循環器トライアルデータベース

SIRIUS
Sirolimus-Eluting BalÇåoon-Expandable Stent in the Treatment of Patients with de Novo Native Coronary-Artery Lesions

目的 冠動脈の新規病変において,sirolimus溶出ステントの有効性を検討。一次エンドポイントは270日以内の標的血管事故:心臓死+心筋梗塞(MI)+標的血管血行再建術再施行。
コメント PCI時のステントの有用性は明らかであるが,糖尿病,小血管病変,長病変では再狭窄率は30%を超える。シロリムス(ラパマイシン)はもともと抗真菌薬として開発された疎水性のマクロライドで,強力な免疫抑制作用を示す。また,細胞周期の進行を阻害し,細胞増殖を抑制する。最近,シロリムス溶出ステントが小規模低リスク症例の再狭窄率を低下させることが示された(RAVEL試験)。本研究は,より複雑病変を有する高リスク症例に対してもシロリムス溶出ステントが有用であることを示した。最近のCirculationの報告(2003;108:257-60 PMID12860901)では,シロリムス溶出ステントの再狭窄率は16%であり,このステントが分岐病変,慢性閉塞病変,ステント内再狭窄,SVG病変などに一般的に用いられると再狭窄率は高くなると考えられる。今後,シロリムスの 1)効果の持続時間,2)経口薬の効果,3)無効例の検索,が重要な課題であろう。(星田
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(米国53施設)。
期間 追跡期間270日。ランダム化は2001年2~8月。
対象患者 1058例。安定あるいは不安定狭心症,心筋虚血の徴候例。血管長15~30mmで血管径の51~99%の狭窄を有するもの。
除外基準:48時間以内のMI,EF<25%,入り口病変,分岐部病変,プロテクトされていない左主幹部病変,あるいは血栓または重症石灰化病変など。
■患者背景:平均年齢62.3歳,男性71%,糖尿病26%,高脂血症(LDL-C>130mg/dL)74%,高血圧68%,MI既往31%,標的病変;左前下行枝44%,右冠動脈31%,左回旋枝25%,多枝病変42%,参照血管径2.80mm,病変長14.4mm。
治療法 sirolimus溶出ステント(SES)群(533例):5~10μm厚の高分子ポリマーマトリックス内にsilorimus 140μg/cm²を含有したものをバルーン拡張型ステントにコーティングし,30日間で約80%のsilorimusが溶出するようにデザイン,標準ステント(BMS)群(525例):バルーン前拡張後に施行,にランダム化。
施行前後,全例にaspirin 325mg/日,clopidogrel(施行24時間前に300~375mg,その後75mg/日を3か月)を経口投与。施行中はheparinをボーラス静注,GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の静注は医師の裁量とした。
血管内エコーサブスタディ:施行後と240日後に17施設250例で実施。
結果 ステント内最小血管径:SES群(施行前→施行後→ 240日後)0.98→ 2.67→ 2.50mm;BMS群(施行前→施行後→ 240日後)0.97→ 2.68→ 1.69mm(各p値:0.68, 0.98, <0.001),狭窄率:SES群65.1→ 5.4→ 10.4%,BMS群65.6→ 6.0→ 40.1%(0.46, 0.22, <0.001),晩期血管損失:silolimus群 0.17mm vs 標準群 1.00mm(p<0.001),再狭窄率3.2% vs 35.4%(p<0.001)。
一次エンドポイントはSES群8.6%,BMS群21.0%とSES群で有意に抑制された(p<0.001)。抑制効果は主に標的血管の血行再建術再施行率の低下によるものであった(4.1% vs 16.6%, p<0.001)。
冠動脈造影,血管内エコーによるステント内新生内膜増殖もSES群で有意に抑制された(4.4mm³ vs 57.6mm³,閉塞率は3.1% vs 33.4%,各p<0.001)。
同群の再狭窄率および標的血管血行再建術再施行の抑制効果は,全サブグループ(性別,糖尿病・左前下行枝病変・ステントの重複の有無,血管サイズ:<2.75mm,≧2.75mm,病変長:≦13.5mm,>13.5mm)で認められた。
★結論★冠動脈複雑病変を有する例においてsirolimus溶出ステントは,単純病変で示唆されたように,検討した全サブグループで再狭窄および標的血管事故を抑制した。
文献
  • [main]
  • Moses JW et al for the SIRIUS investigators: Sirolimus-eluting stents versus standard stents in patients with stenosis in a native coronary artery. N Engl J Med. 2003; 349: 1315-23. PubMed
  • [substudy]
  • pooled analysis:RAVEL,SIRIUS,E-SIRIUS,C-SIRIUS(男性1251例,女性248例:SES群;629例,249例,BMS群;622例,248例)。
    男性に比べ女性は高齢で,糖尿病,高血圧,うっ血性心不全が多かったが,多変量解析によるとSES群でもBMS群でも女性はセグメント内binary再狭窄,臨床転帰の独立した予測因子ではなかった:J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 2111-6. PubMed
  • 1~2年後のイベント発症は少なく両群間に差はみられなかった。2年後の標的病変血行再建術は5.8% vs 21.3%でSES群で有意に少なく(p<0.001),主要な有害心血管イベント(10.1% vs 24.4%),標的血管灌流不成功も少なかった(12.0% vs 26.7%):J Am Coll Cardiol. 2006; 47: 1350-5. PubMed
  • E-SIRIUSと合わせた冠動脈造影による晩期損失(手技後の最小血管径-8か月後の最小血管径):SIRIUS試験の平均ステント内晩期損失はsilorimus群0.17mm vs 対照群1.00mmで,標準normal approximationを使用して再狭窄率を予測すると対照群は正確(予測値35.4% vs 実際35.4%)であるが,silorimus群は予測値0.6% vs 3.2%と過小予測となる。optimized power transformationを使用すると,sirilimus群の予測値は3.2%と改善し,E-SIRIUS試験でも4.0% vs 3.9%と正確に再狭窄率を予測した。sirolimus溶出ステント群でのステント内晩期損失はセグメント内晩期損失とよりも,標的病変血行再建術とより相関した:Circulation. 2005; 111: 321-7. PubMed
  • 糖尿病の有無にかかわらずSESはBMSより主要有害心イベントを抑制した。しかし,SES群では糖尿病例で非糖尿病例に比べ血行再建術再施行率が高い傾向にあった:Circulation. 2004; 109: 2273-8. PubMed
  • SESの有効性は1年後も持続し,標的病変血行再建術再施行でみる再狭窄は有意に低下。9か月後から12か月後までも再狭窄絶対抑制効果は増加し続け,高リスクにおいても12か月後の再狭窄率は対照群に比べ70~80%低下した:Circulation. 2004; 109: 634-40. PubMed
  • SESは左冠動脈前下行枝病変の血行再建術の再施行を有意に抑制した:Circulation. 2004; 110: 374-9. PubMed
  • BMS群と比較してSES群は晩期ステント内および5mmの遠位,近位の内腔損失を有意に抑制した:Circulation. 2004; 110: 3773-80. PubMed
  • 1年間の費用対効果(C/E):SES群で血行再建術再施行の抑制により$1650セーブでき,質で調整した生存期間(quality adjusted life-year:QALY)あたりの同群のC/E比は$27540,追跡費は同群で1例当たり$2571低下。しかし1年間の総計では同群が$309/例高かった:Circulation. 2004; 110: 508-14. PubMed
  • IVUS substudy(8か月後)122例:両群ともベースライン時の最小ステント面積(MSA)と追跡最小血管面積(MLA)の間に有意な正の相関がみられたが,相関度はSES群の方が大きく(0.80 vs 0.65),回帰係数も大きかった(0.92 vs 0.59)。ステントの開存性を予測するMSA閾値は5 vs 6.5mm2。正の予測値(positive predictive value)はそれぞれ90%,56%:J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 1959-63. PubMed

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収載年月2003.11
更新年月2008.01