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特別な誘因なく発症した静脈血栓塞栓症患者のwarfarin治療において,低強度(INR 1.5~1.9)と通常(INR 2.0~3.0)の場合の有効性と安全性を比較。評価アウトカムは静脈血栓塞栓症再発,出血。 |
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症候性静脈血栓症の治療は,ヘパリンによる初期治療とワーファリンによる二次予防の2相より成立つ。特別な誘因なく発症した静脈血栓症は抗凝固療法中止後再発しやすいが,最低3か月間の通常ワーファリン(INR 2.0~3.0)療法後どの位の期間,どの程度のワーファリン治療が必要であるかは不明であった。最初の3か月間以降のワーファリン治療はINR2.0~3.0に比しINR1.5~1.9でも再発予防効果は同程度でしかも出血が少ないとの仮説は今回の研究で否定され,INR2.0~3.0のワーファリン治療の継続が必要であることが明らかとなった。今回のINR1.5~1.9治療の効果はPREVENT study(INR1.5~2.0: N Engl J Med. 2003; 348: 1425-34)と同等であり,ELATEとPREVENTの両試験を併せて評価すると,無治療に比しINR1.5~1.9で75%,INR2.0~3.0で90%以上再発は抑制されている。INR3.0を越えると出血を生じやすく再発予防効果はあまり変わらないので注意が必要である。今後の課題は,ワーファリン治療の持続期間(最低6~12か月は必要)と再発しやすい症例の見極めである。(星田) |
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無作為割付け,二重盲検,多施設(カナダ,北米の16施設)。 |
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追跡期間は平均2.4年。登録期間は1998年12月~2001年5月。追跡終了は2002年6月。 |
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738例。平均57歳。静脈血栓塞栓症を1回以上発症し,通常の経口抗凝固療法を3か月以上実施した連続症例。特別な誘因のない血栓塞栓症とは,重大な血栓症リスク因子(血栓症発症前3か月以内の足の骨折またはギプス固定,入院で3日連続の寝たきり状態,>30分の全身麻酔を伴う手術,および2年以内のがん)がなく,客観的に認められた症候性の発作性深部静脈血栓または肺塞栓と定義。抗リン脂質抗体以外の理由による凝固能亢進状態は許可。 除外基準:その他のwarfarin療法の適応,長期warfarin療法の禁忌(出血高リスク),抗リン脂質抗体,造影剤へのアレルギーなど。 |
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施設と最初の抗凝固療法期間(3~4か月,>4か月)で層別化後,低強度warfarin群(369例):目標INR値1.5~1.9と,通常warfarin群(369例):目標INR値2.0~3.0にランダム化。 評価は6か月ごとに実施。静脈血栓塞栓症の疑いや出血がみられた場合,直ちに報告するよう患者に指示。 |
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深部静脈血栓塞栓症の再発症は,低強度群の方が通常群に比較して有意に多かった[16回(1.9/100例・年) vs 6回(0.7/100例・年),ハザード比(HR)2.8,[95%信頼区間(CI) 1.1-7.0,p=0.03]。重大な出血,全出血発生頻度ともに両群間に有意差はなかった[9回(1.1/100例・年) vs 8回(0.9/100例・年),HR 1.2(95%CI 0.4-3.0,p=0.76),39回(4.9/100例・年) vs 31回(3.7/100例・年),HR 1.3(95%CI 0.8-2.1,p=0.26)]。 死亡は16例 vs 8例[HR 2.1(95%CI 0.9-4.8,p=0.09)]。 ★結論★通常のwarfarin療法は,低強度warfarinよりも静脈血栓塞栓症再発の長期予防効果が高い。低強度warfarinは臨床上重大な出血リスクを低下させない。 |
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- [main]
- Kearon C et al for the extended low-intensity anticoagulation for thrombo-embolism investigators: Comparison of low-intensity warfarin therapy with conventional-intensity warfarin therapy for long-term prevention of recurrent venous thromboembolism. N Engl J Med. 2003; 349: 631-9. PubMed
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