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EPHESUS
Eplerenone Post-Acute Myocardial Infarction Heart Failure Efficacy and Survival Study

目的 左室機能不全および心不全を合併した急性心筋梗塞(AMI)患者において,選択性アルドステロン拮抗薬eplerenoneの死亡および合併症に対する有効性を検討。

一次エンドポイントは全死亡,心血管死,あるいは心不全,AMIの再発,脳卒中,心室性不整脈を含む心血管イベントによる入院。
コメント 本試験は,アルドステロン拮抗薬のspironolactoneが重症慢性心不全患者の予後を改善したRALES試験の結果を受けて,より選択性の高い鉱質コルチコイド拮抗薬eplerenoneの効果をみた試験である。本試験によりspironolactoneの副作用である女性化乳房や男性の性機能低下がeplerenoneにより解消されることが示された。死亡率減少が突然死の抑制による効果が大きいのはRALES試験とも共通するが,ACE阻害薬とβ遮断薬(投与率75%)が投与されている上に,eplerenoneを加えて更なる予後改善効果がみられているのは注目に値する(RALES試験ではβ遮断薬の使用は11%)。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(37か国674施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は16か月。死亡数が1012例になるまで継続。
ランダム化1999年12月27日~2001年12月31日。
対象患者 6632例。平均年齢64歳。最適内科治療を受けているもの(ACE阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,利尿薬,β遮断薬を含む),AMI発症後3~14日,EF≦40%,心不全;肺ラ音,胸部X線写真による肺うっ血,あるいはIII音聴取。
除外基準:カリウム保持性利尿薬使用例,クレアチニン>2.5mg/dL,血清カリウム>5.0mmol/Lなど。
治療法 eplerenone群(3313例):25mg/日で投与を開始し最大50mg/日まで漸増投与,プラセボ群(3319例)。血清カリウム濃度が5.5mmol/Lを超えた場合は,減量するか5.5mmol/L以下になるまで一時投与を中断する。
結果 死亡はeplerenone群478例(14.4%),プラセボ群554例(16.7%)であった(相対リスク[RR]0.85, 95%信頼区間[CI]0.75-0.96, p=0.008)。うち心血管死は各407例,483例(RR 0.83, 95%CI 0.72-0.94, p=0.005)。心血管死あるいは心血管イベントによる入院は885例(26.7%),993例(30.0%)であった(RR 0.87, 95%CI 0.79-0.95, p=0.002)。
二次エンドポイントである全死亡あるいは全入院はeplerenone群1730例,プラセボ群1829例(RR 0.92, 95%CI 0.86-0.98, p=0.02)。心臓突然死もeplerenone群で低下(RR 0.79, 95%CI 0.64-0.97, p=0.03)。
重篤な高カリウム血症はeplerenone群5.5%,プラセボ群3.9%(p=0.002)であったが,低カリウム血症は8.4%, 13.1%(p<0.001)であった。
★結論★本試験の対象において,最適内科治療にeplerenoneを追加すると,合併症と死亡が低下する。
文献
  • [main]
  • Pitt B et al for the eprelenone post-acute myocardial infarction heart failure efficacy and survival study investigators: Eplerenone, a selective aldosterone blocker, in patients with left ventricular dysfunction after myocardial infarction. N Engl J Med. 2003; 348: 1309-21. PubMed
  • [substudy]
  • eplerenoneの予後改善効果のメカニズムとして,早期の利尿効果,カリウム保持効果とは独立した心血管保護作用の可能性が示される。
    eplerenoneの予後改善効果は利尿およびカリウム保持効果によるものかを6,080例で検討した結果: eplerenone群ではプラセボ群に比べて1か月後の体重減少および推定血漿量減少(プラセボ群と比べ体重>0.05kg・推定血漿量>1.4%の減少:利尿効果の定義),血清カリウム上昇(>0.11mmol/Lの増加:カリウム保持の定義)が大きかったことから,eplerenoneによる利尿効果とカリウム保持効果が示されたと考えられた。推定血漿量減少により定義した利尿効果は,全死亡,心血管死/心血管疾患による入院,全死亡/入院,心不全による入院の11~19%改善と独立して有意に関連し,心血管死とは非有意ながら関連の傾向を示したが,突然死とは関連しなかった。カリウム保持は全死亡/入院,心不全による入院を除く他の心血管転帰の12~34%の改善と独立して関連した。多変量解析の結果,eplerenoneの主要心血管転帰に対する効果は利尿効果,カリウム保持効果とは独立していることが確認され,有意な交互作用は認められなかった:J Am Coll Cardiol. 2011; 58: 1958-66. PubMed
  • 標準治療にeplerenoneを追加したeplerenone群でカリウム>5.5mEq/Lは4.4%絶対増加,≧6.0mEq/Lは1.6%増加,低カリウム血症(<3.5mEq/L)は4.7%絶対低下。高カリウム血症(≧6.0mEq/L)発症のベースライン時の独立した予測因子は,カリウム>中央値(4.3mEq/L),推定糸球体濾過量≦60mL/分/1.73m2,糖尿病既往,抗不整脈薬投与歴。eplerenoneによる全死亡抑制の独立した有意な予測因子はなかった:Circulation. 2008; 118: 1643-50. PubMed
  • 心不全退院例において,Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(23項目自己記入質問票)で評価した連続健康状態は高リスク症例の同定ができ,追跡頻度や治療強度の指針に有効である:Circulation. 2007; 115: 1975-81. PubMed
  • 30日後の全死亡率は,AMIから平均7.3日後に通常治療に追加を開始したeplerenone群で有意に低下した:J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 425-31. PubMed
  • 試験期間中の生存年はeplerenone群1.33年,プラセボ群1.30年(eplerenoneによる獲得生存年は0.03年),総コストは各群13,494ドル,12,104ドル。試験終了後の生存率をFramingham Heart Study(FH),Saskatchewan Health databese(SH),Worcester Heart Attack Registry(WH)に基づき推定したところ,eplerenoneによる獲得生存年はFHに基づくと0.1014年,SH 0.0636年,WH 0.1337年。プラセボ群と比較したeplerenoneの増分費用対効果比は13,718ドル/FH獲得生存年,21,876ドル/SH獲得生存年,10,402ドル/WH獲得生存年:Circulation. 2005; 111: 1106-13. PubMed

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収載年月2003.04
更新年月2012.02