3とした。シース抜去後に低分子量heparinを1~3日間投与。
サブグループ:60歳以上 vs 未満,性別,前壁梗塞 vs 非前壁梗塞,Killip分類 class I vs ≧II,糖尿病の有無,再灌流成功 vs 不成功。
結果 GIKは入院後15~20分で注入開始した。PTCAは90.5%で施行,CABGは4.0%,保存療法は4.5%。
一次エンドポイントはGIK群4.8%(23例),対照群5.8%(27例)と両群間に差はみられなかった[相対リスク(RR)0.82;95%信頼区間(CI)0.46-1.46,p=0.50]。
サブ解析:心不全のないKillip分類 class I (856例)例の一次エンドポイントはGIK群で有意に抑制された[1.2%(5例) vs 4.2%(18例),RR 0.28;95%CI 0.1-0.75,p=0.01]。心不全の徴候を有するKillip分類 class II以上の例では36% vs 26.5%(RR 1.44;95%CI 0.65-3.22)。糖尿病既往例(99例)では4.0% vs 12.2%(RR 0.30;95%CI 0.06-1.56),灌流成功例(778例)では2.3% vs 4.2%(RR 0.54;95%CI 0.24-1.23,p=0.14)と,いずれも両群間に有意差はなかった。Killip分類 class I 群で心不全による死亡は0.7% vs 2.8%とGIK群で抑制されたが,class II 以上の群では34.0% vs 20.6%であった。
二次エンドポイントである再梗塞は0.8% vs 1.5%(RR 0.55,p=0.19),再血管形成術は3.4% vs 4.3%(RR 0.77,p=0.37),死亡,再梗塞または再血行再建術の複合は8.0 vs 9.9%(RR 0.79,p=0.08)。
低血糖,高カリウム血症,重篤な静脈炎などの有害事象はみられなかった。
★結論★PTCAと併用して行うグルコース・インスリン・カリウム(GIK)注入療法は,心不全徴候のない患者の死亡を有意に抑制したが,AMI全体の死亡は有意に抑制しなかった。心不全徴候のある患者(Killip分類 class II 以上)への有効性は確かではない。
文献
  • [main]
  • van der Horst IC et al for the Zwolle infarct study group: Glucose-insulin-potassium infusion in patients treated with primary angioplasty for acute myocardial infarction; the glucose-insulin-potassium study; a randomized trial. J Am Coll Cardiol. 2003; 42: 784-91. PubMed

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収載年月2003.12