循環器トライアルデータベース

ASSENT-3 PLUS
Assessment of the Safety and Efficacy of a New Thrombolytic Regimen-3 PLUS Randomized Trial

目的 ST上昇梗塞患者において,入院前の治療として血栓溶解薬tenecteplaseおよび低分子量heparin(enoxaparin;ENOX),非分画heparin(UFH)併用の有効性と安全性を検討。有効性の一次エンドポイントは30日以内の死亡+入院中の再梗塞+入院中の治療抵抗性虚血。有効性および安全性のエンドポイントは一次エンドポイント+入院中の頭蓋内出血(ICH)あるいは重篤な出血性合併症。
コメント 本trialはASSENT-3と同一のcriteriaで,tenecteplaseと(ASSENT-3で有効性が示された)抗トロンビン剤を入院前から投与することでより早期の治療開始を意図して行われた。結果的に後者より平均47分短縮されたが,有効性の一次エンドポイント,有効性および安全性のエンドポイントともにASSENT-3より劣る結果となった。年齢や梗塞部位などが両trialで異なったためと考えられる。本trialでは有効性はENOXで優れ,頭蓋内出血を主とする脳血管障害はUFHで少ないという結果だったが,両剤の投与期間が異なる上に,UFHは不十分投与例が多く,ENOXは至適投与量がモニターできないため,単純に有効性・安全性を比較するのはいかがなものであろうか。
75歳以上の症例に対するENOXを減量した新たなプロトコールでEXTRACT(EnoXaparin and Thrombolysis Reperfusion for ACute myocardial infarction)が進行中である。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(ヨーロッパ10か国,米国,カナダの88施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。登録期間は2000年7月~2002年7月。
対象患者 1639例。ASSENT-2,ASSENT-3 trialと同様:18歳以上。発症より6時間以内のもの。2つ以上の肢誘導で0.1mV以上のST上昇,2つ以上の連続する胸部誘導での0.2mV以上のST上昇,あるいは左脚ブロック。入院前に救命救急医が登録基準への適合を評価し,血栓溶解療法の適応を認めた例を登録。
除外基準:収縮期血圧>180mmHg,拡張期血圧>110mmHg,7日以内の血小板GPIIb/IIIa受容体拮抗薬投与例,抗凝固薬内服,2か月以内の大手術/実質臓器生検/外傷例,脳卒中,一過性脳虚血発作あるいは痴呆の既往など。
■患者背景:平均年齢62歳。>75歳;ENOX群18%,UFH群16%,高血圧;35%,36%,糖尿病;14%,16%。登録時のKillip分類不明は21%。
治療法 ENOX群(818例):tenecteplase+enoxaparinと,UFH群(821例):tenecteplase+UFHにランダム化。
tenecteplaseは5秒間で投与。用量は体重で決定:<60kgの場合30mg,60~<70kgの場合35mg,70~<80kgの場合 40mg,80~<90kgの場合45mg,≧90kgの場合50mg。
併用薬のプロトコール:UFH;60U/kg(最大4000U)をボーラス静注後,12U/kg/時点滴(最大1000U/時)を入院前より開始し,3時間後より活性化部分トロンボプラスチン時間を測定開始し50~70秒を保つようにして48時間継続。ENOX;30mgボーラス静注直後より1mg/kgを12時間ごとに皮下注(最初の2回は≦100mg)。最大7日間,退院または血行再建まで投与。全例にaspirin 150~325mgを投与後,100~325mg/日で継続。
結果 症状発生からtenecteplase投与までは中央値115分。53%が2時間以内に治療を開始。しかしUFH群では病院到着時に61%の症例でしか持続投与が行われておらず,さらに全経過を通して40~60%の症例がaPTT<50秒だった。
有効性の一次エンドポイントは,ENOX群14.2%,UFH群17.4%と,ENOX群で抑制傾向がみられたが[相対リスク(RR)1.22;95%信頼区間(CI)0.98-1.53,p=0.080),有効性および安全性のエンドポイントに群間差はなし(18.3% vs 20.3%,RR 1.11;95%CI 0.91-1.36,p=0.297)。
ENOX群で入院中の再梗塞と治療抵抗性虚血がUFH群に対し減少したが(3.5% vs 5.8%,p=0.028;4.4% vs 6.5%,p=0.067),>75歳での有意差(全脳卒中9.4% vs 2.3%,p=0.01,入院中ICH 6.7% vs 0.8%,p=0.01)により,全脳卒中と入院中のICHは増加(2.9% vs 1.3%,p=0.026;2.20% vs 0.97%,p=0.047)。
30日間の死亡率はENOX群で高い傾向にあった(7.5% vs 6.0%,p=0.234)。入院中の大出血は両群間に有意差はなかった(4.0% vs 2.8%,p=0.168)。
サブ解析:ENOX群の75歳未満で有効性の一次エンドポイントが有意に低かったが(11.2% vs 15.2%,p=0.033),>75歳ではいずれのエンドポイントにも両群間に有意差なし。
★結論★血栓溶解療法を入院前に開始することで53%の患者が症状発生後2時間以内に再灌流療法を受けることができた。tenecteplase+ENOXは早期虚血イベントを抑制したが,高齢者への低用量ENOXの試験が今後必要である。現時点ではtenecteplase+UFHが入院前におけるルーチンの再灌流療法として推奨される。
文献
  • [main]
  • Wallentin L et al: Efficacy and safety of tenecteplase in combination with the low-molecular-weight heparin enoxaparin or unfractionated heparin in the prehospital setting; the assessment of the safety and efficacy of a new thrombolytic regimen (ASSENT)-3 PLUS randomized trial in acute myocardial infarction. Circulation. 2003; 108: 135-42. PubMed

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収載年月2004.02