循環器トライアルデータベース

ASPECT
Asian Paclitaxel-Eluting Stent Clinical Trial

目的 抗腫瘍薬paclitaxelでコーティングしたステントの再狭窄予防効果および安全性を検討。一次エンドポイントは冠動脈造影による狭窄率。
コメント 本研究はsirolimus溶出ステントを用いたRAVEL studyと同様に,細胞増殖抑制作用を有する薬剤の溶出ステントはPCI後の再狭窄を有意に低下させることを示した。これまで「bigger is better」という概念が提唱され,early gainに対するlate lossの比は約50%と考えられてきた。paclitaxel溶出ステントではこの比が0に近づいており,2.5~3.5mmの範囲ならばこのステントの効果は術直後の最小血管径には依存しない,すなわち「bigger is better」ではないことを示している。また,抗血小板薬の種類によっては亜急性閉塞性血栓の発生率に差を認めるため,薬物溶出ステントを使用する際には抗血小板薬の選択が重要かもしれない。ステント内放射線治療では,ステント部位での新生内皮細胞の形成が遅れるので晩期に血栓形成を生じやすく,抗血小板薬の投与を6か月以上続ける必要がある。しかし,本研究では症例数は少ないがticlopidineの術後1か月のみの投与でも晩期イベントは増加していないことは注目される。本研究の対象病変は,病変長が短く,石灰化は少なく屈曲していない単純病変(A/B1が多い)であり,より複雑な冠動脈病変に対する効果,至適な抗血小板薬の投与期間については今後の大規模臨床研究が必要である。(星田
デザイン 無作為割付け,三重盲検,多施設(韓国の3施設。ただしIVUSサブスタディは1施設で実施),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6か月。実施期間は2000年1月~2001年3月。
対象患者 177例。18歳以上,平均年齢60歳。新規1枝病変,限局性病変(病変長<15mm,血管径2.25~3.5mm)。
除外基準:EF<35%,凝固障害,難治性過敏症,72時間以内の心筋梗塞(MI),1か月以内の血行再建術例,重症石灰化,完全閉塞など。
■患者背景:1枝病変60%,多枝病変40%,男性76%,高血圧47%,糖尿病20%,MI既往25%,喫煙44%。
治療法 paclitaxel高用量群(60例):3.1μg/mm²,低用量群(58例):1.3μg/mm²,対照群(コーティングをしないステント)にランダム化。
15mm長,2.5~3.5mm径のSupra-Gステントを使用。
退院時に抗血小板薬aspirinを投与。aspirinに加え,施行後および退院時にticlopidine(120例:26例が1か月,94例が6か月,うち1例は施行後にabciximab,3例はheparin),clopidogrel(18例が1か月),cilostazol(37例:29例が1か月,8例が6か月,うち1例は施行後にabciximab,3例がheparin)を投与。
結果 手技成功は176例(99%)。ステント植込み位置:左冠動脈前下行枝51%,右冠動脈26%,左冠動脈回旋枝22%。冠動脈造影実施(平均174日後)は155例。
一次エンドポイントはpaclitaxelの用量に依存して低下(高用量群14%,低用量群23%,対照群39%)し,対照群に比べ高用量群では有意に狭窄率は低かった(p<0.001)。晩期内腔損失は0.29mm vs 0.57mm vs 1.04mmで高用量群でプラセボ群より有意に少なく(p<0.001),再狭窄率(>50%の狭窄)も4% vs 12% vs 27%で高用量群で有意に低かった(p<0.001)。この低下は最小血管径の改善(2.53mm vs 2.28mm vs 1.79mm 。高用量群 vs プラセボ群:p<0.001)と関連した。
心イベントの発生はcilostazol投与例でticlopidine,clopidogrel投与例より多く,ticlopidineあるいはclopidogrel投与例のうち,イベント非発生の生存率は1か月後に高用量群で98%,プラセボ群で100%,4~6か月後は両群で96%であった。
★結論★従来の抗血小板薬療法を併用したpaclitaxel溶出ステントは,標準ステントと同様の安全性で,狭窄と新生内膜形成を効果的に抑制した。
文献
  • [main]
  • Park SJ et al: A paclitaxel-eluting stent for the prevention of coronary restenosis. N Engl J Med. 2003; 348: 1537-45. PubMed
  • [substudy]
  • 対照群に比べポリマーを用いないpaclitaxel溶出ステント群は6か月後の内膜増殖(IH)を抑制したが,2年後のlate catch-up IHはpaclitaxel高用量群で増加した:J Am Coll Cardiol. 2006; 48: 2432-9. PubMed
  • IVUS substudy(98例)の結果:paclitaxelによる内膜増殖(IH)予防効果を検討。
    情報を得られたのは81例(低用量群28例,高用量群28例,プラセボ群 25例)。
    ステント部位において,ステント植込みから6か月後にかけ,全群で内腔容積の減少およびIHの増加がみられた(各p<0.0001)。しかし,paclitaxelの用量に比例して,ステント部位の累積IHの段階的な減少がみられた(低用量群18mm3,高用量群13mm3,プラセボ群 31mm3,p<0.001)。post hoc解析によると,paclitaxel群はプラセボ群に比べ蓄積IHは小さかったが(低用量群 p=0.009,高用量群 p<0.001),低用量群と高用量群では有意差がなかった(p=0.2)。6か月後の最小内腔部位についても同様であった。参照部位には,用量の増加に伴う重要な変化はみられなかった。高用量群の1例に限局的な晩期malappositionがみられた。
    ★結論★paclitaxel coatingステントはステント内新生内膜組織増殖の抑制に有効であり,edge再狭窄および重篤な晩期malappositionをもたらさなかった:Circulation. 2003; 107: 517-20. PubMed

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収載年月2003.07
更新年月2007.02